E1280 – 著作権法改正法案が第180回通常国会に提出される

カレントアウェアネス-E

No.213 2012.04.12

 

 E1280

 著作権法改正法案が第180回通常国会に提出される

 

 2012年3月9日に,「著作権法の一部を改正する法律案」が国会に提出された。改正の趣旨は,デジタル化やネットワーク化の進展に伴う,著作物の利用形態の多様化や著作物の違法利用・違法流通に対応するために規定を整備することとされており,2011年1月に取りまとめられた文化審議会著作権分科会の報告書(E1146参照)に含まれていた「権利制限の一般規定」や「技術的保護手段の見直し」等に関する内容とともに,図書館や公文書館に関係の深い事項についての改正も含まれている。

 「権利制限の一般規定」とは,著作権者からの許諾を得ることなしに著作物を利用可能とする条件を包括的に定めた規定のことを言い,前述の報告書では,3つの類型を対象として位置付けることが適当としていた。今回の改正案では,写真の撮影,録音又は録画の際に写り込んだ著作物を複製・翻案すること(いわゆる「写り込み」)等の利用行為について,著作権等の侵害にならないとする規定を設ける内容となっている。

 「技術的保護手段」とは,著作権侵害行為を防止又は抑止するために著作物等に記録されるもので,これを回避して行う複製行為は,私的使用のためであっても認められないこととされている。今回の改正案では,DVD等に用いられている暗号型技術も技術的保護手段の対象とし,その回避を規制するための規定を整備することが含まれている。

 図書館に関係の深いものとしては,国立国会図書館(NDL)による絶版等資料(絶版等の理由により一般に入手することが困難な資料)の図書館等への自動公衆送信を可能にすることが盛り込まれている。これは,2011年12月にまとめられた「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」の報告書(E1259参照)において,NDLのデジタル化資料の送信として取り上げられていたもので,それを受けて,2012年1月の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会においても,送信先や対象出版物,送信先での利用方法について議論が行われていた。改正案では,図書館等は,NDLから送信を受けられるだけでなく,さらに,現行の著作権法第31条第1項第1号による複製に準じた複製を行うことができるという内容も含められている。

 公文書館に関係の深いものとしては,公文書管理法に定められた利用や保存に関する義務を円滑に果たせるように,国立公文書館や地方公共団体の公文書館における著作物の複製・利用等の行為を権利制限規定の対象とする規定が盛り込まれている。これは,2011年1月の著作権分科会の報告書において,規定を整備することが適当とされていた事項である。

 この改正法案が成立した場合の施行期日については,技術的保護手段に係る規定等については2012年10月1日,それ以外については2013年1月1日とされている。

(関西館図書館協力課調査情報係)

Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1318798.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/03/16/1318798_1.pdf
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/52/pdf/shiryo_2_2.pdf
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/shingi_hokokusho_2301_ver02.pdf
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h23_shiho_06/pdf/shiryo_1.pdf
E1146
E1259