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CA1668 - 研究文献レビュー:学習・教育基盤としての図書館 / 米澤誠

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カレントアウェアネス
No.296 2008年6月20日

 

CA1668

研究文献レビュー

 

学習・教育基盤としての図書館

 

はじめに

 本稿では、原則として2005年以降を対象とし、「学習・教育基盤としての図書館」に関するわが国の研究文献(実践報告などを含む)のレビューを行う。雑誌論文・記事のほかに、図書や報告書なども取り上げることとする(1)

 近年は「利用者教育」もしくは「情報リテラシー教育」という視点が、図書館のもつ学習・教育支援機能の中心とされていた感がある。しかし学習・教育基盤としての図書館を考える場合、「学習の場としての図書館」や「学習を支援するコレクション」の視点も欠かせないものであると考えている(2)(3)

 また、「利用者(もしくは学生)の学習支援」と「大学・学校の教育支援」という機能的区別を明確にしておく必要がある。従来の情報リテラシー教育論では、この点が明確でなかったきらいがある。本稿では、学習の場としての図書館、学習を支援するコレクション、学習を支援する情報リテラシー教育(図書館利用者教育)、教育を支援する情報リテラシー教育(授業支援)、そして理論的考察という5つの視点から、研究文献をレビューすることとしたい。

 

1. 学習の場としての図書館

(1) 快適で居住性の高い場

 図書館は「個人にとってのくつろぎ・癒し・コミュニケーションの場としての機能が重要であると、普遍的に言われている」(4)ように、来館利用者にとって快適で居住性の高い魅力的な場となることが学習基盤としての図書館の条件の一つとなる。

 図書を媒体として、情報やものが交差する新たな空間を構築する試みも生まれている。2004年にオープンしたシアトル中央図書館や、2007年にオープンした多摩美術大学図書館は、ユニークな空間構成とデザインで内外の注目を集めている(5)。とりわけ、学生や教員のコミュニケーションの場、キャンパス内の創造の場として機能するよう配慮された多摩美術大学図書館の設計は、日本における新たな大学図書館像の先駆的な試みとなっている(6)

 知の交差点としての図書館を意識した空間設計は、日本の大学・公共図書館の新築や増築・改装のキーコンセプトとなりつつある。居住性・快適性に配慮した大学図書館の事例として、広島修道大学、横浜国立大学の増築・改修、成蹊大学、武蔵工業大学の新築などが取り上げられている(7)(8)(9)。現在では、閲覧室や学習室だけではなく、ラウンジや飲食コーナーなどを備えた、快適に滞在できる大学図書館が求められている。快適で居住性の高い書店を実現してきたジュンク堂の試みなども、参考にすべきであろう(10)

 なお公共図書館の事例については、優れた図書館建築にあたえられる「日本図書館協会建築賞」の作品集が参考となる(11)。また公共図書館に関しては、高齢化社会を想定した空間的配慮などが、今後重要なキーコンセプトとなるであろう(12)

(2) 学びを支援する場

 現代の学習行動に適応したインフォメーション/ラーニング・コモンズ(CA1603参照)は、大学図書館のトレンドとなりつつある。このトレンドの実現に重要なのは、単にコンピュータ席を設置するだけではなく、学習を支援する人的資源も投入し、図書館を学習・教育の場として成立させることなのである(13)。2000年に「スタディ・エリア」という名称で、122のコンピュータ席を導入した国際基督教大学オスマー図書館は、このインフォメーション・コモンズを国内でいち早く具現化した事例である。オスマー図書館のレファレンスサービス・センターは、調査業務だけではなく、端末や機器の利用指導、プリンタやスキャナーなどの特殊機器への対応、コンピュータ・サポートなども行う機能をもっている。これらの機能を提供しているからこそ、オスマー図書館はインフォメーション/ラーニング・コモンズとして成功しているのである(14)

 学校図書館においても、学校の多様な学習を支援するためのラーニング・コモンズ化の動きが出てきている。玉川学園マルチメディアセンターは、幼稚園から高校生までの一貫教育の拠点となる施設である。大小二つのマルチメディアシアターや絵本コーナーとしても使えるオープンスペース、コンピュータを備えたメディアラボ(情報教室)など充実した設備を備えている。しかし、この施設の最も優れている点は、「多様な学びのスタイル」を支援するという明確なコンセプトのもとに設計した上で、その学びを支援する教職員スタッフを充実させていることであろう(15)

