カレントアウェアネス-E
No.208 2012.01.19
E1254
モバイル機器からのEuropeanaへのアクセス分析レポート
2011年12月20日,欧州の文化遺産ポータル“Europeana”が、モバイル機器からのアクセス状況等について分析したレポート“Culture on the Go”を公開した。英国のCIBERリサーチがまとめたこの調査レポートでは, Europeanaユーザーの行動記録を示す「ディープログ」と呼ばれるログが用いられた。このディープログを使う利点は,ユーザーがオンラインで実際にどのような行動をとったのかを詳細かつ正確に示すものであること,サンプリング調査のバイアスや先入観もなく,エビデンスベースの大規模なデータセットを提供できること等にあるとされている。以下,分析結果の一部を紹介する。
- 分析可能な2009年10月から2011年7月までのログによると,モバイルに限らず全体の累計ページビュー数は約2,500万であり,年あたりの増加率は214.4%であった。
- Europeana訪問者の約57%はGoogle検索からであった。
- 2010年9月から2011年8月までの間に約300万人のユニークユーザーが利用し,一度訪問しただけで閲覧後Europeanaを再度訪問していないユーザーは120万人(41%)であった。それ以外のユーザーのうち同じ期間にモバイル機器から利用した人は約69,000人(2.3%)であった。人数としては少ないが,そのアクセス数はデスクトップ端末やラップトップ端末からのアクセスよりも4倍のスピードで増加しており,2012年12月までにユニークユーザー数の約17%を占めると予測されている。
- アクセスで利用されているモバイル機器はiPad(40.8%)が最も多く,次いでiPhone(30.0%),アンドロイド端末(11.2%)となっていた。特にiPadユーザーは閲覧時間が長く,様々なコンテンツを渉猟する傾向にあった。このようなタブレット型端末の普及によって,これまで提供してきたモバイル機器用のインターフェースが時代遅れとなりつつある。
- モバイル機器からのアクセスのうち,最も多いのがフランスからで23.6%,次に米国の11.2%,英国の10.9%であった。なお,フランスはEuropeanaへのコンテンツ提供数が270万で,ドイツに次いで2番目に多い国である。
- モバイル機器からのアクセス数の53.7%が上位10のコレクションへのアクセスだった。またアクセス数上位5つのコレクションのうち,4つがフランスから提供されているものであった。
- モバイル機器からの利用者をタイプ別に分けると,1回のアクセスで1ページのみを閲覧するタイプが52%を占めていた。また,滞在時間が比較的短く,1回検索して3-4ページを利用するタイプが42%,残りの6%は比較的長い時間滞在し,4-5回の検索を行ない平均13ページ閲覧しているタイプであった。
- モバイル機器からのアクセスは土曜日が最も多く,また一日のアクセスでは23時がピークとなっていた。デスクトップ端末等からのアクセスが水曜日に最も多く,17-18時の時間帯がアクセスのピークであることとは異なる傾向にあった。また,モバイル機器からアクセスするユーザーはデスクトップ端末等のユーザーと比較すると,滞在時間が短く1回のアクセスで利用するコンテンツの量が少ない傾向にあった。
Ref:
http://pro.europeana.eu/documents/858566/858665/Culture+on+the+Go
http://pro.europeana.eu/web/guest/news