E1246 – 米国議会図書館,書誌フレームワークの変革への方針を発表

カレントアウェアネス-E

No.206 2011.12.08

 

 E1246

米国議会図書館,書誌フレームワークの変革への方針を発表

 

 米国議会図書館(LC)は,2011年10月31日付けで,書誌フレームワークの変革に向けた取組みの全体計画を示す文書“Bibliographic Framework Initiative General Plan”を公表した。この取組みに関してLCは,MARCフォーマットの見直し等の検討課題を示した声明を2011年5月に発表しており,今回の文書は,新たなフレームワークに求められる要件や取組みの方法を示したものである。

 文書の序文において,LCの図書館サービス担当副館長マーカム(Deanna B. Marcum)氏は,LCのワーキンググループによる2008年の報告書“On the Record”や,2011年のRDA導入テストの結果報告(E1191参照)での指摘内容を踏まえ,LCは,関係者とともに,将来にわたり役立つフレームワークの構築に取り組むとしている。

 全体計画の本文では,まずこの取組みの目的や意義が述べられ,中心的な活動は書誌データの記録・共有の新たな方法を開発することであり,MARCフォーマットの代替を図ることも含まれるとしている。MARCフォーマットは現在のインフラに深く組み込まれているものであるが,技術の発展や資源記述方法の変化のため,より時流に即し,より将来を考慮したデータ作成・交換の環境への移行が必要となったとし,セマンティックウェブやLinked Data(CA1746E1240参照)は図書館や文化遺産機関に興味深い可能性をもたらすとしている。

 続いて,新たな書誌フレームワークに求められる要件として,次のような点が示されている。

  • 機関種,目的,時代等により異なる目録規則が用いられることを考慮し,特定の目録規則にとらわれないものとすべきこと。
  • 書誌記述をサポートする,所蔵,典拠,分類等のデータ型を提供すること。
  • テキスト形式だけでなくLinked Data形式のデータも収録すること。
  • MARCレコードの構造を規定している通信フォーマット(communications format)と,各機関におけるデータ蓄積形式や目録作業用のデータ形式等との関係について検討すること。
  • あらゆる規模・種別の図書館のニーズを考慮すること。
  • 必要がある限りMARCのメンテナンスを継続すること。
  • 既存データの再記述は困難なため,MARCベースのレコードとの互換性を持つこと。
  • MARC21から新たな書誌環境へのデータ変換(可能なら相互に)を実現すること。

 取組みの方法については,ウェブ環境,Linked Data,そして基本データモデルとしてのRDF,の3点に焦点を置くとしている。そのメリットとして,図書館のデータをウェブ上のデータと統合できることや,図書館関連技術がデータ作成者やソフトウェア開発者にも理解しやすいようになり図書館のコスト削減につながるということが言及されている。具体的な活動としては,情報関連コミュニティ内での交流の促進,資源や関連データの記述のためのドメインオントロジーの構築,協同によるプロトタイピングや参照実装が挙げられている。

 今後,この取組みを進めるための助成金を獲得し,諮問委員会と技術委員会を立ち上げ,検討を開始する予定とされている。また,全体計画に対する意見募集も行われている。

Ref:
http://www.loc.gov/marc/transition/news/framework-103111.html
http://www.loc.gov/marc/transition/
http://www.libraryjournal.com/lj/home/892637-264/library_of_congress_provides_details.html.csp
CA1746
E1191
E1240