E629 – 2006年に最も批判を受けた図書は?(米国)

カレントアウェアネス-E

No.104 2007.04.11

 

 E629

2006年に最も批判を受けた図書は?(米国)

 

 米国図書館協会(ALA)が,2006年に批判を受けた図書トップ10(10 most challenged books)を発表した。これは,内容が不適切であるとして,親や教師から図書館や学校から取り除いてほしいと文書で申し出があったものを集計したものである。申し出を受けた公共図書館,学校,学校図書館からALAの知的自由委員会に報告された件数は,1年間で合計546回であった。

 批判を受けたという報告が最も多かったのは,2羽のオスのペンギンがカップルとなり,別の異性愛カップルの卵を与えられ子育てをした実話に基づく“And Tango Makes Three”(Justin Richardson, Peter Parnell著, Simon & Schuster Children’s Publishing, 2005)であった。この作品はALAの2006年「注目すべき児童書」に選ばれているほか,数々の賞を受賞しているが,同性愛を扱っている,伝統的な家族像に背いているなどとして多くの批判を受けた。このニュースは米国のみならず日本の新聞でも報道され,注目を集めた。

 なおこの作品を含め,トップ10のうち5点が,同性愛を扱っている,伝統的な家族像に背いているという理由で批判されたものである。そのほか,不快感を与える言葉を用いている(8点),性的な内容を含んでいる(7点)といった理由で批判されたものが多かった。なお例年,トップ10に挙げられる古典「ライ麦畑でつかまえて」「はつかねずみと人間」「ハックルベリー・フィンの冒険」などは,2006年はトップ10には入らなかったという。

 なお米国では毎年,図書館や書店が読書の自由を訴えるイベント「禁書週間(Banned Books Week)」が行われており,最も批判を受けた図書も,このイベントの核として大々的に紹介されている。2006年度はこれにGoogleも協力し,書籍デジタル化・検索サービス“Google Book Search”に特設ページを作り,批判を受けた古典の作品42点を紹介している。

Ref:
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/march2007/mc06.htm
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2006abc/march2006ab/tango.htm
http://www.msnbc.msn.com/id/15764474/
http://www.allheadlinenews.com/articles/7005550079
http://www.boston.com/news/nation/articles/2006/12/20/schools_chief_bans_book_on_penguins/
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/29217
http://www.ala.org/bbooks
http://books.google.com/googlebooks/banned/
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