E513 – “Library of the Year”受賞図書館に何が起こったか?(米国)

カレントアウェアネス-E

No.87 2006.07.19

 

 E513

“Library of the Year”受賞図書館に何が起こったか?(米国)

 

 Library Journal誌とThomson Gale社が選定する米国の“Library of the Year”を2000年に受賞したジョージア州グィネット郡(Gwinnett County)公共図書館で,2006年6月12日,図書館委員会の議決によりピンダー(Jo Ann Pinder)館長が解雇された。ピンダー館長は2002年度の米国公共図書館協会(PLA)会長を勤めており,図書館界でもよく知られた人物であった。  

 ピンダー館長は1991年から同館の館長として,利用者の要求に応じ人気のある資料を備え,書店と競争していくという「人気のある,貸し出し型図書館」を目ざす図書館経営戦略を展開してきた。これに対し,生涯学習を重視し,不朽の古典や子どもの教育に資する資料を備えるべきとする保守派の市民団体“Gwinnett County Public Library Watch”は,「ピンダー館長の方針はグィネット郡の家庭の伝統的な価値観とそぐわない」として,館長を解雇せよというキャンペーンを行ってきた。1回に貸し出す冊数が多く盗難を助長した,ベストセラーの複本を大量に購入してはすぐに除架して安値で売っている,管理職者の人数が多い,ALAの大会への参加費用が高額である,といった財務面からの批判や,館長個人の資質への批判もなされた。  

 グィネット郡は保守的な勢力の強い土地柄であり,5名で構成されるグィネット郡図書館委員会でもピンダー館長を支持する委員は1名だけであったことから,この委員の呼びかけに応じて詰めかけた200名以上の支持者の擁護もむなしく,ピンダー館長は解雇された。  

 またこの解雇の議決に続いて,同館が計上していた,スペイン語の小説の購入予算3千ドル(約34万円)を取り消す議決も行われた。これに関しても,保守派の市民団体から「娯楽小説を購入するべきではない」という意見が出ていた。委員会は「グィネット郡には多くの言語集団がおり,そのすべてに対し平等なサービスを行うことは不可能である」として一度は取り消しを決定したが,この議決を知った多くの人々から意見が寄せられたため,再検討を行った末,「CDブックに比べて割安な印刷媒体に限定すること」という条件付きで予算を復活させた。もっとも,寄せられた意見の半数は,スペイン語の小説は購入すべきではないというものであったという。

Ref:
http://www.gwinnettdailypost.com/index.php?s=&url_article_id=16100&change_well_id=2
http://www.libraryjournal.com/article/CA6342794.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6343273.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6346389.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6349773.html
http://www.gcplwatch.org/intro.html