CA1803 - 動向レビュー:社史の世界 / 熊谷尚子

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カレントアウェアネス
No.317 2013年9月20日

 

CA1803

動向レビュー

 

社史の世界

 

総務部会計課:熊谷尚子(くまがいしょうこ)

 

1. 社史とは

 社史とは、読んで字のごとく会社の歴史をまとめた資料を意味する。社史の厳密な定義はなく、社史に関するおもな研究では企業自身の責任において提供されることを要件に挙げているが、ジャーナリストが刊行した社史、出版社のシリーズものの社史や、資料集、写真集など、企業の歴史を知る上で参考となる資料まで広く含めて社史とみなす場合もある(1)。日本における社史は、企業自身のために作成され、配付先が関係者に限られることから一般の人が目にする機会は少ないが、「大学や官庁、あるいは地方自治体の図書館でも、会社史は、閲覧頻度、貸し出し頻度の高いジャンルの一角を占める」(2)と言われることからもわかるように一定の需要を持つ。国立国会図書館(以下NDL)の科学技術・経済情報室でも社史は質問の多い資料群である。理由として、「その会社やその会社が属する業界の百科事典的な意味合いをもっており、当該企業従業員だけでなく顧客、投資家、地元住民、行政関係者、就職希望者、ライバル企業関係者等々にとっても、貴重な情報源となっているから」であり、読み通す人は少なくても、「部分読み」する人は多い(3)。また、社史を作成する企業の担当者が参考のために利用するケースも多いと聞く(4)。NDL提供の雑誌記事索引で社史に関する記事を検索すると、ビジネス誌上で経営上参考とすべきケーススタディの宝庫として、企業の経営哲学の教科書として、また、就職活動に際してウェブでは入手できない企業情報の情報源として紹介する記事が散見される(5)

 2012年10月20日の日本経済新聞では、景気が低迷を続ける中でも社史は衰えることなく発刊され、社員教育や資料の整理保存を目的に活用されている現状が紹介されている。社史刊行のピークの1980年代の年間刊行数は約400点、第二次ピークにあたる2000年代の年間刊行数は約200点と推定されている(6)

 社史は、創立から50周年というような区切りの良い時期にそれを記念して刊行される場合が一般的だが、2012年は例年よりも100年史の刊行が増加した可能性がある。帝国データバンクが2011年8月にまとめた調査によると、2012年に創立100周年を迎える企業は2011年の約3倍の1,854社になるという(7)。NDLにはジェイティービー、出光興産などの100年史がすでに納本されている。

 

2. 社史の特徴

 社史には、歴代の社長・役員一覧、生産高・利益の推移、従業員数の推移、組織の変遷、グループ企業情報、定款など、企業に関する総合的、長期的な情報が収録されている。ある業界や地域のリーディングカンパニーの社史は、その業界や地域の発展史と重なる部分が多いため、一企業にとどまらず、技術史、業界史、地域の産業史の情報を提供してくれる。生活と密接に関連のある産業の社史の場合は、文化史、風俗史の資料ともなる(8)

 例えば、キヤノンの『挑戦の70年、そして未来へ』(2012)は技術や生産体制の発展を豊富な製品の写真や広告とともに解説している。別冊の資料編にはカメラ・ビデオ機器、放送・業務用レンズ、医療機器、事務機、光学機器の区分ごとに主要製品の名称、写真、販売年月、価格がまとめられ、昔の製品について調べる際に有用である。

 ディスプレイ業界大手の乃村工藝社は、愛知万博や東京スカイツリータウンなどの大規模プロジェクトを手がけているが、その源は明治時代の芝居小屋の大道具方にある。『時空を超えて : 乃村工藝社120年史』(2012)には、明治以降、同社が手がけた様々なイベントの案内冊子やポスター、写真が多数掲載されており、文化史・風俗史的視点からも興味深い。

 京阪電気鉄道株式会社の『京阪百年のあゆみ』(2011)本編は、京阪グループの事業展開を時系列に沿って記述した「通史」、「ひらかたパークの歴史」などのテーマに沿って記述した「テーマ史」から構成されており、沿線の住宅、飲食店、レジャー産業の発展を見て取ることができる。

