E1124 – 米国大学生の情報リテラシーの現状と教員・図書館員等への提言

カレントアウェアネス-E

No.184 2010.12.02

 

 E1124

米国大学生の情報リテラシーの現状と教員・図書館員等への提言

 

 2010年11月1日,米国ワシントン大学情報学部のプロジェクト“Project Information Literacy”が,大学生の情報リテラシーを調査したレポート“Truth Be Told : How College Students Evaluate and Use Information in the Digital Age”を公開した。執筆者は,同大学のヘッド(Alison J. Head)氏とアイゼンバーグ(Michael B. Eisenberg)氏である。レポートは,2010年春に全米25大学に在籍する学部学生8,353名に対して行ったアンケート結果と,その後のフォローアップインタビューでの回答に基づいて作成されている。主な調査結果は以下の通りである。

  • 回答者の77%が,調べたウェブ情報が最新のものかどうかについて確認すると答え,67%の回答者は,図書館資料の場合も同様に確認すると答えた。すなわち,多くの学生は情報を鵜呑みにしないという結果であった。
  • 回答者の61%は,情報が信頼に足るものかどうかについて,必要な場合には友人もしくは家族に尋ねると答えた。回答者の49%は,授業で使う情報を評価するにあたって,教員に相談すると答えたが,図書館員に相談すると答えたのは11%であった。
  • 回答者の大多数が課題の調査をいつも決まったとおりの手順で実施していることが明らかとなった。回答者にインタビューすると,その調査テクニックの多くは高校で学んだものであり,それを大学でもそのまま活用しているとのことであった。
  • 今の学生は新しいコンピューター技術に通じていると言われているが,過去6か月間に,授業での課題等のためにウェブ2.0のアプリケーションを利用すると答えた回答者はほとんどいなかった。
  • 回答者の84%が授業での調査プロセスで最も難しいと感じているのが,調査を始めること自体に対してであった。調査課題のトピックを定義すること,それを絞り込むこと,そして無関係な結果を除外するということ,それら3つのことに関しても,それぞれ回答者の60%以上が困難を感じている。回答者へのインタビューの結果,情報があふれるデジタル時代において,学生は,問題を特定するという研究にとって必要な洞察力を欠いていると考えられる。
  • 多くの回答者が,授業ではなく個人での利用においては,情報を見つける際には問題を感じていないと回答した一方で,41%の回答者が日常生活での情報の評価や選別に苦慮していると答えた。

 レポートの最後には,上述の結果を踏まえ,教員や図書館員等に対して次の4点からなる提言が記されている。それらは,(1) 調査を進める手順に関する説明を,学生への課題のガイドラインの中に含めるべきである,(2) データベース等の変化は激しいため,図書館員はこれまでのようにリソースを探す研修ではなく,探すプロセスに焦点を合わせた学生向けの研修を行うように考慮すべきである,(3) 学生は教員に調査課題のトピックを設定してもらいたがるが,教員はトピック設定の作業が必要な課題を与えて、学生に,自身が進めている調査に対して自分で責任を持つようにさせる,(4) 卒業後の実社会に備えるために,学生がどのように大学で訓練されるべきかを見極めるべきである,すなわち学生の情報リテラシーが実社会で通用するものかどうかという観点から,大学の情報システムを見直す必要がある,という4点であった。

Ref:
http://projectinfolit.org/pdfs/PIL_Fall2010_Survey_FullReport1.pdf
http://www.libraryjournal.com/lj/communityacademiclibraries/887643-419/truth_or_dare__peer.html.csp
http://chronicle.com/blogs/wiredcampus/students-lack-basic-research-skills-study-finds/28112