E803 – Library of the Year 2008発表(米国)

カレントアウェアネス-E

No.130 2008.06.25

 

E803

Library of the Year 2008発表(米国)

 

 米国のLibrary Journal誌と参考図書の大手であるGale社が毎年選定している“Library of the Year”(E118参照)の2008年の受賞館が,ワイオミング州のララミー郡公共図書館(Laramie County Library System:LCLS)に決まった。ララミー郡に住む約8万5千人の8割以上が図書館カードを所有するなど,LCLSはララミー郡の人々の暮らしに大きな影響を与えている。LCLSが目指す第一の目標は「模範的な顧客サービス」である。利用者と図書館との関係をもとに,じっくりと考案された図書館のサービスが高く評価され,今回の受賞となった。

 LCLSの中央図書館は2007年に新築されて以来,地域における存在感が増したという。しかし,中央図書館の新築は簡単に実現したものではなかった。ワイオミング州では税法の取り決めにより,資金の使用目的と,目的を達成するのに必要な総額を住民に明示すれば,郡は1%の消費税を,州の消費税5%に上乗せして課税することができる。中央図書館新築と,同時に提案された新しいブックモービルの購入,分館1館の補修についても,2003年に実施された住民投票の結果,投票者の55%の賛成により,必要経費2,690万ドル(約29億円)を増税によって賄うことになった。このような経緯で中央図書館は新築されたが,利用者の1人は,新しい建物は「機能とデザインにおいて際立つとともに,自然に私たちのコミュニティの中心になった」と語り,高く評価している。また新築された建物は,米国グリーンビル協会が制定する環境配慮型ビルの評価制度LEED(E578参照)のシルバー(4段階のランクの3番目)を取得しており,環境保全運動の推進を市民やディベロッパーに訴えている。

 新しい中央図書館,2つの分館,ブックモービル1台を活用して,LCLSは多様なサービスを提供している。新生児に本をプレゼントする“Books for Babies”,老齢者向けの少人数制パソコン講座など,全ての世代に対するプログラムが準備されているが,特に力を入れているのが,子ども向けサービスである。現在,幼稚園児から高校3年生までの全ての子ども達が図書館カードを所有し,宿題支援サービス(CA1142参照)などを利用している。LCLSはその他,ホームページやブッククラブなどを通じた自宅学習の子ども達の支援サービス,ブックモービルを利用した収入の低い居住エリアの子ども達へのサービスなどを提供している。

 以上のような利用者やコミュニティのニーズを反映したサービスを支えているのは,約75名いる図書館のスタッフたちである。LCLSのオズボーン(Lucie Osborn)館長はLibrary Journal誌のインタビューに対し,「図書館には,被雇用者を育てる責任がある。そうすることによって,彼らは自分のキャリアの次のステップに備えることができるのです」と語っている。LCLSには,優れた継続教育プログラムがあり,助成金を受けて,MLS(図書館学修士)取得のために学習することなどが可能である。スタッフの教育に加え,スタッフの選定にも十分な時間をかけており,長時間の面接やプレゼンなどを通じ,能力を見極めることにしているという。

 なおLibrary of the Year 2008の授賞式は,米国図書館協会(ALA)年次大会(E669参照)の一環として2008年6月30日に行われ,オズボーン館長がLCLSのサクセスストーリーを披露する予定である。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6568073.html
http://www.lclsonline.org/news/articles/080607_2008LibraryOfYear.html
CA1142
E118
E669
E578