CA1940 - システムとしての国立国会図書館オンライン / 川瀬直人

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カレントアウェアネス
No.338 2018年12月20日

 

CA1940

 

 

システムとしての国立国会図書館オンライン

電子情報部電子情報サービス課:川瀬直人(かわせなおと)

 

 国立国会図書館オンライン(NDLオンライン)は国立国会図書館蔵書検索・申込システム(NDL-OPAC)に代わる国立国会図書館(NDL)のサービスへの申込窓口として、2018年1月5日に稼働を開始した。これによってNDLのサービスや申込方法がどのように変わったかや、NDLオンラインの使い方については、小林や阿部による解説がある(1)(2)(3)。サービス面での解説はそちらに譲ることとし、本稿では、主にシステム的な観点からみたNDLオンラインのユーザインターフェースデザインやシステムの特徴について概説する。
 

ユーザインターフェースデザイン

 NDLオンラインは、そのデザインや機能の検討において従来の開発時よりも、図書館員ではなく、一般の利用者による利用を意識して開発している。そのため、全体としてはシンプルなデザインにするとともに、特に既にオンラインショップの利用等に慣れた多くの利用者にとっては、特に説明がなくとも利用可能なシステムとなることを意図している。画面は全体として配色をおさえたシンプルなデザインとなっている。このデザインは専門のウェブデザイナーが、ヒューリスティック評価(4)、過去の利用者アンケートの回答の分析等を行って、NDL-OPACの持っていた問題点を改善できるよう考えられたものである。例えば利用者が申し込むために押す必要があるボタンは、一つのエリアにまとめる、資料に対してどのような申込が可能かを予め表示して、ボタンのデザインで申込可否が判別できるようにし、申込ができない場合はその理由を表示する等の点でデザインによる改善を図っている。NDLオンライン全体のデザインコンセプトについては、小林(5)も参照いただきたい。ログインした後の画面上部には入館状態の表示に加え、現在の申込済み件数や申込カート、申込状況の確認画面へのリンクのある申込ステータスバー(図1)を設置し、現在の申込状況が常に確認しやすいようになっている。

 

図1 申込ステータスバー

 

 またスマートフォンからの利用に対応するため、レスポンシブウェブデザインを採用している。後述するようにCSSフレームワークには、AngularJS Material(6)を利用し、マテリアルデザイン(7)の考え方を取り入れている。スマートフォン版の画面でも、ほとんどの機能がPC版の画面と同様に利用できる。機械的なアクセスを除いた2018年7月のアクセス数を見ると、インターネットからのアクセスの内、約23%がスマートフォンからのアクセスであり、スマートフォンからの利用も進んでいることが見受けられる(8)

 NDLオンラインのロゴに用いているアイコンも同じデザイナーによって提案されたものであり、東京本館の外観と本をめくる様子をモチーフにデザインされている(図2)。

 

図2 NDLオンラインのロゴとそのモチーフ

 

書誌データの収集と検索結果一覧での表示

 NDLオンラインで提供している書誌データは、NDLが収集した資料を整理する(申込や利用者情報を管理するシステムとはまた別の)内部の業務システムから出力される書誌データと、国立国会図書館デジタルコレクション(NDLデジタルコレクション)から収集したデータを用いている。これらは国立国会図書館サーチがそれぞれのシステムから収集したものをコピーして利用している。収集後の処理は国立国会図書館サーチとは別になるため、検索項目や検索時の挙動・表示などは国立国会図書館サーチとは異なっている。またリサーチ・ナビで提供している目次データベースに収録されている目次データもあわせて検索できるようにしている。これに加えてNDLで導入しているリンクリゾルバを活用して、NDLが契約している電子ジャーナルやオープンアクセスジャーナル等の書誌データも提供している。これによって契約ジャーナル等がNDLオンラインでの検索でヒットした場合にはリンクリゾルバを経由して利用することが可能となっている。このように従来の図書館資料(主として紙媒体)とデジタル化された資料を統合して提供している点も特徴の一つである。