(3) 図書館施設・設備の基本

 一方これらのトレンドだけではなく、基本的な図書館施設・設備に関する理論も押さえておきたい。時代に応じた図書館建築理論を提示してきた木野は、集会施設としてとらえた図書館像、自動出納書庫の積極的評価、空間稼働率の視点、利用者を適切に誘導する一人用カウンターなどの卓見のほか、図書館施設・設備の細部にわたる基礎理論を示しており有益である(16)

 実際の施設・設備を考えるには、理論だけではなく建築図面も参照する必要がある。優れた図書館建築を集めた書籍は、図書館施設・設備を検討する上での最善の資料となる(17)(18)。また、図書館施設・設備関係企業が刊行する情報誌は、最新かつ具体的な事例や写真を見聞できるという点において、非常に有用である(19)

 また、今後は施設・設備を計画的に管理運用するための「ファシリティマネジメント」の観点も重要となろう。日常業務レベルの冷暖房・照明・清掃などの管理運用から、施設・設備の保守点検・改善・改修などの短期的な管理運用、耐震対策や省エネルギー対策などの中長期的な管理運用まで、様々なレベルでの計画的なファシリティマネジメントが要求されるのである(20)

 

2. 学習を支援するコレクション

(1) 学習用コレクションの形成

 『図書館雑誌』は2007年6月号で、1999年6月号以来8年ぶりに「選書」を特集テーマとしてとりあげた(21)。この特集の中では、丹生らによる同志社大学図書館の学習用コレクション形成の事例報告が出色である。学習用図書費と研究用図書費を分離し、いわゆる学生用図書費が研究用図書費に流用されない仕組みを作る点は目新しいものではないが、選書の実務プロセスを通じて図書館員の選書能力を育成するという方針と運用が優れている。学習用図書の選書は図書館員が行うべきであり、「学習支援を目的とする資料購入が第一義なので、カリキュラム理解とシラバスの読み込みは必須である」という姿勢は、学習支援を志す図書館には必須のものである(22)。また同じく同志社大学図書館の井上による出版物の「編まれ方」に着目した選書方法論も、実践的で有益である(23)

 国際基督教大学図書館も同様に、カリキュラムに沿った選書基準をつくりつつ、図書館員の選書力を高めている(24)。ほかに女子美術大学図書館の事例報告などもあり(25)、ながらく不在であった選書論に、学習支援を主眼とした議論や事例報告が続くことを期待したい。

 また、シラバスに掲載された資料を収集するだけではなく、その利用状況を把握し評価し、さらに利用頻度を高める活動も重要である。立命館大学はリザーブブック制度を導入し、授業でレポート課題が出されたときに、指定の参考図書を短時間利用に切り替えるなどの柔軟な運用により、学生の自主学習を支援する体制をとっている(26)

(2) 学習用コレクションの発信

 学習用コレクションの発信としては、新着図書案内やシラバス掲載図書案内などのサービスがあるが、それらは特段目新しいものではない。電子ブックやウェブ版辞書・事典も普及しつつあるが、今のところ特記すべき文献はない。

 ここでは、学習用コレクションの発信方法としての、図書館展示を取り上げることとしたい。公共図書館では、資料の可視性を上げ、注目度を高めるという明確な意図のもと、企画展示を行ってきている。これに対して大学図書館では、むしろ一般市民に対して貴重な資料を展示するという意識が強かったのではないだろうか。図書館展示は、観覧者の資料への興味・知識欲の向上・図書館資料の活用意欲などを高める生涯教育の一環と位置付けられるが(27)(28)(29)、これからさらに一歩踏み込めば、学生の学習意欲を高めるサービスとして展開することも可能となる。普段学生の目に付かない資料を紹介したり(30)(31)、特定の学問分野・研究成果を紹介したりする図書館展示は(32)、学生に対して学習用コレクションを発信するサービスとして位置付けることができる。

 

3. 学習を支援する情報リテラシー教育(図書館利用者教育)

 近年「情報リテラシー教育」という名称で展開している大学図書館の利用者教育は、なお多くの事例報告がなされている(33)

