カレントアウェアネス-E
No.138 2008.10.29
E850
これからの学校図書館活用のあり方は?(日本)
2008年9月,子どもの読書サポーターズ会議(2007年6月文部科学省に設置)は,「これからの学校図書館の活用の在り方等について(審議経過報告)」(以下,報告)を発表した。この報告は過去9回にわたる審議の到達点をまとめたものである。
報告は,「学校図書館の位置付けと機能・役割」「学校図書館をめぐる近年の状況」「これからの学校図書館に求められる課題」「学校図書館の活用高度化に向けた視点と取組等」の4章からなっており,最後の章で提言を行っている。
報告では,学校図書館の機能として「読書センター」「学習・情報センター」「教員のサポート機能」の他に「子どもたちの「居場所」の提供」「家庭・地域における読書活動の支援」が求められているが,十分には発揮されてこなかったと評価する。また,子どもの読書の状況は近年増加傾向を示しつつあるということを指摘しつつも,中学生になると「不読者」が多くなっていることを確認している。その上で,子どもたちの読解力の育成・言語力の涵養が重要とし,「言語力の養成」をその目標の1つとする新学習指導要領にも目配りをし,学校図書館の機能とその活用に関して,次の6つの提言をまとめている。
- (1) 学校図書館が中心となり,学校における読書活動を多様に展開する。
- (2) 家庭や地域における読書活動推進の核として,学校図書館を活用する。
- (3) 「学び方を学ぶ場」としての学校図書館の整備を進める。
- (4) 学校図書館の教員サポート機能を充実させる。
- (5) 「いつでも開いている図書館,必ず誰かいる図書館」を実現し,「心の居場所」となる学校図書館づくりを進める。
- (6) 放課後の学校図書館を地域の子どもたち等に開放する。
また,以上の提言を実現する上での留意点として,(a) 学校による組織的な推進体制の整備,(b) 教育委員会による条件整備・支援(「司書教諭」「学校司書」の整備とそれを支える人的体制,学校図書館図書標準の達成や施設整備などの物的体制),(c) 国による調査研究とその成果等の普及をあげている。
子どもの読書サポーターズ会議では,さらに広く関係者等の意見を聞きながら,これからも審議を深めていくとしている。今回留意点で挙げられているように,条件整備など具体的に解決していかなければならない課題も多く,実現に向けての取り組みが期待される。
Ref:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/meeting/houkoku/08093013/001.pdf
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/meeting/index.htm