 NDLの所蔵資料をデジタル化してNDLデジタルコレクションで提供しているものについては、業務システムとデジタルコレクションの双方にメタデータが存在する。NDLオンラインでは双方からデータを収集したうえで、それらをIDを用いて突合し、1対1で同じものと同定できた場合には、1件のデータに統合して見せている(書誌同定)(図3)。その場合、表示するアイコンも二つのアイコンを重ねたイメージとしている(図4)。

 

図3 同定された書誌情報の表示例

 

図4 冊子体のアイコン(左)とデジタル資料と同定された場合のアイコン(右)

 

 また電子ジャーナル書誌と冊子体のジャーナルの書誌を ISSN を用いて同定したり、雑誌記事索引とデジタルコレクション収録の目次情報との同定を行っている。これらについては、1件にまとめるのではなく、インデントをつけてまとまりのあるグループであることがわかるように表示している(図5)。(インデントをつけた表示は適合度順の場合のみとなっている。)

 こうした機能は、単に紙資料とデジタル資料を統合して検索・提供するだけでなく、できるだけわかりやすく短い手順でデジタル化された資料にナビゲートするために考えられたものである。

 NDLが作成した書誌データとNDLデジタルコレクションから収集するデータは週末を除いた日次での更新となっている。目次データや契約電子ジャーナル等の書誌データは必要に応じて更新が可能となっており、現在は年3・4回程度の頻度で更新を行っている。契約電子ジャーナル等のデータは更新の都度、全件を最新の情報に入れ替えるという運用となっている。

 

図5 インデントによるグループ表示例

 

書誌詳細画面のデザイン

 検索結果一覧から書誌詳細画面(図6)に遷移すると、画面上部に書誌データ、画面下部に当該の資料に関する所蔵一覧(アイテム情報)を表示している。書誌データは開閉式になっており、主要な項目のみをデフォルトで表示するようになっている。これはデザイン検討の結果であり、資料を特定し申し込むという用途においては、詳細な書誌データまで必要になる場合は少なく、所蔵一覧を確認しやすくする方が利用者の利便性に資するという考えによる。

 

図6 書誌詳細画面

 

 各種の申込は、所蔵一覧に表示される各アイテム情報を指定したうえで、提示されている申込メニューを選択して申込カートに一時保存して、申し込むことになる。NDL-OPACが1件ずつしか申込を行うことが出来なかったのに対し、NDLオンラインでは申込カートを使うことで、申込カートにアイテム情報を保存し、申込メニューごとにまとめて申し込むことを可能としている(図7)。このため、検索から申込の完了までを都度繰り返すのではなく、検索の結果申し込みたいものを申込カートに保存しておき、最後に申込カートから、申込件数の上限を超えない範囲でまとめて申込を行うことで、申込に関する操作の省力化を図ることができる。また申込カートへの保存まではいつでも可能であるため、来館前に検索・カートに保存して準備を行っておくことで、来館してから(閲覧等の)申込を迅速に行うことができるし、申込を完了させるまでの時間のない時でも申込カートへの保存を使うことで作業を容易に再開することが可能である。

 

図7 申込カート画面

 

システムアーキテクチャ

 NDLオンラインはJavaScriptを用いて構築されたSPA(Single Page Application)である(9)。SPAは従来のウェブページと異なり画面全体が遷移するのではなく、一枚のHTML上で画面の一部を書き換えることで画面を更新している。これによってパフォーマンスの向上やユーザエクスペリエンスの改善、開発コストの低減などを図っている。そのため画面描画や動作にはクライアント側の処理能力、特にブラウザのJavaScriptエンジンの処理能力が大きく影響しており、Internet ExplorerよりもFirefoxやGoogle Chromeを使う方が処理速度の観点からは適している。JavaScriptの開発フレームワークとしてはAngularJS(10)を採用している。CSSフレームワークもそれに合わせAngularJS Material(11)を用いている。また最近の動向を踏まえ、常時SSL化を実現している。

