E869 – 図書館利用者が選ぶ「私の好きなライブラリアン」(米国)

カレントアウェアネス-E

No.141 2008.12.24

 

 E869

図書館利用者が選ぶ「私の好きなライブラリアン」(米国)

 

 米国では2008年,図書館利用者のライブラリアンへの認識を高めることを目的に,地域コミュニティ,学校,キャンパスに対し多大な貢献をしたライブラリアンに贈る賞“I Love My Librarian Award”が新たに創設された。この賞は,New York Times社とカーネギー社の資金援助の下,米国図書館協会(ALA)が運営を担当している。

 賞の対象者は,ALAの認定プログラムで図書館情報学修士号(MLIS)を取得したライブラリアン,あるいは教員養成プログラム認定全国協議会(NCATE)の認定プログラムで学校図書館メディアの修士号(CA1487参照)を取得した学校図書館メディアスペシャリストとされている。条件を満たすライブラリアンの中から,全米の図書館利用者が推薦文とともに候補者を推薦し,さらに有識者や実務者から成る選考委員会が候補者の中から受賞者を選ぶという流れで,選考は行われている。2008年は,3,200名の図書館利用者からライブラリアンの推薦があり,審査の結果,10名(カレッジ・コミュニティカレッジ・大学図書館部門2名,公共図書館部門5名,学校図書館部門3名)がI Love My Librarian Awardを受賞した。

 カレッジ・コミュニティカレッジ・大学図書館部門の受賞者の1人,フロリダ大学図書館のマランチュク(Iona R. Malanchuk)副館長は,テクノロジーと利用者サービスの両面において豊かな経験を持ち,それを生かして,適切な資料に簡単にアクセスできる大学図書館を実現したほか,学生や図書館スタッフに対して熱心な教育活動を行ってきた。公共図書館部門で受賞したフロリダ州パスコ郡図書館システムのアレン(Linda Allen)館長は,いち早く図書館システムとしてインターネットを導入し,パスコ郡の人々が簡単に世界と繋がることができる機会を作ってきた。また学校図書館部門の受賞者で,ニューヨーク市の中等学校(secondary school)で学校図書館メディアスペシャリストを務めるマッキントッシュ(Paul McIntosh)氏は,生徒へのきめ細かな学習支援に加え,様々なイベントを企画して図書館を学校内外の人が集うコミュニティへと変容させた。

 受賞者たちが賛辞を受けた取組みは,それほど目新しいものではないかもしれない。しかし彼らが自分自身の役割に真摯に取り組んだ結果が,利用者の熱い支持を生んだ。

 12月9日にはニューヨークで,受賞の記念式典が催された。式典では,New York Times社とカーネギー社の代表取締役が,教育や学習におけるライブラリアンの重要性,ライブラリアンが,教師,ジャーナリストとともに,文明の存続にとって必須の職業であること,またライブラリアンのこのような価値が正しく評価されているとは言えないことなどを訴えた。彼らのスピーチに続き,受賞者たちはそれぞれスピーチを行うとともに,記念の盾と賞金5,000ドル(約45万)を授与された。なお今後2013年まで,この賞は継続されることが決まっている。

Ref:
http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=105317&p=irol-pressArticle&ID=1187773&highlight=
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2008/august2008/CampaignNYtimes.cfm
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2008/december2008/ilovemylibrarian.cfm
http://www.al.ala.org/insidescoop/2008/12/09/
http://www.libraryjournal.com/article/CA6621127.html
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6621723.html
http://www.ilovelibraries.org/lovemylibrarian/winners.cfm
http://www.al.ala.org/insidescoop/2008/12/22/i-love-my-librarian-award-ceremony-video/
CA1487