CA1823 - 大学図書館におけるFacebookを利用した広報戦略 / 伊藤仁浩

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カレントアウェアネス
No.320 2014年6月20日

 

CA1823

 

 

大学図書館におけるFacebookを利用した広報戦略

北海道大学附属図書館:伊藤仁浩(いとう きみひろ)

 

1.はじめに

 私たち大学図書館職員は、日頃から利用者の声に耳を傾け、より良いサービスを提供できるよう努力している。しかし、私たちが日々悩み、そして生まれたサービスも、広報の仕方が不十分だと、メインターゲットである大学生へも満足に伝えることができない恐れがある。ポスターで知る学生、ホームページで知る学生、情報入手の仕方は様々なため、一つの媒体で多くの学生に伝えるのは非常に難しい。

 見渡せば、あちらこちらでスマートフォンを手にした人があふれる現代。図書館でもTwitterやFacebookといったソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を利用すれば、より多くの利用者へ早く手軽に情報を伝えることができるだろう。

 

2.新たな広報手段の導入

 北海道大学附属図書館では2012年4月に広報ワーキンググループ(1)を設置し、図書館広報全体を見直した。その結果、ターゲットが定まっておらず、在庫を多数抱えた広報誌があり、また、広報手段も十分とはいえない状態であることがわかった。そこで、毎月発行していた図書館報速報版「楡蔭レター」を廃止し、代わりに、より速報性の高いSNSの導入を決め、Facebookを採用した。写真をメインで掲載するFacebookは、図書館のサービスを1番わかりやすく伝えることができるツールと考えたためである。他にもユーザー数の多さや口コミ力の強さといった特徴を踏まえ、2012年10月、本学の学生をターゲットとした北海道大学附属図書館公式Facebookの運用を開始した。

 近年、他の大学図書館でもFacebookの導入が進み、2012年7月に調査した時点で利用が確認できた図書館は11館のみであったが、2014年5月では49館に増えている。

 

3.北海道大学附属図書館Facebookのコンセプト

 本学図書館Facebookのコンセプトは、「顔が見える図書館」である。図書館には多くの人が出入りし、様々なスタイルで過ごす人がいる。そして、それを支える人がいる。真剣な顔や悩んでいる顔、笑っている顔等、実に様々な表情が見られる。従来の広報の掲示板では伝えることができないその姿を伝えたいと考えた。いつも図書館を利用する学生、たまにしか利用しない学生、何らかの事情で利用できない学生、どのようなタイプの学生でも今の図書館の表情を知ってもらい、その場にいるような感覚になってほしい、そんな思いを込め、人物を多く登場させた方法で現場の様子を伝えている。

 

4.運用方針

 組織でFacebookの運用を検討する際、初めに決めなくてはならない課題の一つが、どのように管理し維持するかである。担当者が一人の場合、発信のスピードが速い、投稿の統一感を出しやすいというメリットがある反面、不在時に投稿や対応ができない恐れがある。また、広報のノウハウが組織内で共有されづらい点も問題である。担当者が複数の場合は、確認作業が増え、投稿までの時間を要するが、完成度の高い内容が投稿できることや担当者の負担が分散されるというメリットがある。本学ではこれを考え合わせ、後者の体制で管理する方法が最適と判断した。

 Facebookには管理人機能があり、登録された担当者は投稿、コメントの返信や削除、ページ編集等が可能となる。2014 年5月時点で、本学図書館Facebookに管理人として登録されている担当者は25名である。内訳は広報委員が8名、学生協働ワーキンググループ等の委員が3名、図書館の各業務担当が14名である。

 他には、ターゲット設定(誰に向けて発信するか)や投稿ルール(何を投稿するのか、いつ投稿するのか等)について、広報ワーキンググループで方針を決定した。また、管理人及び職員間のコンセンサスを図るため、Facebookの基本情報や操作方法及び投稿ルールについてまとめた資料を作成し、説明会を開催した。

 

5.具体的な運用

 