 『日本の図書館2006』によると、大学図書館における利用教育の状況は、図書館利用ガイダンスが1,338大学図書館中495館実施(約37%)で1館平均288.9名参加、データベース検索等講習会が383館実施(約29%)で1館平均111.0名参加となっている。一方、文献検索講習会が566館実施(約42%)でありながら、1館平均1.7名参加という状況になっている(34)。 利用教育の実施率は高まっていながら、大学図書館における従来型の文献検索中心の利用教育は、完全に利用者離れを起こしているといってよかろう。情報探索法中心から、レポート作成法を起点とする情報リテラシー教育への転換は、これからの大学図書館の課題なのである(35)(36)

 図書館での情報リテラシー教育の産物として、いくつかのすぐれた教材が生み出されている。慶應義塾大学では、情報の評価からレポートの作成までを網羅した包括的な情報リテラシーを対象とし、ウェブチュートリアル教材「KITIE」を開発した(37)。次いで、新入生向けの学び支援のウェブチュートリアル教材「PATH」も作成し、公開している(38)

 東北大学で継続的に刊行している情報探索テキスト『東北大学生のための情報探索のための基礎知識』は、レポート作成というコンテクストを前提とした内容構成となっている。2007年には基礎編、自然科学編、人文社会科学編の3編がでそろい、はじめて全学の学問分野を網羅したテキストとして完成した(39)。 テキスト編集の過程を、図書館職員の人材育成と明確に位置付けていることも特徴といえる(40)。 なお、これらのテキスト刊行活動からは、一般書店からの書籍刊行というさらなる副産物も産まれている(41)

 明治大学の情報リテラシー活動からは、大学図書館の全貌を知ることができる書籍『大学図書館がゼロからわかる本』が生まれた。「大学に入り学習に取組もうとしているフレッシュマンには最適の『図書館を知る』本である」と銘打たれているが、むしろ大学図書館のフレッシュマン向けに最適かも知れない(42)

 『情報の達人』は、図書館員と教員の監修による最新の利用者教育映像教材である。この教材も、インターネット時代の情報活用法からプレゼンテーション、レポート・論文執筆まで、情報リテラシー全般を網羅するものであり、大学図書館の講習会などにそのまま利用できる内容となっている(43)

 図書館講習会でのオリエンテーション技法(44)や広報戦略(45)、メディアの活用(46)も、情報リテラシー教育を実施する上で重要な要素である。これらには館種を問わず情報リテラシー教育に応用できる知見が示されており、参考としたい。

 公共図書館(都道府県立図書館および政令指定都市の中央館ではあるが)では、図書館ツアーが68公共図書館中40館実施(約59%)、OPAC検索講座が68館中26館実施(約38%)、データベース利用講座が68館中12館(約18%)、パソコン・インターネット利用講座が68館中26館(約38%)という状況である(47)。このクラスの公共図書館では、前述の大学図書館の利用教育の状況に比べても遜色のない利用者教育を実施しつつあるといえよう。

 県立図書館の情報リテラシー教育の事例としては、自治体職員向けと高等学校の教職員向けの講習会を行った鳥取県立図書館の実践報告がある(48)。同図書館はほかにも、看護学校に対して出前講座を実施するなど、新規利用者の開拓にも意欲的である。またレファレンスサービスに関しては、東京都立図書館のレファレンス職員研修に関する報告がある(49)

 現場の図書館員のレファレンス業務と研究会の成果として生まれた2つの書籍『図書館のプロが教える<調べるコツ> 』(50)、『図書館員が教えてくれた発想法』(51)は、あらゆる図書館のレファレンス研修の教材となりうる良書である。よりよい学習支援を行うためには、これらの書籍を活用した職員研修を行いたい。特に『図書館員が教えてくれた発想法』は、図書館職員の初年次の研修に有用な教材となるであろう。

 

4. 教育を支援する情報リテラシー教育(授業支援)

(1) 科目の一部での実施と独立科目としての実施

 近年、大学における初年次教育の導入が進み、「この「初年次教育」の最もよく知られたテキストとされる02年刊行の『知へのステップ』(くろしお出版)は、100大学以上で採用されてい」るという(52)。大学の初年次教育の中で図書館の利用教育がなされるというのが、一つの傾向であるといえる。

 東京学芸大学では、2006年度の試行を経て、2007年度から正式に共通科目「情報処理」のうちの1コマとして、情報リテラシー教育支援を開始した。実現するまでの事例報告は、これから教員との連携による情報リテラシー教育を考える図書館の参考となろう(53)。神戸薬科大学では、日本薬学会がまとめた薬学教育の「モデル・コアカリキュラム」に対応して、授業に対する薬学教育支援を行っている(54)

