PDFファイルはこちら
カレントアウェアネス
No.286 2005.12.20
CA1571
新しい国際目録原則に向けて
2005年12月12日から同14日にかけて,国際目録規則に関するIFLA専門家会議(IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing Code:IME-ICC)第3回会議がカイロで開催された。1961年に成立した国際目録原則(通称,パリ原則)の改訂を目指して,新原則覚書を取り決めた2003年の第1回フランクフルト会議に始まり,全世界で5回を予定するIME-ICCは,これをもってその半ばに達することになる。IME-ICCは,通常IFLA大会が開催される夏に行われるが,今回の第3回会議のみ,開催地の炎天を考慮して年末に行われた。
2005年8月,第71回IFLAオスロ大会(E383参照)では,現在IFLA書誌部会の議長を務め,IME-ICCの議長でもあるバーバラ・ティレット(Barbara B. Tillett)氏から,すべての資料のアラビア語への翻訳を含め,カイロ会議に向けての準備は怠りなく進んでいると報告された。
ティレット氏によれば,改訂作業は,あるIFLA目録分科会常任委員の「パリ原則から,図書館,書誌情報を取り巻く環境は大きく変わったし,このあたりで国際目録原則を見直すのも悪くないのではないかしら」というなにげない一言に始まった。「誰もが思いついてよさそうな当たり前のことなのに,それまでだれも言い出さなかった」ことである。
さっそく,IFLA目録分科会が主体となり,パリ原則に代わる新しい「目録作成者とそのサービス対象者が世界中でOPAC(オンライン閲覧目録)を利用するための,共通の国際的な目録原則」の作成を目的としたIME-ICCの開催が計画された。世界各地域・言語圏の目録専門家の意見や,地域事情に基づいた提案を反映するため,表1に示す予定で世界を巡回する。
IME-ICCが追求するのは,利用者が膨大なレコード数を持つOPACを手軽に使いこなせるよう,「利用者にやさしい目録」を目指して,カード目録時代のパリ原則をインターネット時代の新原則へと発展させることである。
2003年のフランクフルト会議における欧米諸国の専門家による検討結果は,翌年1月に,「国際目録原則覚書」最終草案として承認,公表された(E165参照)。開催地を冠してフランクフルト原則と称されるこの新原則は,活字による伝統的な媒体の著作のみならず,すべての種類の資料を取り扱うことを前提としている。また,パリ原則が主に標目を扱っていたのに対し,新原則は,図書館目録における書誌レコードと典拠レコードのあらゆる側面を対象とする,スケールの大きいものを目指している。そればかりではなく,新原則がよって立つ基盤として,IFLAの打ち立てた新しい概念モデル,「書誌レコードの機能要件(FRBR;CA1480参照)」や「典拠レコードの機能要件と典拠番号(Functional Requirements and Numbering of Authority Records: FRANAR)」を導入し,伝統的な目録法をふまえながらも,新しい概念で時代をリードする積極的な姿勢を打ち出した。
表1 IME-ICC(全5回)の開催地,対象地域
開催年 | 開催地 | 対象地域 | |
第1回 | 2003 | フランクフルト(ドイツ) | 欧州 |
第2回 | 2004 | ブエノスアイレス(アルゼンチン) | ラテンアメリカ,カリブ海諸国 |
第3回 | 2005 | カイロ(エジプト) | アラビア語地域 |
第4回 | 2006 | ソウル(韓国) | アジア |
第5回 | 2007 | ダーバン(南アフリカ共和国) | アフリカ |
*各会議ごとにウェブサイトが維持管理され,現在,第1回から第3回までのサイトの閲覧が可能である。会議の第2回,第3回のサイトは,それぞれ,スペイン語,アラビア語と英語のバイリンガルサイトになっている。 |
最終草案の日本語訳は国立国会図書館のウェブサイトで,簡潔な解説を付して公開している(E301参照)。また,2005年10月現在,21言語への翻訳が,第1回フランクフルト会議のウェブサイト中に掲載されている。第4回ソウル会議を2006年に控え,アジア地域からは,中国語,ハングルの翻訳も提出されている。
第2回ブエノスアイレス会議からは,前回の最終草案をたたき台として検討がすすめられ,会議終了後,検討結果をもりこんだ改訂最終草案が発表される。第2回ブエノスアイレス会議の改訂作業の経過は,第2回ブエノスアイレス会議のウェブサイトで,改訂最終草案は第1回フランクフルト会議のウェブサイト中の最終草案と並んで公開されている。
IME-ICCは,当初計画した新国際目録原則の策定だけではなく,各地域の目録専門家が顔を合わせ,交流を深めるという成果ももたらした。2004年の対象地域であるラテンアメリカおよびカリブ海諸国からの代表者2名が,IFLAオスロ大会の目録分科会常任委員会にオブザーバーとして出席し,前年のブエノスアイレス会議について「我々の意見をきいてもらえて非常に感動した。我々の間ではその後も,目録作成はどうあるべきか活発な議論が続いている。これを機に密な協力を続けたい」と謝辞を述べた。2007年の第5回ダーバン会議後には,世界の目録専門家が,地域,言語の違いを乗り越えて,コミュニケーションを取り合う状況になっていることであろう。
書誌部逐次刊行物課:稲濱 みのる(いなはま みのる)
Ref.
Die Deutsche Bibliothek. “First IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing”. (online), available from < http://www.ddb.de/standardisierung/afs/imeicc_index.htm >, (accessed 2005-10-19).
IFLA Meeting of Experts for an International Cataloguing Code. “2nd IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing Code: 17-18 August 2004, Buenos Aires, Argentina”. (online), available from < http://www.loc.gov/loc/ifla/imeicc/imeicc2/index.html >, (accessed 2005-10-06).
IFLA Meeting of Experts for an International Cataloguing Code. “3rd IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing Code: 12-14 December 2005, Cairo, Egypt”. (online), available from < http://www.loc.gov/loc/ifla/imeicc/ >, (accessed 2005-10-06).
Cataloguing Section of International Federation of Library Associations and Institutions. “Cataloguing Section”. IFLANET. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s13/index.htm >, (accessed 2005-10-06).
国立国会図書館. “「国際目録原則覚書」最終草案について”. (オンライン), 入手先< http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/050329_01.html >, (参照2005-10-06).
稲濱みのる. 新しい国際目録原則に向けて. カレントアウェアネス. (286), 2005, 4-5.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/no286/CA1571.html