 社史の形態については、分厚く堅苦しい資料というイメージがあるが、近年はビジュアルを重視し、図版が豊富でレイアウトも工夫された社史が増えている( 9)。装丁に凝る企業もあり、例えば『日清食品50年史』(2008)は、同社の代表的商品チキンラーメンの袋を模した外袋と全面に麺を印刷した箱の中から資料が出てくるというユニークなデザインのもので、日本マーケティング協会賞を受賞している(10)

 また、DVDなど電子資料を主体とする社史もある。『日本コロムビア100年史』(2012)は、DVD、CD-ROM、小冊子の3冊セットで、本編のDVDには同社が扱った製品の映像や音楽がふんだんに用いられており、CD-ROMにはこれまでに刊行した同社の社史のPDF版が収録されている。更には、本格的な社史を自社ウェブサイトに掲載している企業もある。トヨタ自動車の『トヨタ自動車75年史』、ウェブ上で連載した記事を保存してウェブ版50年史とした本田技研工業株式会社の『大いなる夢の実現』、PDF版をウェブ上で公開しているシャープ株式会社の『シャープ100年史(2012年6月版)』、沖電気工業株式会社の『進取の精神 沖電気120年のあゆみ』などがある(11)

 

3. 図書館における社史の利用

 実際に、図書館での調べもので、社史はどのように利用されているのだろうか。レファレンス協同データベース(12)を「社史」、「年史」というキーワードで検索すると、社史が関係するレファレンスサービス(図書館員による調査相談)の事例を見つけることができる。社史の所蔵調査や、特定の企業の事業に関する調査が多いが、そのほかに、ある産業における史実の調査も見受けられる。過去の製品・サービスについて調べる過程で関わった企業名が判明し、その社史を参照する、というようなケースである。例えば、以下のトピックに対する調査で社史が用いられている。

  • 製品の歴史:牛乳瓶のふたの変遷、日本で調理用ミキサーをはじめて製造したメーカーと製造時期、明治から昭和にかけての日本のアイスクリームの歴史、日本製鐵株式会社輪西製鉄所の焼結作業において用いていた材料
  • 文化史的情報:明治28年11月東京で上演された歌舞伎の演目の役者名と配役、朝日新聞掲載の明治から大正期の新聞小説の目録、雑誌『旅行満洲』の刊行の経緯並びにその変遷
  • 昔の写真:伊丹空港、阪神電車出入橋の写真
  • 業界史:明治期の日本の煉瓦工業の実態
  • 企業情報:「日窒」の正式名称及び現社名、京成電鉄が昭和16、17年頃に経営していた私立京成工業学校について、百貨店(近鉄・阪神・阪急)の設立時の取締役社長、自動車会社各社の設立に関する創業者の考えや思い・エピソードが載っている資料

  これらの事例から、図書館において、2.で前述した社史の特徴を生かしたレファレンス調査が行われている様子がうかがえる。

 

4. 社史の内容を知るための情報源

 社史の紹介記事、優れた社史を顕彰する賞には、以下のようなものがある。

  • 『社楽』:神奈川県立川崎図書館が2012年に創刊した情報誌。特色のある社史や社史の使い方を紹介するコラムや、新着社史の一部の紹介記事を掲載している。同誌は同館ウェブサイト上でも公開されている(13)
  • 「社史紹介」(14)(渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターウェブサイト内に掲載):同センターのプロジェクト「社史索引データベース」(15)に登録した社史の概要と企業の沿革が掲載されている。
  • 「優秀会社史賞」:日本経営史研究所が会社史の水準向上を目的として、1978年から隔年で発表してきた賞。専門研究者が資料収集及び情報公開の程度、記述の適切さなどを基準に選考し、同研究所ウェブサイト内に入選作品リストと、選考報告書の一部を掲載している(16)
  • 「みんなで選ぶ社史グランプリ 東西図書館投票」:神奈川県立川崎図書館と大阪府立中之島図書館が2012年に合同開催した、一般利用者による投票企画。『社楽』4号(17)、5号(18)にノミネートされた社史の紹介や投票結果が掲載されている。

