E580 – 【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(11)シンガポール

カレントアウェアネス-E

No.96 2006.12.06

 

 E580

【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(11)シンガポール

 

 シンガポールでは,国立図書館委員会(NLB)が国立図書館と公共図書館を包括的に管理・運営している。2005年7月に新装開館した国立図書館(E356参照)の建物の中に中央貸出図書館が設けられているほか,公共図書館として地域図書館3館,コミュニティ図書館20館,コミュニティ子ども図書館15館があり,連携してサービスが行われている。公共図書館の利用者は増え続けており,2006年1月時点での全登録利用者は193万人と,全人口448万人の43%にまで達している。特に7月の新装開館の影響もあって,2005年4月から2006年1月までの間に新規に登録した利用者が約22万人,来館した利用者数も全館合計で約2,880万人(人口1人あたり6.4回相当)に上った。なお,2005年時点で国立・公共図書館が所蔵する図書資料の冊数は760万冊,雑誌は10万7,000タイトルである。

 国立・公共図書館のサービスで特に注目されるのは,読書の推進と電子資料の提供である。読書推進活動としては,米国などで行われている“One City, One Book”(感想を語り合えるよう市民が同じ図書を読むことを奨励する読書推進運動)にならい,“Read! Singapore”キャンペーンが行われている。ただし多文化国家・シンガポールの特性にあわせ,1冊だけではなく,公用語である英語,マレー語,中国語,タミル語の4か国語の図書がそれぞれ3冊ずつ,合計12冊推薦されている。読後は,図書館,学校,会社,書店,カフェなどに集って,読書クラブや家族・友人などとともに,感想を交わし合うことが推奨されている。

 電子資料の提供も大規模に行われている。登録済みの利用者は,NLBのウェブサイトから,13万点を超える電子本や,合計79のデータベースに収録されている22万タイトルを超える電子ジャーナル(一部は有料)などを利用できる。この中には,6万点以上の中国語の電子本,またオーディオブックや大活字の電子本も含まれており,ユニバーサル・サービスの広がりも感じられる。

 この報告ではシンガポールの国立・公共図書館の活動の充実ぶりが目を引くが,先行事例を国情に合わせて上手にアレンジして導入するなど,そのきめ細やかさも注目に値する。

Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/documents/sing06.pdf
http://www.nlb.gov.sg/
http://www.nlb.gov.sg/annualreport/fy05/
http://readsingapore.nlb.gov.sg/
E356
CA1499