E785 – 四川大地震による図書館の被害状況

カレントアウェアネス-E

No.128 2008.05.28

 

 E785

四川大地震による図書館の被害状況

 

 2008年5月12日に中国・四川省で起こった大地震は,死者が6万5千人,行方不明者が2万3千人,負傷者が36万人,緊急避難者が1,438万人(いずれも5月26日12時,新華社発表による)と,未曾有の大災害となった。図書館および図書館職員も例外ではなく,甚大な被害を被った。

 省都・成都にある四川省図書館では地震発生時,強烈な揺れが5~10分続いたという。負傷者はなかったが,書架が倒れ資料が散乱し,壁に亀裂が入り,天井板が脱落し,窓ガラスも割れた。同館は地震直後から閉館しているが,テントや医薬品,地震のための防災手帳,子どものための読み物,小中学校の教材などを被災地に送る活動を続けている。また壁に亀裂が入るなどの被害を受けた成都市青羊区図書館も,避難所となっている市の体育館に図書や新聞を運んだり,職員がボランティア活動を行ったりしている。

 震央に近い地区の図書館の被害はさらに深刻である。日本の国際緊急援助隊救助チームが派遣された北川県・青川県の両県では,図書館が完全に倒壊した。このうち北川県図書館では,職員5名中3名が生き埋めとなった。3名のうち,李春館長は幸いにも75時間後に救出されたが,残る2名は依然として行方不明である。北川県が位置する綿陽市の市立図書館によると,市内にある8館のうち,部分的な被害で済んだのは1館だけで,倒壊した北川県図書館以外の図書館も,大きな被害を受け危険建物に認定されているという。震央のブン川県図書館も,死傷者こそ出なかったものの,深刻な被害を受け危険建物になったと報じられている。この他にも,倒壊したとされる図書館や,大きな亀裂が入った図書館があるというが,連絡がつかない図書館もあり,被害の全貌はまだ明らかになっていない。なお,被災地の図書館および全国文化情報資源共有プロジェクト(CA1601参照)で設けられた情報センターの被害の一端は,四川省図書館や綿陽市図書館のウェブサイト上の写真からうかがい知れる。

 このほか,震央から離れた四川省内の地区でも,多くの図書館で壁に亀裂が入るなどの被害が発生したほか,隣接する甘粛省,陝西省,重慶市の図書館にも被害は及んでいる。現地では余震が続き,土砂崩れで川がせき止められてできた自然の「地震湖」に決壊の恐れがあるなど,今後の被害の拡大も懸念される。このような中,四川省図書館,重慶図書館,中国科学院成都文献情報センターなどが,地震に関する情報ポータルサイトを設けている。コンテンツの種類は少しずつ異なり,地震に関する新聞報道へのリンク,自館の被害状況や救援活動情報の報知,地震やその後の疫病に関する知識を提供するもの,生活情報を提供するものなどがある。

 なお中国図書館学会が,各地の図書館の被災情報の集約を行うとともに,国内外に向けて,図書館・図書館職員への募金活動を呼びかけている。中国国家図書館をはじめ,すでに数多くの図書館が金銭・資料などの提供を行っている。

注:ブン川県図書館の「ブン」はさんずいに文。

Ref:
http://www.gov.cn/jrzg/2008-05/26/content_993889.htm
http://www.sclib.org/information/news.asp?Num=677
http://www.sclib.org/information/news.asp?Num=680
http://www.sclib.org/information/news.asp?Num=692
http://www.mylib.net/article_view.asp?ID=157
http://www.gylib.com/Article_Show.asp?ArticleID=563
http://www.sclib.org/information/news.asp?Num=684
http://www.mylib.net/Article_View.asp?ID=154
http://www.sclib.org/test.asp
http://www.cqlib.cn/lib/zhuanti/earthquark/earthquark1.html
http://www.cdb.ac.cn/clas/index.Asp
http://www.lsc.org.cn/CN/zqtb.html
http://www.lsc.org.cn/CN/ED.html
CA1601