  

5. おもな所蔵機関

 NDLは、2013年6月現在、約1万2,900点の社史・経済団体史(和書)を所蔵している。この点数は、『国立国会図書館所蔵社史・経済団体史目録』(国立国会図書館, 1986)に収録されている約6,500点(明治以降1985年8月までにNDLが収集し整理した社史類)に、1985年以降のNDL分類表(NDLC)でDH22(会社史)、DF238(銀行史)に分類された和書約6,400点(19)を合計したものである。ただし、当該企業の事業の産業史に分類されている場合もあり、NDLの件名標目には社史資料そのものを意味する標目がないため、目録の検索のみでNDLで所蔵している社史全てを把握することはできない。このほかに『マイクロ版「日本の会社史」』(丸善 [1994-1996])も所蔵しているが、その収録社史タイトルは同マイクロ資料付属の目録で確認する必要がある。なお、NDLが所蔵する社史の一部は近代デジタルライブラリー(20)でウェブ上に公開されている。例えば『明治生命保険株式会社六十年史』 (明治生命保険, 昭和17)、『南満洲鉄道株式会社十年史』(南満州鉄道, 大正8)などの全文(画像)は閲覧することができる。

 NDL以外では、研究資料としての利用が見込める大学図書館、企業情報の需要がある専門図書館での所蔵が多い(おもな所蔵機関は(表)を参照)。大規模な所蔵機関としては、龍谷大学深草図書館の長尾文庫(21)(社史・団体史・産業史に関する資料約17,000点を所蔵)、神奈川県立川崎図書館(22)(社史・経済団体史・労働組合史約16,000点を所蔵)が挙げられる。また、地方企業の社史は郷土資料として地元の図書館に収集される場合もあり(23)、大阪府立中之島図書館は約5,000冊の社史を所蔵し、積極的に収集している(24)

 ただし、機関ごとに社史の定義が異なるうえ、経済団体、官庁・公企業、労働組合などの年史や企業家の伝記までをひとまとまりのコレクションとして扱っている場合もあること、適用する分類表や分類の付与方法が各目録で異なるため社史を一律に抽出できないことから、各機関の所蔵規模を単純に比較することは難しい。

 

6. 所蔵機関の調べ方

 各機関の蔵書については、1990年代までは冊子体目録が刊行される場合が多かったが、書誌情報のOPAC入力や冊子体目録のウェブ上への掲載が進んだ結果、所蔵機関調査が容易になった。(表)には社史を所蔵する機関のOPACのURLの一覧も付したので参考にしてほしい。大学図書館などの所蔵はCiNii Books(25)、公共図書館の所蔵は国立国会図書館サーチ(26)で横断検索することができる。また、企業名が検索のキーワードになるため、企業名が変わっている場合や略称しかわからない場合には、まず『主要企業の系譜図』(雄松堂出版, 1986)、『企業名変遷要覧』(日外アソシエーツ, 2006)、「多国籍企業系譜図」(27)、「銀行変遷史データベース」(28)、当該企業のウェブサイトなどで確認する必要がある。

 日本経営史研究所刊行の冊子体の総合目録『会社史総合目録 増補・改訂版』(1996)は、専門図書館協議会会員を中心とした50機関の所蔵情報を調べることができる。明治から1992年までに刊行された社史8,828点、経済団体史1,367点を、業種分類別、会社名・団体名順に配列しており、ある企業が過去にどのような社史を刊行したかを概観するのにも適している。同目録以降については、専門図書館協議会が定期的に刊行している『会社史・団体史総合目録 追録』の34号(1994)以降で把握することができる。

 海外における日本の社史の所蔵機関を調べるには、「Japanese Company Histories (Shashi) Wiki(社史ウィキ)」(29)が便利である。これは2006年にオハイオ州立大学図書館をはじめとする北米の日本研究ライブラリアンのグループであるJapanese Company Histories (Shashi) Interest Group(社史グループ)がウェブ上に開設した、北米に所在する社史コレクションの総合目録で、2011年1月末現在、2,509社のページ、6,000冊以上の社史が登録されていると推定される(30)