 書誌詳細画面(図6)で表示されるデータの内、書誌データは前述した通り、内部の業務システムで作成した書誌データをNDLオンラインに取り込み、検索・表示に用いているが、アイテム情報はNDLオンラインでは保持していない。アイテム情報や利用者の情報は、申込を処理する別の業務システムが保持しており、NDLオンラインは都度その業務システムのAPIに対しリクエストを投げることで、当該の資料に対して可能な申込メニュー、資料の状態や資料が利用中であるかどうか、ログインしている利用者の種別、入館状態などの情報を取得し、それぞれの状態に応じて申込メニューの表示やボタンの押下可否を制御している。例えば、閲覧申込はNDL館内で資料を出納し閲覧するための申込であるため、申込カートに保存しておくことは可能だが、入館した状態にならなければ申込はできない。NDLオンラインの画面上では、入館していない状態では(申込カート上の)閲覧申込ボタンは表示されているが押下できない(グレーアウトされている)状態になっており、それを見るだけで、館外からは閲覧申込は行えないことが直感的に理解できるようになっている。入館してから申込カートにアクセスすると、ボタンは押下可能となっており、申込手続きを進めることができる。申込が出来ない状態でもボタンを表示し、押下できない状態にする仕様となっているのは、その利用者・資料にとって利用できるメニューに何があるのかを予め提示することで、条件が揃えば利用可能となるサービスにどんなものがあるのかの全体像を、利用者に示すことを意図したデザイン上の工夫である。

 また、利用者のパスワードや認証、利用者情報の変更等も同様に内部の業務システムで管理されており(12)、APIを介して実現している。新規のインターネット限定利用者登録の登録時や、パスワードの変更時には確認のためのメールが送信されるが、このメール送信も NDLオンラインではなく、内部の業務システムが担っている。一方で、利用者が認証済みかどうかの情報については、NDLオンラインだけではなく、国立国会図書館サーチ、NDL内の利用者用端末の3者の間で共有されるようになっている。このため、来館した利用者が、利用者用端末に利用者カードを置いて端末にログインを行い、その端末のブラウザでNDLオンラインにアクセスすると、NDLオンラインでもログインした状態となる。

 従来のNDL-OPACが、統合図書館パッケージシステム(13)の一部として、全てを統合した一つのシステムの一機能であったのに対し、NDLオンラインは資料の検索と表示、申込カートまでを管理するシステムとなっている。別のシステムとAPIで連携することで、認証や申込、アイテム、利用者情報の変更等の機能を含めた全体のサービスを提供しているのが、特徴の一つである。図8はNDLオンラインとその他のシステムとの関係を概略として示したものである。

 

図8 システム間連携概要図

 

検索機能

 検索はオープンソースの検索エンジンであるApache Solr(14)をSolrCloudと呼ばれるクラスタリング構成で構築して行っている。一部の項目を除いて、形態素解析を用いたインデクスとn-gram(bi-gram)を用いたインデクスの両方を用意して使っている。また完全一致検索に使うためのインデクスも別に持っている。詳細検索画面をみるとわかるように、資料群で共通の検索項目の他、各資料群に独自の検索項目(例えば「地図」における「縮尺」、「博士論文」における「授与大学」等)がある。こうした多岐にわたる検索項目に対応した多数のインデクスを持っている。そのため、例えば簡易検索のように多数の検索項目を対象とする場合、単純に検索式を構築すると、多数のインデクスに対してOR検索を行う必要があるため、パフォーマンスの低下が懸念される。そこで、項目ごとのインデクスを集約したインデクスを作成し、それを検索に用いることでパフォーマンスの向上を図っている。