 明治大学は2000年度から「図書館活用法」を開講し、独立科目により図書館が教育に関与することをテーマに継続している。2007年度からは文部科学省の特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)に採択されており、今後一層の成果を期待することとしたい(55)(56)。東北大学も2004年度から独立科目を開講しており、レポート作成法と情報探索法の2つを柱とした授業を、教員と連携して実施している(57)

(2) 大学での評価の動向

 一方、これらの情報リテラシー教育の実施経験をふまえて、その評価の試みが出てきていることが近年の特徴であろう。

 三重大学は、意欲的に情報リテラシー教育を行っている大学の一つであり、多くの成果報告を行っている。学生および教員へのアンケート調査による評価をまとめるとともに、情報リテラシー教育は大学図書館のコア・コンピタンスであるという見識を示している。またオープンソースソフトウェア“Moodle”を活用した講習会運用の試みも、eラーニングによる展開の可能性を示しており興味深い(58)(59)

 嘉悦大学でのアウトカム測定の試みは、情報リテラシー教育の簡便な評価方法であり、さらに多くの事例報告を望みたい手法である。多くの事例が蓄積することにより、具体的な測定手法が確立するであろう(60)。 文教大学でのアウトカム評価は、さらに高度な手法をとっており、このような図書館利用と学習成果の関連についての研究が進展することを望みたい(61)

(3) 大学での情報リテラシー教育の再構築

 慶應義塾大学は、早くから情報リテラシー教育を実施してきたところである。その経験から、1コマ90分の講義では「学生の実際の大学での学びや課題といった文脈から切り離されているという点」に問題があると認識している(62)。それにとどまらず「学生の実際のレポート執筆という実践に結びついた情報リテラシー教育」を目指して、学び方を教える科目「アカデミック・スキルズ」にも関わることになるが、これは教員主導の教育であったという。なお、この科目の成果である『アカデミック・スキルズ』は、文科系大学の初年次教材として、きわめて優れた内容となっている(63)

 また同大学湘南藤沢キャンパスの科目「資料検索法」は、図書館員だけで開講している授業である。この科目の履修生に対する小テストや自己評価の結果から、授業評価の手法を確立することが課題として示されている。常に、情報リテラシー教育の最先端を進もうとする意欲がうかがえる。これらの活動の中心となった市古が「本当に考える力や学ぶ力をつけていく場所は、おそらく『情報探索法』ではなく、リアルな課題に取り組むことよる」と指摘するように(64)、情報リテラシー教育単体ではなく、実際の具体的な授業の進展に合わせた教育が最も効果的となる。

 大阪女学院は、1980年代から情報リテラシー教育が行なわれていたが、2004年から本格的に開始された導入必修科目「情報の理解と活用」では、「設定された課題に対して図書館を具体的に使いこなさなければ結果として前に進めない」課題設定により、調査研究能力と自立的学習能力を育てる教育を行っている。さらにeラーニングによる双方向コミュニケーション機能を活用し、学習結果への評価を学生にフィードバックすることで、学生の学習を形成的に指導する授業を実現している。図書館は、このeラーニングにおける学習支援機能として位置するのである(65)。 八洲学園大学のeラーニング図書館学科目での事例報告でも、図書館を学習の中心に据えた学習指導とその成果評価の実際を知ることができる(66)

 最後に、情報リテラシー教育とは違う切り口になるが、千葉大学のリエゾン・ライブラリアンとしての活動を通じた教育支援の試みも、多くの可能性を秘めたものとして注目したい(67)。なお、日本の事例ではないが、米国アーラム・カレッジの学習・教育支援の事例報告は、包括的で示唆に富む内容となっている(68)

(4) 学校図書館の動向

 授業の中での情報リテラシー教育の最良の実践事例は、山形県鶴岡市立朝暘第一小学校の事例であろう。第33回学校図書館賞大賞を受賞した図書館活用教育は、「学校図書館を学校経営の中核に据える」という理念のもとに、教員と学校司書が力をあわせて築き上げたものである。この「ただ単に本が好き、読書ができる子であればよい、本や資料で調べることができればよいというものではなく、子どもたちに段階的に着実な『学び』を獲得させる『図書館を有効に活用とした授業』の試み」(69)は、あらゆる図書館の手本とすべき取り組みである。