 なお、所蔵機関の調べ方は、NDLのリサーチ・ナビ「社史・経済団体史」(31)や、ビジネス支援サービスを行っている福岡県立図書館のパスファインダーでも簡潔に紹介されている(32)

(表)社史を多数所蔵し一般に公開している機関のOPAC(種類別・機関名の五十音順)
※大学図書館を学外者が利用する際の要件は各機関に参照のこと
機関OPACのURL
(大学図書館)
愛知芸術文化センター愛知県図書館http://www.aichi-pref-library.jp/cgi-bin/Sopcsmin.sh?p_mode=1
大阪経済大学中小企業・経営研究所http://www.osaka-ue.ac.jp/research/chuken/library/
大阪市立大学都市研究プラザ経済研究所文庫https://opac.media.osaka-cu.ac.jp/webopac/topmnu.do
関西大学図書館http://www.lib.kansai-u.ac.jp/webopac/topmnu.do
関西学院大学産業研究所http://opac.kwansei.ac.jp/webopac/catsre.do
神戸大学経済経営研究所附属企業資料総合センターhttp://op.lib.kobe-u.ac.jp/opac/opac_search.cgi
・「所蔵社史目録」
http://www.rieb.kobe-u.ac.jp/center/mokuroku/gyousyu.html
滋賀大学経済経営研究所http://sglbopac.biwako.shiga-u.ac.jp/mylimedio/search/search-input.do
・「会社史・団体史検索
http://mokuroku.biwako.shiga-u.ac.jp/eml5.asp?mode=COH
静岡産業大学社史センターhttp://ssu-lib002.fujieda.ssu.ac.jp/mylimedio/search/search-input.do
東京経済大学図書館http://www.tku.ac.jp/library/cat919/
東京大学経済学図書館・経済学部資料室https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_search.cgi
・「Engel」
http://www.lib.e.u-tokyo.ac.jp/_old/engel/index.html
名古屋学院大学学術情報センターhttp://jupiter.ngu.ac.jp/mylimedio/search/search-input.do?mode=comp
・「産業分類別検索」
http://www.ngu.jp/library/data/kaishashi.html
一橋大学附属図書館https://opac.lib.hit-u.ac.jp/
富士大学附属図書館http://www.fuji-u.ac.jp/lib
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター・「イノベーション・マネジメント研究センター蔵書検索」
http://riimopac.i.hosei.ac.jp/webopac/topmnu.do
横浜国立大学経営学部研究資料室http://opac.lib.ynu.ac.jp/opc/
横浜市立大学学術情報センターhttp://opac.yokohama-cu.ac.jp/index.html
龍谷大学深草図書館http://rwave.lib.ryukoku.ac.jp/opac/opac_search.cgi?smode=1
・「長尾文庫Web目録」
http://rwave.lib.ryukoku.ac.jp/opac/nagao/opac_nagao.cgi
早稲田大学産業経営研究所商学研究図書室http://wine.wul.waseda.ac.jp/
(専門図書館)
機械振興協会BICライブラリhttp://www.library.eri.jspmi.or.jp/KskLibrary/keyword.html
全国銀行協会銀行図書館http://www.zenginkyo.or.jp/library/opac/index.html
東京商工会議所経済資料センターhttp://www.db.tokyo-cci.or.jp/zousho/
日本海事センター海事図書館http://www.jpmac.or.jp/library/collect-book.php
日本証券経済研究所大阪研究所証券図書館http://www.libblabo.jp/shoken/home32.stm
日本証券経済研究所東京研究所証券図書館http://www.libblabo.jp/shoken/home32.stm
松下社会科学振興財団(松下資料館)http://matsushita-library.jp/f1_library/opac/index.html
(公共図書館)
大阪府立中央図書館http://p-opac.library.pref.osaka.jp/osp_search.html
大阪府立中之島図書館http://p-opac.library.pref.osaka.jp/osp_search.html
・「中之島図書館 社史コーナー目録」
http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/shashi/shashi.html
神奈川県立川崎図書館http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/opac/index.jsp
・「社史・技報・講演論文集検索」
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/search/cole.htm
国立国会図書館「NDL-OPAC」http://www.ndl.go.jp/

