E711 – 都道府県立図書館のインターネット設備とIT関連講座の現状

カレントアウェアネス-E

No.116 2007.10.31

 

 E711

都道府県立図書館のインターネット設備とIT関連講座の現状

 

 国立教育政策研究所は2006年度の調査研究事業として,社会教育施設におけるITの活用状況などについて,都道府県立図書館を含む社会教育施設を対象に実態調査を行い,その結果を『インターネットを活用した研究セミナー等に関する調査研究報告書』としてまとめ,ウェブサイト上で公表している。この報告書の第2章「社会教育施設におけるITの活用状況等に関する調査」の概要では,(1)コンピュータの設置状況等,(2)ITを活用した生涯学習に関する指導体制,(3)ITを活用した生涯学習に関する講座等の実施,(4)コンピュータの設置に関する意識(希望),について都道府県立図書館,都道府県立博物館,都道府県立生涯学習センター,市町村立公民館,政令市立公民館に尋ねた結果を詳しく紹介している。なお都道府県立図書館では,対象となった59館中58館から回答があったという。

 (1)に対する回答によると,回答した全ての都道府県立図書館に「利用者の情報検索・閲覧用」のコンピュータがあり,さらに全体の82.8%の館に,施設利用者が利用できるインターネットに接続されているコンピュータが設置されている。また,(2)への回答によると,回答した都道府県立図書館の全職員数に占める,IT活用における指導・助言が可能な職員数の割合は26.1%であった。また,ITの活用における講師・助言者等に外部人材を活用している館は全体の29.3%であるという。(3)への回答によると,ITを活用した生涯学習に関する講座を実施している都道府県立図書館は全体の50%で,講座の内容で最も多かったのが,インターネットや電子メールの使い方などの基本操作となっている。図書館に特徴的な講座として,「図書館資料の検索方法」や「音訳・点訳のための講座」等を設けているところもあった。ITを活用した生涯学習に関する講座等が「ない」と答えた都道府県立図書館で,その理由としてもっとも多く挙げられたのが設備の古さで,これが全ての回答の44.8%を占めた。そのほか講師等の人材不足(27.6%),予算不足 (17.2%)と続いている。

 「社会教育施設におけるITの活用状況等に関する調査」は,「IT改革戦略」(平成18年1月IT戦略本部決定)に準じた施策の参考とする目的で実施されているが,「IT改革戦略」では,「生涯を通じた豊かな生活」を実現するための方策の1つとして,「図書館を始めとする様々な公共施設の情報化」,「ITを活用した学習等をサポートする人材の配置」,「ITに通じた図書館司書の育成」を挙げている。全ての人に平等に開かれた,情報拠点としての図書館の役割への期待は小さくなく,日本における「図書館とIT」の今後に引き続き注意していく必要があるだろう。

Ref:
http://www.nier.go.jp/jissen/chosa/houkokusyomokuji18.htm
E353
E692
E699