  • 何を投稿するのか
  •  では、Facebookに何を投稿するのか。まずは、これまで掲示板やホームページ等で通知していた内容を、少し口調を柔らかくした言葉に変え、それに合わせた写真を用意する。写真に悩むということであれば、実際にポスター等を掲示している様子を撮影、またはポスターそのものを掲載する。文字数はあまり多く載せず、詳細な情報はウェブサイトへ誘導する。図書館には利用者へ伝えたいサービスが豊富にあり、話題が尽きるということはないと思うが、より個性的なFacebookに成長するためには、新しいタイプの内容にも挑戦する。例えば、わざわざ通知するまでもないと考えていたことを投稿するのも良い。素晴らしい設備が整っているといった図書館自慢、職員の仕事紹介、天候や季節の話題などを本学では掲載した。何れにしても楽しく運営し、感情を込めて投稿することが、より多くのファン獲得につながる。これまで、本学で閲覧者数が多かった投稿は、国立国会図書館デジタル化資料送信サービスの導入といった新たな利用法や図書館報発行の告知であった。

  • 写真撮影
  •  数多くのFacebookページの中から、ユーザーに記事を読んでもらうためには、いかに写真に目を留まらせるかがポイントとなる。そのためには、文章を読まなくても写真のみで内容を伝える構図を意識するといった、写真の表現力が求められる。撮影は主に撮影技術を持つ管理人が行っているが、担当者自身でも良い写真を撮影できるよう勉強会を行った。

     人物を配置しての撮影は、肖像権のトラブルが起きないよう、撮影前に内容を説明し、承諾を得たもののみ投稿している。

  • 投稿内容の承認
  •  投稿内容について、どこまで承認を得るのか。本学では担当者自身の判断で投稿することとした。速報性を重視したツールであることが1番の理由であるが、投稿内容の大半がすでに図書館として承認済みの情報が多く、改めてFacebook記事用としての再承認を得ないこととした。ただし、業務担当内やワーキンググループ内での意志疎通は図るようにしている。

  • 投稿のタイミング
  •  文と写真が完成すれば、すぐに投稿すればいいというわけではない。投稿日時のタイミングによっては、どんなに良い記事でも、全く閲覧者数が伸びない場合があるからだ。初めに確認することは、他の担当者と投稿日時が重なっていないかである。短時間で連続して投稿した場合、一つ前の記事の閲覧者数が少なくなることが多いためだ。それを防ぐため、オンラインのスケジュール表を作成した。担当者はあらかじめ投稿したい日にチェックを入れることで、担当者全員がスケジュールを把握することができる。

     本学図書館Facebookの投稿を見るユーザーは、正午の時間帯が比較的多い。そのため、正午より少し前に投稿することで、閲覧者数が増えることがわかった。これらのデータは「インサイト」と呼ばれるページ解析機能から情報を得ることができる。また、1日の投稿数は最大2つまでとし、週に2~3日程度の投稿を維持している。長期間投稿しないとユーザー離れにつながるため、投稿し続けることが大切である。

     

  • 「いいね!」数の伸ばし方

 当然、Facebookをただ維持するだけでは、「いいね!」数は増えていかない。Facebookの存在を伝える何らかのアクションが必要である。ポスター、デジタルサイネージ、垂幕といった掲示物。しおり、ティッシュペーパー、付箋をプレゼントする方法等でFacebookを告知する。本学では2014年4月の入学式で新入生全員へ図書館報を配布し、Facebookの存在をアピールした。効果的と思われる方法として、費用が必要とはなるが、Facebook内に広告を掲載(2)することも考えられる。これは、図書館のページに「いいね!」をしていないユーザーであっても、図書館が投稿した内容が表示されるため、存在を知らせることができる。この方法は本学でもぜひ試してみたいところである。

 

