「図書館が所在する自治体外の利用者でも、館外からDBを利用できるサービス」をめぐり論争(米国)

米国のサンフランシスコ公共図書館、ボストン公共図書館はともに、所在する自治体(市)を含む州内の住民すべてに対し、館外からでも有償データベース等の電子情報資源を利用できるサービスを実施していました。このサービスの利用には、館内で発行する図書館利用者カード、または、電子的に発行される「eカード」が必要ですが、このeカードの発行を受けて有償データベースを利用しようとする自治体外の住民が増えたことから、大手データベースベンダーEBSCO社などが、両館に契約の見直しを求める事態となりました。公共図書館が支払うデータベースの利用料金は通常、国勢調査に基づく自治体の人口(population served)に基づいて決められることになっていますが、契約条項には「図書館が承認した利用者(authorized user)」の数に基づくと記載されており、後者が増えた現在、実態に合わせて利用料金の見直しが必要であるという理由からです。なお、サンフランシスコ公共図書館の場合、他の自治体の学校図書館や大学図書館のライブラリアンが、eカードを発行するよう学生に勧めたことにより、eカード発行が増加したと目されています。これらのライブラリアンの中に、自館のデータベースサービスの契約の縮小の可能性に言及した人がいたことから、データベースベンダーが警戒感を抱いたことが、このような事態を招いたとされています。

これを受けて、サンフランシスコ公共図書館では新規のeカード発行を一時停止するとともに、既存のeカード利用者に対し、来館して居住地確認を行うように義務付けました。他方、ボストン公共図書館はeカードの発行を続ける代わりに、EBSCO社とのデータベースに館外からアクセスできるサービスの契約を中断することになりました。なおEBSCO社との交渉は継続中とのことです。

ただ、変わり行く情報環境、現在の経済事情等を考慮し、新しい契約形態を模索するベンダーも出てきています。コロラド州、バーモント州のように、州の単位で利用料金を決めるところもでてきています。今後、ビジネスモデル(サービスモデル)をめぐる交渉が、さらに続くものと目されています。

San Francisco, Boston Public Libraries At Odds with Vendors Over Ecard Access – 5/19/2009 – Library Journal
http://www.libraryjournal.com/article/CA6659156.html

FAQ (Frequently Asked Questions)
Online Registration and eCards – SFPL.org
http://sfpl.org/sfplonline/faq/onlinereg.htm

Boston Public Library
eCards
Online Registration and eCard FAQ
http://www.bpl.org/general/circulation/ecards.htm