カレントアウェアネス-E
No.135 2008.09.17
E831
ブックトラックで図書館広報?!
『図書館情報学用語辞典 第3版』(丸善,2007年)によるとブックトラックは,「図書館内で資料の運搬用に利用する台車」「資料の運搬以外にも,返却された資料や新着資料の一時的な展示用,返却台用,整理作業中の資料の積載用,参考係用のレファレンスブックの積載用など,図書館で多様に利用されている」と説明される。日本では,この辞書の説明にあるとおりの仕方で利用している図書館が多いのではないだろうか。
一方米国では,ブックトラック(book cart)は一風変わった使われ方もしている。2008年6月26日から7月2日までの期間にかけて,米国図書館協会(ALA)の年次大会が開催されたが(E816参照),会期中“Book Cart Drill Team World Championship”という大会が開催された。ブックトラックを利用した,図書館員による創作ダンス“Book Cart Drill Team”の腕前を競う大会である。この大会は2005年から開催されており,2008年は,白衣にもじゃもじゃの白髪頭のかつらという,科学者風のコスチュームに身に着け,特別に装飾されたブックトラックを器用に操りながらのダンスを見せた,サンタモニカ公共図書館のチーム“Well-Stacked Sci-Brarians”が優勝し,記念品である金のブックトラックを手にした。もともとBook Cart Drill Teamは,「コミュニティにおける図書館の存在感を高めるマーケティングツールとすること」「“保守的”といった図書館員のステレオタイプなイメージを打破すること」を目的に,地元のフェスティバルなどのイベントの場で,全米各地で実施されてきた。Book Cart Drill Teamには,図書館の広報という本来の目的以外にも,スタッフ間のチームワークや労働意欲を高めるといった効果も期待できるという。
また,本や図書館をテーマにした連続マンガを配信しているウェブサイト“Unshelved”は,ブックトラックの飾り付けのオリジナリティを競うコンテスト“Pimp My Bookcart 2008”を実施する。2007年には,宅配便のトラックを精巧に模した作品が優勝し,2位にマンモスのデザイン,3位に幌馬車のデザインのものと“Mystery Machine”と名づけられた青いバスのようなデザインのものが選ばれている。なおMystery Machineは,高校生たちがデザイン・作成し,図書館員に託したものだという。この2008年のコンテス トへのエントリー作品は10月いっぱいまで受け付けており,優勝作品にはブックトラック(415ドル相当)が贈られる。
上記で紹介した2つのイベントではそれぞれ,図書館家具のメーカーがスポンサーとなっている。ブックトラックを使ってダンスをする,ブックトラックをマンモスに変えてしまうなど,日本では考えられないブックトラック活用法であるが,図書館に身近にあるものを使い,コストを節約して効果的な広報を行う一事例として,参考にするところは少なくないのではないだろうか。
Ref:
http://www.ala.org/ala/pressreleases2008/june2008/AC08bookcartdrillteam.cfm
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2008/july2008/annual2008.cfm
http://www.smgov.net/Content.aspx?id=1345
http://jp.youtube.com/watch?v=G4hfKZv9SQs
http://www.unshelved.com/PimpMyBookcart/
E816