カレントアウェアネス-E
No.119 2007.12.12
E730
CDNLAO 2007カントリーレポート(4)他のアジアの国々
CDNLAO 2007には,30の加盟国立図書館のうち15館から,館長または代理が参加した。CDNLAOのウェブサイトに国・国立図書館の情勢報告(カントリーレポート)のプレゼンテーション資料が掲載されているのは7か国(本連載で紹介済みの6か国および日本)だけであるが,その他の参加館のカントリーレポートも,その概要をCDNLAOの議事録から知ることができる。
ブルネイには国立図書館が存在せず,言語・文化省図書館がその機能を果たしている。同館は4つの地区図書館,3つの分館を有し,蔵書はおよそ50万点である。もっとも読書用資料のほとんどは,英国,マレーシア等から輸入している。貸出,レファレンス,テクニカルサービスのほか,ストーリーテリング大会,読書月間の設置などのプログラムも定期的に行われている。
インドネシア国立図書館は170万点の資料,682名の職員により運営されている。同館は移動図書館(E539参照),読書用資料の提供,ICTによって,各地域の図書館を支援している。2007年には副大統領によって“e-mobile library”および“Open Service Library”というデジタル環境下での図書館サービスを拡充するプロジェクトが立ち上げられている。
マレーシア国立図書館はおよそ230万点の資料,1,429名の職員により運営されている。現在,ジャウィ文字(マレー語を表記するのに用いられるアラビア文字)で書かれた資料・文書を国の文化遺産として保護するプロジェクトや,地方の図書館を改善して識字率を向上させるプロジェクトなどを推進している。
今回のCDNLAOには不参加だったネパール国立図書館からも,カントリーレポートが提出されている。8万7千点の資料,25名の職員でサービスが提供されており,OPACの提供,地方への移動図書館サービスなども行われている。
パキスタン国立図書館はおよそ20万点の資料,180名の職員により運営されている。国立図書館の一部門としてイスラマバード公共図書館があり,図書館間貸出はこのイスラマバード公共図書館を通じて行われている。
フィリピン国立図書館はおよそ18万点の資料,172名の職員により運営されている。現在,ICTの進展に対応すべく,“eLib”(E571参照)をはじめとする電子図書館サービスを推進している。また視覚障害者へのサービスにも力を入れている。
シンガポール国家図書館委員会(NLB)は2006年10月,シンガポールの歴史・文化のさまざまな側面を紹介するウェブサイト1,200サイトを収集したウェブアーカイブ“Web Archive Singapore”を立ち上げた。また2005年1月には,シンガポール人の作家・芸術家の作品を集めたリポジトリ“NLB Online Repository of Artistic Works(NORA)”も立ち上がっている。このほか,アジアフィルムアーカイブ(AFA)と覚書を交わし,シンガポールおよびアジアの映画製作者の未発表の作品を保存していくという。CDNLAOのウェブサイトでは,CDNLAO 2007の本会議の翌日に行われた資料保存に関するセミナーで同館が行った,印刷媒体・デジタル媒体の保存活動について紹介するプレゼンテーション資料が公開されている。
スリランカ国立図書館・文書館は35万点の資料を所蔵している。同館の特徴的な活動として,全国書誌をシンハラ語,タミル語,英語の3言語で刊行していることが挙げられている。また同国では,スマトラ沖地震・津波(E282,E420,E560参照)で被災した地域で,新しい公共図書館,学校図書館,教会図書館が数多く再建されつつあるという。
タイ国立図書館は261名の職員で運営されている。所蔵する図書資料は280万点を超えており,うち112万点あまりの書誌事項がOPACで検索できる。現在,タイ国内には各館種合計でおよそ4万の図書館が存在している。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/cdnlao2007.html
http://was.nlb.gov.sg/
E282
E420
E544
E559
E560
E571
E580