出典:村橋勝子.“社史を多数所蔵する図書館”. 社史の研究. ダイヤモンド社, 2002, p. 344-353、専門図書館協議会. 専門情報機関総覧. 2012. 2012、各機関のウェブサイト(参照2013-06-27)を元に執筆者作成

 

7. 収集方法

 各所蔵機関では、どのように社史を収集しているのだろうか。

 NDLは納本制度を通じて社史を収集しているが、社史は基本的に通常の流通ルートに乗らない非売品のため刊行の有無自体の把握が難しく、出版者の理解がないと収集は進まない。NDLのウェブサイト内に納本依頼を掲載する(33)ほか、収集部門の職員が出張の際にその地域の経済団体に納本協力を呼びかける、専門図書館などに納入を依頼する(34)などの働きかけを行っている。

 経済団体系の専門図書館では会員企業から送られてくるケースが多いという(35)。その他の機関では、ウェブサイト上で寄贈を呼びかけるほかに、能動的に刊行状況を調べ、個々の企業へ文書や電話で寄贈依頼を行っているようである。出版情報の収集にあたっては、NDLの全国書誌、社史をコレクションしている機関やその地域の図書館の所蔵目録、古書店の目録やオークションサイト、記念事業を行っている企業のウェブサイト、社史の編纂協力企業のウェブサイト、各種新聞、出版案内を参照している。当該機関を利用した企業や、他の企業から紹介された企業が寄贈するケースもある(36)

 

8. 社史作成を支援する機関

 最後に、社史作成を支援する機関・団体を紹介する。日本の企業内の社史編纂担当者は、社内で専門的な指導を受ける機会がないとの声も聞かれる(37)。このような中、以下に挙げるような団体、機関が研修などの機会を提供している。

  • 日本経営史研究所(38):経営史・企業史の研究及びその成果の出版などを目的に1968年に発足。会社史・団体史の研究・編集の受託事業や、前述の「優秀会社史賞」の選定を行う。同研究所経営史料センターは約7,000冊の社史、約3,000冊の団体史を所蔵している。
  • 企業史料協議会(39):企業アーカイブズの専門的な団体として1981年に発足。企業における資料の収集・保存、管理の水準向上を目的とし、「ビジネスアーキビスト研修講座」などを開催している。
  • 経団連レファレンスライブラリー(40):社史を約3,400点、団体史を約300点所蔵し、社史作成企業による講演や専門家による社史作成のポイントの解説を行う「社史フォーラム」を2004年から2009年にかけて実施した。

 企業が作成、収集、蓄積した全ての資料を企業(ビジネス)アーカイブズと称し、海外では、ブランド戦略、法務、広報・宣伝、コンプライアンスなど、多方面において企業に付加価値を生み出す資産と認識され(41)、全社的な記録管理体制が志向されている。日本では、企業アーカイブズを社史編纂の基礎資料、経営史研究のための資料と捉えるのが一般的であるが、2000年代になると、有力企業のなかに経営史学研究者の協力を得て経営戦略と成果の内的必然性に迫ろうとする社史の増加や、社史、アーカイブズ活動に連動して企業博物館を構築する事例が見られ(42)、社史のあり方にも変化が生じているようである。

 この企業アーカイブズに関する海外情報については、渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター(43)がメールマガジン「ビジネス・アーカイブズ通信」(2008年創刊)を通じて紹介している。同センターは企業史料の概要・所在を案内する「企業史料ディレクトリ」の維持など、企業のアーカイブズ構築を支援する活動を行っている(E1314参照)。

 

謝辞

 末尾となったが、お忙しい中、筆者の見学に対応してくださった神奈川県立川崎図書館社史室、筆者からのメール、電話によるアンケートに回答くださった経団連レファレンスライブラリー、日本経営史研究所経営史料センターの御担当者にはこの場を借りて御礼申し上げます。

 

(1) 村橋勝子. “社史の定義・特色”. 社史の研究. ダイヤモンド社, 2002, p. 2-3.

