カレントアウェアネス-E
No.101 2007.02.28
E608
館長の日記に綴られるイラク国立図書館・文書館の現状
2月1日。図書館から200メートルほど離れたal-Maidanエリアで爆弾が爆発。死傷者多数。
2月3日。al-Sadriyaエリアで大型トラックが爆発。死者150人,負傷者250人以上。当館の職員も1名が重傷。また別の職員のいとこが死亡。al-Sadriyaは図書館から1キロほど離れたところで,多くの職員が住んでいる。
2月4日。11時15分ごろ,大きな爆発で建物が揺れた。テロリストが,先週と同じ場所を攻撃。再び多数の市民が死傷。
2月6日。爆発も砲撃も銃撃戦もなかった。オフィスに著名な俳優が訪ねてきた。演劇の撮影についての協力要請だった。劇場を無料で使用すること,必要な機材を提供することを約束した。このような厳しいときこそ,文化的活動・行事を継続することは重要だと,意見が一致した。
これは,英国図書館(BL)のウェブサイトに公開されている,イラク国立図書館・文書館(INLA)の館長Saad Eskanderの日記の一部である。INLAは爆破による被害のために2006年11月21日から一時期休館した。その後12月上旬に再び開館したものの,治安状態は以前にも増して厳しい状況に陥った。日記は,この苛烈な状況におかれた2006年11月から,2007年2月上旬までのものが公開されている。交通網の閉鎖。電力供給の制限。建物の爆破。同僚の拉致,殺害。INLAの職員や関係者が日々どのような現実に直面しているのか,逐次記されている。
INLAは,放火などにより,図書館資料の25%,文書館資料の60%もが失われたと試算されている。2003年以降(CA1522参照),BLなど諸外国の機関との関係の再構築を進めてきたが,復興への道のりは依然険しく,支援も極めて難しい状況にある。
Ref:
http://www.bl.uk/iraqdiary.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6406810.html
http://www.iraqnla.org/fp/News/news3.htm
CA1522