 この取り組みの中から生まれた図書館を活用するための「図書館クイズ」は、利用者の学習意欲を高めつつ学習効果を上げる教材として、大学図書館や公共図書館の情報リテラシー教育にも応用すべきものである(70)。また、これら一連の活動をささえてきた五十嵐の著作は、図書館活用教育を第一義に考え実践してきた、一人の図書館員の志が伝わる名著である(71)

 奈良教育大学附属中学校の事例も、同様のモティベーションをもった図書館員による実践事例である。数学の授業で学校図書館が活用されることは稀という状況に対して、数学を楽しむというコンセプトのもと、図書館資料・図書館施設・図書館職員という3要素を意識した学習設計は、大学図書館を活用する授業設計にも参考になる(72)。朝暘第一小学校のような全校をあげての取り組みではないが、東京学芸大学附属世田谷小学校で一人の教員が司書と実践した事例報告もある(73)

 大学図書館が学校図書館に対して情報リテラシー教育を実施した、三重大学の事例報告も興味深いものである(74)。館種を超えたこのような図書館連携活動は、図書館界の新たな発展を創るものとして注目したい。

 

5. 情報リテラシー教育の理論的考察

 近年の大学図書館における情報リテラシー教育の基本文献となるのは、野末の論考であろう(75)。情報リテラシー教育の意義付けと近年の動向と課題について、まずこの文献で全体像を把握しておきたい。このほか大城は、欧米の情報リテラシー論をまとめ、大学図書館と学校図書館を中心に情報リテラシー教育と図書館サービスの関係を検討している(76)。また上田は従来の利用者教育を教育支援、情報リテラシー教育を学習支援と位置付けており、本稿の整理とは枠組みが異なるが、教育支援と学習支援を明確に分けて論じる視点には同意したい(77)

 慈道の論考は、大学図書館が進めてきた情報リテラシー活動を概観し、情報リテラシー教育の理論的構築と概念化を図ろうとした意欲作である(78)。今後、このような理論構築とモデル開発研究も盛んになることを期待したい。特定分野の情報リテラシー教育に関するものとしては、法学分野の岡田(79)、人文・社会科学分野の伊藤(80)、看護学分野の諏訪(81)の論考がある。

 

おわりに

 以上、図書館の学習・教育支援機能に関する文献を幅広くみてきた。図書館は、図書館の学習・教育基盤としての役割を明確に意識しつつ、そのことを社会や教育機関に対して主張しながら、サービス活動を展開する必要がある(82)。この文献レビューが、そのための材料となれば幸いである。

山形大学附属図書館:米澤 誠(よねざわ まこと)

 

(1) 本稿に先行する「利用者教育」については、次の文献が網羅的なレビューとなっている。
野末俊比古. 利用者教育:「情報リテラシー」との関わりを中心に. カレントアウェアネス. 2003, (278), 15-18p.

(2) “学生の学習と図書館”. 今後の「大学像」の在り方に関する調査研究(図書館)報告書:教育と情報の基盤としての図書館. 筑波大学, 2007, 20-38p.

(3) 米澤誠. 学習意欲を高める図書館サービス. 大学時報. 2007, (315), 38-41p.

(4) 日本建築学会編. 建築設計資料集成:総合編. 丸善, 2001, p.385.

(5) 五十嵐太郎. 場所としての図書館. 情報の科学と技術. 2007, 57(9), 441-444p.

(6) 鈴木明ほか編. つくる図書館をつくる. 鹿島出版社, 2007, 189p.

(7) 赤城隆. 図書館の増築と改修. 情報の科学と技術. 2005, 55(11), 500-505p.

(8) “サービス展開の方向性”. 今後の「大学像」の在り方に関する調査研究(図書館)報告書:教育と情報の基盤としての図書館. 筑波大学, 2007, 57-76p.

(9) 近藤茂. 成蹊大学「情報図書館」オープン. 図書館雑誌. 2007, 101(12), 802-803p.

(10) 福嶋聡. 本と人の出会いの場. 情報の科学と技術. 2007, 57(4), 192-197p.

(11) 日本図書館協会施設委員会図書館建築図集編集委員会編. 日本図書館協会建築作品集1985-2006:図書館空間の創造. 日本図書館協会, 2007, 210p.

(12) 木野修造. 利用者高齢化への空間的配慮. 現代の図書館. 2006, 44(3), 140-149p.

(13) 米澤誠. インフォメーション・コモンズからラーニング・コモンズへ:大学図書館におけるネット世代の学習支援. カレントアウェアネス. 2006, (289), 9-12p.