(2) 橘川武郎. ビジネススクール流知的武装講座: 会社史こそイノベーションの教科書だ. プレジデント. 2011, 49(8), p. 101-103.

(3) 前掲.

(4) 神奈川県立川崎図書館及び経団連レファレンスセンターへのインタビューによる。

(5) 例として以下の記事を紹介する。
國貞文隆. 社史は「ビジネス知」の宝庫 時代の転換期の今こそ読め!. 週刊東洋経済. 2010, (6294), p. 53-55.
岡村雅之. 社史の声を聴く: 現役社員のための社史の読み方. イグザミナ. 2011, (291), p. 1-7, 20-26.
日本経団連社会本部. 企業広報研究: 社史の意義と機能を見直そう. 経済広報. 2004, 26(4), p. 12-14.

(6) 社史脈々、毎年200点発刊衰えず、景気と関係なく、先人の苦労語り継ぐ. 日本経済新聞. 2012-10-20. 朝刊. p. 40.
同記事では、社員教育に活用する和菓子の老舗中村屋や、水俣病問題をどのように記述するかが社会的にも注目されたチッソの100年史など、最近の特色ある社史も紹介されている。

(7) 帝国データバンク. “特別企画 : 2012年(平成24年)に「周年記念」を迎える企業の実態調査”. 帝国データバンク. 2011-12-1.
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p111201.pdf, (参照 2013-06-14) .

(8) 村橋. 前掲. p. 19-21.

(9) 神奈川県立川崎図書館. 社楽. 2012, (1).
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku1.pdf, (参照 2013-06-14).

(10)神奈川県立川崎図書館. 社楽. 2012, (10).
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku10.pdf , (参照 2013-06-14).

(11) 各社史の掲載URLは以下のとおり。
“トヨタ自動車75年史”. TOYOTA.
http://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/, (参照 2013-06-14).
“大いなる夢の実現”. HONDA.
http://www.honda.co.jp/50years-history/, (参照 2013-06-14).
“シャープ100年史(2012年6月版)”. SHARP.
http://www.sharp.co.jp/100th/history/, (参照 2013-06-14).
“進取の精神 沖電気120年のあゆみ”. 沖電気工業.
http://www.oki.com/jp/profile/history/120y.html, (参照 2013-06-14).

(12) レファレンス協同データベースでは、国立国会図書館が全国の図書館等と協同でレファレンス事例、調べ方マニュアル、特別コレクション及び参加館プロファイルに係るデータを蓄積し、インターネットを通じて提供している。
レファレンス協同データベース.
http://crd.ndl.go.jp/reference/, (参照 2013-09-04)

(13)“社楽(社史室情報誌)”. 神奈川県立川崎図書館.
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku.htm, (参照 2013-06-14).

(14)“社史紹介”. 渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター.
http://www.shibusawa.or.jp/center/shashi/shashi01.html, (参照 2013-06-14).

(15)“社史プロジェクトの概要”. 公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター.
http://www.shibusawa.or.jp/center/shashi/, (参照 2013-06-14).

(16)“優秀会社史賞”. 一般財団法人日本経営史研究所.
http://www.jbhi.or.jp/sakuhin.html#prize, (参照 2013-06-14).

(17) 神奈川県立川崎図書館. 社楽. 2012, (4).
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku4.pdf, (参照 2013-06-14).

(18) 神奈川県立川崎図書館. 社楽. 2012, (5).
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku5.pdf, (参照 2013-06-14).

(19) 執筆者がNDL-OPACより算出した数値を合計したものである。

(20) 近代デジタルライブラリー.
http://kindai.ndl.go.jp/, (参照 2013-06-14).

(21) “深草キャンパス”. 龍谷大学.
http://www.ryukoku.ac.jp/fukakusa.html, (参照 2013-06-14).

(22) 神奈川県立川崎図書館. 社楽. 2013, (13).
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku13.pdf, (参照 2013-06-14).