6.導入効果

 Facebook開設後、利用者の行動にはどのような変化が起きたのか。学生から投稿されたコメントには「講習会の存在を今まで知らなかった。Facebookで紹介されているのでとても便利」、「自動化書庫なるものがあるなんて、知らなかった!本が好きといいながらも、こんなにある蔵書を活かせていないなと」等があった。他にも、シェアされた記事が学生の間で盛り上がっている場面も見られた。そういった反応から、図書館Facebookの存在を知り、「いいね!」、コメントの投稿、シェアの機能を使い、情報が確実に広まり、図書館へ足を運ぶきっかけになることがわかった。また、学生に直接聞いて印象的だった感想が、「いつもFacebookで職員さんの顔を見るので、以前よりも話しかけやすくなった」であった。図書館では、何かを相談したくても話しかけづらい雰囲気があったのかもしれない。Facebookはそれを解消できる方法でもあることがわかった。

 図書館職員にも変化があった。それは情報共有という面である。大きな組織になるほど周りの動きが見えづらくなり、隣の課や係が今何に向けて業務を行っているかわからないことが多い。しかし、運用を開始したことによって、多くの職員も本学図書館Facebookを閲覧するようになり、図書館全体の動きが見えるようになった。

 

7.まとめ

 Facebookはアカウントを作成し、プロフィール写真を用意すれば、すぐにでも公開できる簡単な広報手段である。組織で行う場合はそれに加えて、誰が管理し、投稿するかの運用方針を決めれば、開始できる。図書館Facebookの理想的な運営方法は、職員全員が管理人として登録し、投稿ができる体制である。広報の業務は、広報担当者だけが行うものではなく、職員全員が広報マンになるべきであるためだ。業務上、何か伝えたいことが発生したとき、いつでも誰でも投稿ができれば、Facebook、そして図書館全体にさらに活気が生まれ、利用者へもその雰囲気が伝わるだろう。

 また、Facebookは一方的に伝える広報ツールではなく、コミュニケーションツールであるので、ユーザーは投稿された記事に、共感、質問、意見等を自由にコメントできる。それに対し、運営者側がどのようにリアクションするのか、ページ内に運用方針を記載し、ユーザー側にも理解してもらう必要がある。本学では「いただいたコメントはすべて読ませていただいておりますが、すべてのコメントに対して個別の回答をさせていただくわけではございません」とし、各投稿者が対応を行っている。ただ、本学図書館のページには、実際にはコメントを寄せられることが少ないのが現状で、もっとユーザーがコメントしやすい雰囲気作りが今後の課題である。

 SNSを利用するユーザーにはFacebookは使わず、Twitter派やLINE派が存在する。より多くのターゲットへ情報を届けるためには、広報ツールを併用する手段が効果的である。本学でもTwitterの導入を検討したが、管理が手薄になることが予想されたため、見送られた。今後世の中の情勢を見つつ、新たなSNS導入を視野に入れたい。

 消費者をターゲットにした世の中のあらゆる商品は、それを生み出すのと同じぐらい広報戦略に時間をかけている。図書館でも一つ一つのサービスについて、どのような広報手段が最適かを慎重に検討し、既存の媒体に加えて、時代に合わせた広報媒体も利用すれば、図書館のサービスを知らなかったと言う利用者を確実に減らすことができるだろう。

 

(1)平成25年4月1日より、広報ワーキンググループとホームページ委員会が廃止となり、広報委員会が発足。

(2)まだ図書館のページに「いいね!」をしていない個人ユーザーの画面に、強制的に投稿記事の掲載や、画面端の広告欄にプロフィール画像と紹介文を掲載することができる。どのようなユーザーに掲載するかは、細かくターゲット設定をすることができるため、図書館に関わりのあるユーザーへ確実に伝え、ファンの獲得や閲覧者数が増えることが期待できる。

[受理:2014-05-19]

 

 


伊藤仁浩. 大学図書館におけるFacebookを利用した広報戦略. カレントアウェアネス. 2014, (320), CA1823, p. 8-10.
http://current.ndl.go.jp/ca1823

Ito Kimihiro.
PR Strategies for University Libraries Using Facebook.