(14) 畠山珠美. “新しい情報空間の構築”. 図書館の再出発:ICU図書館の15年. 畠山珠美ほか.大学教育出版, 2007, 25-42p.
松山龍彦. “利用者サービス”. 図書館の再出発:ICU図書館の15年. 畠山珠美ほか. 大学教育出版, 2007, 56-83p.

(15) 河西由美子. 玉川学園マルチメディアリソースセンターの挑戦. 季刊文教施設. 2006, (26), 26-29p.

(16) 木野修造. “図書館のユニバーサル・デザイン”. 建築設計資料;97:図書館;3. 建築資料研究社, 2004, 4-28p.

(17) 日本建築学会編. 建築設計資料集成:教育・図書. 丸善, 2003, 186p.

(18) 建築設計資料;97:図書館;3. 建築資料研究社, 2004, 208p.

(19) 例えば、キハラの「LISN」、日本ファイリングの「新しい図書館」など。

(20) FM推進連絡協議会. 総解説ファシリティマネジメント. 日本経済新聞社, 2003, 513p.

(21) 特集, 選書の現場から. 図書館雑誌. 2007, 101(6), 361-375p.

(22) 丹羽展子ほか. 学習支援のための選書を目指して. 図書館雑誌. 2007, 101(6), 362-364p.

(23) 井上真琴. 出版物の「編まれ方」を読む. 情報の科学と技術. 2006, 56(8), 371-373p.

(24) 浅野智美. “ICU図書館の選書基準”. 図書館の再出発:ICU図書館の15年. 大学教育出版, 2007, 108-117p.

(25) 新藤豊久. 女子美術大学における収書方針と選書方針. 大学図書館研究. 2007, (80), 20-32p.

(26) 石井奈穂子. 学生の学びをサポートする大学図書館の取り組み. 大学時報. 2007, (315), 56-61p.

(27) 米澤誠. 広報としての図書館展示の意義と効果的な実践方法. 情報の科学と技術. 2005, 55(7), 305-309p.

(28) 篠塚富士男. 大学図書館における展示会活動. 大学図書館研究. 2007, (80), 43-53p.

(29) 木戸浦豊和ほか. 展示会からはじまる大学図書館の新たな可能性. 大学図書館研究. 2007, (80), 33-42p.

(30) 石山夕記. 蔵書を活かす. 図書館雑誌. 2006, 100(3), 147-149p.

(31) 豊田裕昭ほか. 一橋大学附属図書館の蔵書管理とその利用. 大学図書館研究. 2007, (80), 1-10p.

(32) 米澤誠. 田中耕一氏展示という未知への挑戦. 大学の図書館. 2005, 24(5), 78-81p.

(33) 特集, 情報リテラシー・サービス. 医学図書館. 2005, 52(1), 14-58p.

(34) JLA図書館調査事業委員会. 『日本の図書館2006』大学図書館におけるその他のデータ. 図書館雑誌. 2008, 102(2), 114-115p.

(35) 米澤誠. ウェブ主流時代における情報リテラシー教育再構築の試み. 薬学図書館. 2006, 51(3), 193-197p.

(36) 米澤誠. レポート作成を起点とした情報リテラシー教育の試み. 医学図書館. 2007, 54(2), 160-165p.

(37) 市古みどり. 情報リテラシーのためのウェブチュートリアル開発:KITIEの事例. 医学図書館. 2007, 54(1), 37-41p.
慶應義塾大学日吉メディアセンター. “KITIE”. http://project.lib.keio.ac.jp/kitie/, (参照2008-04-18).

(38) 慶應義塾大学メディアセンター. “PATH”. http://project.lib.keio.ac.jp/PATH/, (参照2008-04-18).

(39) 東北大学附属図書館. “東北大学生のための情報探索の基礎知識”. http://www.library.tohoku.ac.jp/mylibrary/tutorial/, (参照2008-04-18).

(40) 半澤智絵ほか. 『東北大学生のための情報探索の基礎知識:人文社会科学編』の編集について. 情報管理. 2007, 50(8), 512-521p.

(41) 学術情報探索マニュアル編集委員会編. 理・工・医・薬系学生のための学術情報探索マニュアル. 丸善, 2006, 187p.

(42) 大野友和編. 大学図書館がゼロからわかる本. 日本図書館協会, 2005, 264p.

(43) 仁上幸治ほか監修. 情報の達人DVD. 紀伊國屋書店, 2007.

