E864 – WorldCatレコード利用・再配布の新ポリシーとブログ界の反応

カレントアウェアネス-E

No.140 2008.12.10

 

E864

WorldCatレコード利用・再配布の新ポリシーとブログ界の反応

 

 OCLCはWorldCatレコードの利用,再配布に関する新たなポリシー案“Policy for Use and Transfer of WorldCat Records”を2008年11月に公表するとともに,2009年2月中旬から導入することを発表した。

 OCLCはこれまで,1987年11月に改訂した“Guidelines for the Use and Transfer of OCLC-Derived Records”に基づき,WorldCatレコードの利用と配布を行っていた。だがこのガイドラインは1980年代の情報通信環境を前提としていることから,ウェブの出現と大規模なデータ共有といった今日の情報通信環境に則した解釈と適用が,徐々に困難な状況となっていた。

 新たなポリシー案では,ポリシー上で規定されている条件(condition)に従えば,WorldCatレコードの利用,複製や,別の著作物へのWorldCatのレコードの取り込み,2次著作物の作成を,非営利・非独占的に無料で行うことができると定められている。さらにWorldCat上の所蔵情報を,OCLC非参加館を含む他の図書館や博物館,文書館と交換することも自由とされている。これらWordlCatレコードの営利的な提供はOCLCとの別途の取り決めが必要とされている。また利用されている各レコードの出所がWorldCatであることを表示しなければならないことや,適切な利用(reasonable use)をするといった条件も,ポリシー案では明記されている。

 この新たなポリシー案の公開以降,図書館に関連するブログ上では,さまざまな反応が起こっている。たとえば,各図書館による協同分担で構築されたWorldCatのレコードが,このポリシー案によりOCLCの独占物に陥るのではないかといった指摘や,このポリシー案がオープンソース的活動の支援となるのかといった疑問,またGoogle Book Searchとの関係に言及するものも見受けられる。さらにポリシーの改訂に反対する署名を募るブログも現れている。このようなネット上での図書館系ブログの影響かどうかは不明であるが,OCLCはこのポリシー案について,当初公表した案をこれまでに数度にわたって改訂している。今回のWorldCatの利用・再配布ポリシー改訂に関する,図書館系ブログおよびOCLC両者の動向は,図書館関係の技術者によるオンライン・コミュニティである“code4lib”が特設Wikiを開設して伝えている。

 2009年2月の導入までに,どのような形でポリシーが確定するのか,今後の動向を注視していきたい。

Ref:
http://www.oclc.org/support/documentation/worldcat/records/guidelines/default.htm
http://www.oclc.org/worldcat/catalog/policy/
http://www.oclc.org/worldcat/catalog/policy/questions/default.htm
http://wiki.code4lib.org/index.php/OCLC_Policy_Change
http://watchdog.net/c/stop-oclc
http://www.aaronsw.com/weblog/oclcscam