(23) “福井の企業情報を調べるには”. 福井県立図書館.
http://www.library.pref.fukui.jp/reference/pathfinder_fukui_company.html, (参照 2013-06-14).
“「会社史目録」-郷土資料編”. 広島県立図書館.
http://www.hplibra.pref.hiroshima.jp/hp/menu000000900/hpg000000840.htm, (参照 2013-06-14).
“郷土資料室”. 浜松市立図書館.
http://www.lib-city-hamamatsu.jp/guide/kyoudo.htm, (参照 2013-06-14).

(24) “中之島図書館 社史コーナー目録”. 大阪府立中之島図書館.
http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/shashi/shashi.html, (参照 2013-06-14).
“みんなで選ぶ社史グランプリ”. 大阪府立中之島図書館.
http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/event/syashi2012.html, (参照 2013-06-14).

(25) CiNii Books. http://ci.nii.ac.jp/books/, (参照 2013-06-14).

(26) 国立国会図書館サーチ.
http://iss.ndl.go.jp/, (参照 2013-06-14).

(27) “多国籍企業系譜図”. 神戸大学経済経営研究所附属企業資料総合センター.
http://www.rieb.kobe-u.ac.jp/center/cdal/takokuseki/keifuzu.html, (参照 2013-06-14).

(28) “銀行変遷史データベース”. 全国銀行協会.
http://www.zenginkyo.or.jp/library/hensen/, (参照 2013-06-14).

(29) The Japanese Company Histories (Shashi) Wiki.
http://library.osu.edu/wikis/shashidb/index.php/Main_Page, (accessed 2013-06-14).

(30) グッド長橋広行. 談話室(第22回)北米における社史研究の現状. 専門図書館. 2010, (246), p. 36-38.
http://nihonkenkyu.files.wordpress.com/2011/06/current_status_of_shashi_kenkyu_in_north_america.pdf, (参照 2013-06-14).

(31) “社史・経済団体史” 国立国会図書館.
http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-102077.php, (参照 2013-06-14).

(32) “企業研究のための社史活用案内”. 福岡県立図書館.
http://www.lib.pref.fukuoka.jp/hp/reference/015_shashi.htm, (参照 2013-06-14).

(33) “納本のお願い”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit_01request.html, (参照 2013-06-14).

(34) 国立国会図書館総務部. “納本制度60周年を迎えて”. びぶろす. 平成20年4月号.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/backnumber/2008/04/02.html, (参照 2013-06-14).

(35) 村橋. 前掲. p. 349-350.

(36) 神奈川県立川崎図書館. 社楽. 2012, (11).
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku11.pdf, (参照 2013-06-14).
“会社史・経済団体史”. 名古屋学院大学図書館.
http://www.ngu.jp/library/data/kaishashi.html, (参照2013-06-14).

(37) 松崎裕子. 資産としてのビジネスアーカイブズ: 付加価値を生み出す活用の必要性と課題. 情報の科学と技術. 2012, 62(10), p. 425.
大谷明史. 本邦企業アーカイブズの30年. アーカイブズ学研究. 2013, (6), p. 38-46.

(38) 日本経営史研究所.
http://www.jbhi.or.jp/, (参照 2013-06-14).

(39) 企業史料協議会.
http://www.baa.gr.jp/, (参照 2013-06-14).

(40) 経団連レファレンスライブラリー.
https://www.sentokyo-kanto.org/link/index.php?content_id=142, (参照 2013-06-14).

(41) 松崎. 前掲. p. 422-427.

(42) 大谷. 前掲. p. 42.

(43) 渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター.
http://www.shibusawa.or.jp/center/, (参照 2013-06-14).

Ref:
社史は情報玉手箱. 国立国会図書館月報. 2009, (583), p. 30-31.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1001141_po_geppo0910.pdf?contentNo=1, (参照 2013-06-14).

 

[受理:2013-08-19]

 


熊谷尚子. 動向レビュー:社史の世界. カレントアウェアネス. 2013, (317), CA1803, p. 16-21.
http://current.ndl.go.jp/ca1803

Kumagai Shoko.
<Trend Review>Welcome to the World of the Japanese Company Histories (Shashi).