(44) 仁上幸治. 大学図書館員のためのオリエンテーション技法. 医学図書館. 2005, 52(1), 15-24p.

(45) 仁上幸治. 学術情報リテラシー教育における広報イメージ戦略. 情報の科学と技術. 2005, 55(7), 310-317p.

(46) 伊藤民雄ほか. “情報探索と図書館サービス”. 最新の技術と図書館サービス. 青弓社, 2007, 124-200p., (図書館の最前線, 2).

(47) 高田淳子. 公共図書館における情報リテラシー教育の現状. 現代の図書館. 2007, 45(4), 205-212p.

(48) 小林隆志ほか. 図書館の活用法を伝授します!!. 現代の図書館. 2007, 45(4), 198-203p.

(49) 奥村和廣ほか. 東京都立中央図書館の情報サービスとサブジェクトライブラリアンへの課題. 情報の科学と技術. 2005, 55(9), 381-386p.

(50) 浅野高史ほか. 図書館のプロが教える<調べるコツ>. 柏書房, 2006, 286p.

(51) 高田高史. 図書館が教えてくれた発想法. 柏書房, 2007, 253p.

(52) 太田潔. 「初年次教育」にかかわる大学図書館の役割についての一考察. 図書館雑誌. 2008, 102(2), 94-96p.

(53) 大谷朱美. 教員との連携による情報リテラシー教育. 現代の図書館. 2007, 45(4), 213-219p.

(54) 木口敏子. 薬学系図書館の学習支援における今後の課題. 薬学図書館. 2005, 50(4), 280-284p.

(55) 大野友和. 図書館リテラシーと教育の一翼を担う図書館員. 大学図書館研究. 2005, (73), 25-33p.

(56) 広沢絵里子. 図書館の教育力. 大学時報. 2007, (315), 42-45p.

(57) 菅原透ほか. 情報探索マニュアル作成を軸とした情報リテラシー教育の展開とオープンソースの試み. 医学図書館. 2005, 52(1), 25-30p.

(58) 杉田いずみほか. 三重大学附属図書館における情報リテラシー教育支援. 薬学図書館. 2005, 50(1), 27-35p.

(59) 杉田いずみほか. E-learningシステム“三重大学Moodle”を活用した図書館情報リテラシー講習会. 薬学図書館. 2007, 52(3), 246-253p.

(60) 山田かおり. 図書館利用教育の評価:嘉悦大学1年生を対象としたアウトカム測定の試み. 大学図書館研究. 2005, (73), 15-24p.

(61) 戸田あきらほか. 学生の図書館利用と学習効果:大学図書館におけるアウトカム評価に関する研究. 日本図書館情報学会誌. 2007, 53(1), 17-34p.

(62) 上岡真紀子ほか. 図書館員による情報リテラシー教育. 現代の図書館. 2007, 45(4), 226-233p.

(63) 佐藤望ほか. アカデミック・スキルズ. 慶應義塾大学出版会. 2006, 160p.

(64) 上岡真紀子ほか. 図書館員による情報リテラシー教育. 現代の図書館. 2007, 45(4), 226-233p.

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(69) 山形県鶴岡市立朝暘第一小学校編. こうすれば子どもが育つ学校が変わる. 国土社, 2003, 200p.

(70) 山形県鶴岡市立朝暘第一小学校編. 図書館へ行こう!図書館クイズ. 国土社, 2007, 82p.

(71) 五十嵐絹子. 夢を追い続けた学校司書の四十年:図書館活用教育の可能性にいどむ. 国土社, 2006, 239p.

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(77) 上田修一. 大学図書館の新展開:学習支援を中心に. 大学時報. 2007, (315), 32-37p.

(78) 慈道佐代子. 情報リテラシー教育の理論的枠組みと大学図書館における実践についての考察. 大学図書館研究. 2005, (75), 44-53p.

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(80) 伊藤幸江. 人文・社会科学分野における主題別情報探索法指導の検討. 図書館界. 2005, 57(4), 222-239p.

(81) 諏訪敏幸. 情報リテラシー教育はレファレンス・ワークをどのようにその一構成部分とするか. 大学図書館研究. 2006, (78), 65-75p.

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米澤 誠. 研究文献レビュー:学習・教育基盤としての図書館. カレントアウェアネス. 2008, (296), p.23-28.
http://current.ndl.go.jp/ca1668