アイルランド・ダブリン市議会、トリニティ・カレッジ・ダブリン旧図書館の保存・再開発計画を承認

2020年10月8日付で、アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリン図書館は、ダブリン市議会から旧図書館(Old Library)の保存・再開発計画の承認が下りたことを発表しました。

トリニティ・カレッジ・ダブリン旧図書館は、巨大な閲覧室「ロングルーム」や『ケルズの書(The Book of Kells)』をはじめとする貴重な写本のコレクション等で著名なアイルランドを代表する図書館・文化施設です。同館は400年以上にわたって、所蔵する貴重コレクションを管理してきましたが、環境汚染や埃の堆積が建物の構造に影響を与えていること、施設の環境制御システムや防火対策が不十分であることなど、コレクションの保存と保存のための建物環境に関する課題を抱えています。また、近年、世界の文化施設で発生している火災の報道も同館の懸念を深刻なものにしています。

同館の保存・再開発のためのプロジェクト“Old Library Redevelopment Project”は、最新鋭のデザインと技術を駆使して建物環境を保護し、所蔵する貴重コレクションを将来の世代に残すことを目的としています。アイルランド国立美術館(National Gallery of Ireland)の大規模改修を成功させた建築家のペン(Heneghan Peng)氏の指揮の下で、18世紀に完成した同館の建築を保護しながら所蔵コレクションの保存環境を向上させるための再開発が取り組まれることになります。

同プロジェクトでは、建物の再開発の他にも、同館コレクションの研究センターの設置による研究者の育成や、展示機能の強化による同館コレクションへのアクセスの増加、展示室を再現した没入体験型ギャラリーの製作も同時に実施されています。2020年9月14日には、プロジェクトによる初めての試みとして、『ケルズの書』の新しい展示室が公開されています。

Dublin City Council gives greenlight to redevelopment plans for the Old Library(The Library of Trinity College Dublin: News & Alerts,2020/10/8)
https://www.tcd.ie/library/news/dublin-city-council-gives-greenlight-to-redevelopment-plans-for-the-old-library/

Old Library Redevelopment Project(Trinity College Dublin)
https://www.tcd.ie/old-library-campaign/

関連:
Trinity unveils New Book of Kells Treasury and Display Case(The Library of Trinity College Dublin: News & Alerts,2020/9/14)
https://www.tcd.ie/library/news/trinity-unveils-new-book-of-kells-treasury-and-display-case/

参考:
E1439 – トリニティ・カレッジ・ダブリン図書館の300年<文献紹介>
カレントアウェアネス-E No.238 2013.06.06
https://current.ndl.go.jp/e1439

アイルランド国立図書館、サービス及び資料保存機能強化等のため同館の歴史的な建物の再整備事業が発表される
Posted 2015年11月20日
https://current.ndl.go.jp/node/30019

アイルランド国立図書館(NLI)、新しい書庫棟の完成を発表
Posted 2019年6月28日
https://current.ndl.go.jp/node/38472

国際図書館連盟(IFLA)、フランス・ノートルダム大聖堂の火災被害を受けて声明を発表
Posted 2019年4月18日
https://current.ndl.go.jp/node/38052

火災により焼失した首里城のデジタル復元を目指す「みんなの首里城デジタル復元プロジェクト」、首里城正殿の3Dモデルを公開
Posted 2019年12月27日
https://current.ndl.go.jp/node/39873