 例えば、タイトルという検索項目には本タイトルの他、タイトルよみ、部編名、部編名よみ、シリーズタイトル、シリーズタイトルよみ、内容細目、内容細目よみ等の多くのデータ項目が検索対象に含まれている。これらのそれぞれに形態素解析のインデクス、n-gramインデクス、また一部では完全一致用のインデクスも作成している。これを形態素解析のインデクス、n-gramインデクス、完全一致用インデクスの3つに集約したインデクスを作り、タイトルの検索ではこの3つのインデクスだけを見に行くことで、多数のデータ項目に対するOR検索を行うことによるパフォーマンスの劣化を防いでいる。

 いずれにしても、かなり多くの検索項目を簡易検索で検索可能となるように設定しており、多くの場合は詳細検索の項目を意識することなく、簡易検索のキーワード欄で検索し、必要に応じてファセットで絞り込んでいく使い方が可能である。

 

おわりに

 NDLオンラインは、資料の検索からサービスの申込までのインターフェースを担う、NDLにとっては最も重要なシステムである。今後もNDLのオンライン上の「顔」として活用が進むことを期待したい。

 

(1)小林芳幸. 新たな利用の窓口: 国立国会図書館オンライン. 参考書誌研究. 2018, (79), p. 3-14.
https://doi.org/10.11501/11064400, (参照 2018-10-11).

(2)小林芳幸. 国立国会図書館オンライン, その新しいサービス. 図書館雑誌. 2018, 112(2), p. 96-97.

(3)阿部幸江. 国立国会図書館オンラインの目次データを使用した資料の検索方法. 参考書誌研究. 2018, (79), p. 15-59.
https://doi.org/10.11501/11064401, (参照 2018-10-26).

(4)篠原稔和. ウェブ・ユーザビリティテスティングの実際. 情報の科学と技術. 2004, 54(8), p. 398-406.
https://doi.org/10.18919/jkg.54.8_398, (参照2018-10-11).

(5)小林芳幸. 新たな利用の窓口: 国立国会図書館オンライン. 参考書誌研究. 2018, (79), p. 3-14.
https://doi.org/10.11501/11064400, (参照 2018-10-11).

(6)AngularJS Material.
https://material.angularjs.org/, (accessed 2018-09-20).

(7)2014年にGoogleが発表した、ユーザエクスペリエンスデザインに関する考え方。フラットデザインに対して、影や奥行、質量を取り入れることで利用者の操作性の改善を図っている。
“Material Design”. Google.
https://material.io/design/introduction/, (accessed 2018-10-18).

(8)なおアクセス数は Logstash、Filebeat、Elasticsearch、Kibanaといったツールを用いて集計され、業務統計として数値が取得できるようになっている。

(9)鈴村幸太郎 . Single Page Application(SPA) サーバーで画面生成しない 応答と操作性が向上 . 日経 systems. 2015, (261), p. 30-35.

(10)AngularJS.
https://angularjs.org/, (accessed 2018-09-20).

(11)AngularJS Material.
https://material.angularjs.org/, (accessed 2018-09-20).

(12)稼働時に、移行したログインパスワードが大文字になっている点について注意喚起が行われたが、NDLオンラインが大文字でパスワードを保持しているわけではなく、内部システムに移行前の統合図書館パッケージシステムが、大文字でパスワードを保存していたことが理由である。NDLオンラインと利用者情報を管理している内部システムでは、従前よりも厳しいパスワードポリシーを設定しており、パスワード変更時にはこのポリシーが適用される。
“お知らせ”. 国立国会図書館オンライン.
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/static/info#2131, (参照 2018-09-20).

(13)“Aleph”. Ex Libris.
https://www.exlibrisgroup.com/products/aleph-integrated-library-system/, (accessed 2018-09-20).

(14)Apache Solr.
http://lucene.apache.org/solr/, (accessed 2018-09-20).

[受理:2018-10-26]

 


川瀬直人. システムとしての国立国会図書館オンライン. カレントアウェアネス. 2018, (338), CA1940, p. 5-9.
http://current.ndl.go.jp/ca1940
DOI:
https://doi.org/10.11501/11203356

Kawase Naoto
NDL Online as a Computer System