E1247 – ACRLが「高等教育機関における図書館の基準」改訂版を公表

カレントアウェアネス-E

No.206 2011.12.08

 

 E1247

ACRLが「高等教育機関における図書館の基準」改訂版を公表

 

 米国の大学・研究図書館協会(ACRL)が,2011年10月付けで「高等教育機関における図書館の基準」(Standards for Libraries in Higher Education)の改訂版を公表した。この基準は,大学図書館が学生の教育や所属機関のミッション達成等におけるパートナーとしての役割を担うための指針となることを目的としている。

 ACRLでは,長年,“college library standards”(1959年初版),“standards for two-year institutions”(1960年初版),“standards for university libraries”(1979年初版)という3種類の基準が併存していたが,2004年にそれらが統合され,現行の基準の初版が策定された。改訂版と初版との違いとして,所属機関の有効性に対する図書館の貢献への期待が明確に打ち出されている点や,「原則」「パフォーマンス指標」「アウトカム」「評価」「エビデンス」という5段階モデルが提示されているという点が挙げられている。

 改訂版では,「所属機関の有効性」「図書館業務固有の価値」「教育的役割」「情報の発見」「コレクション」「空間」「管理・運営」「人材」「対外関係」という9項目について原則が示され,それらに対応する計57個のパフォーマンス指標が示されている。巻末の付録1では各パフォーマンス指標に対応するアウトカム(ACRLでは「図書館資料・サービスを利用した利用者がどのように変化したか」と定義している)の例について,付録2ではアウトカムの評価基準について述べられている。

 以下,いくつかの原則についてパフォーマンス指標とアウトカムの例を紹介していきたい。

 1つ目の原則「所属機関の有効性」に対応するパフォーマンス指標として,「図書館は所属機関のミッションに照らしてそのアウトカムを設定・計測する」等の7項目が挙げられている。例えば,「図書館は学生募集や学生在籍率等に貢献する」という指標に対するアウトカムとしては,「図書館をよく利用する学生は良い成績を取る」や「学生は成績向上における図書館の役割を説明できる」が紹介されている。

 3つ目の原則「教育的役割」に対しては,6つのパフォーマンス指標が挙げられている。そのうちの1つである「図書館員は,教員等と連携して,学生の教育に図書館のコレクションとサービスを組み込んでいる」という指標については,「教員は,授業や課題を発展させるために図書館員の協力を求める」や「学生や教員は,学生の教育体験における図書館の価値を明確に理解している」等のアウトカムが紹介されている。

 4つ目の原則「情報の発見」に対しては,6つのパフォーマンス指標が挙げられている。「図書館は全ての情報資源を対象とする検索インタフェースを開発し,ユーザは自身の情報探索の出発点からそこまで簡単にアクセスできる」という指標に対しては,「利用者は,どこから出発しても図書館資料に効率的にアクセスできる」や「利用者は,図書館は情報へアクセスするための最新の方法であると判断している」等のアウトカムが紹介されている。

 同基準を基にして,各図書館が,所属機関のミッションと調和するパフォーマンス指標を選び,利用者中心的で測定可能なアウトカムを設定し,量的・質的評価を行った後に,成功度を示すエビデンスをまとめ,図書館業務を継続的に改善していくことが期待されている。

Ref:
http://www.ala.org/ala/mgrps/divs/acrl/standards/standardslibraries.cfm
http://crln.acrl.org/content/65/9/534.full.pdf