カレントアウェアネス-E
No.85 2006.06.21
E504
デジタル資料と著作権,知的財産権の課題
図書館資料のデジタル化によって,より簡単に資料へアクセスすることができるようになった。また,原資料に代えてデジタル版を提供できることから,資料の保存性も向上した。
しかし,知的財産法におけるデジタル化の位置づけはまだ明確でないところも多い。こうした問題意識のもと,デジタル資料の保存・アクセスにかかわる知的財産権の管理に関して図書館が抱えている課題を整理したレポートが,先ごろ英国の公共政策研究所(Institute for Public Policy Research:IPPR)から発行された。
すでに出版された資料のデジタル化は,著作者の側からみれば著作物へのアクセスの可能性が高まり歓迎すべき状況である。その一方で,図書館や出版社は,ライセンスやデジタル著作権管理(DRM)といった新しい技術・手法を用いて著作物の利用制限を課すという形で,ごく一部の出版社が著作物を独占してしまうのではないかといった懸念を抱いている。このレポートでは,著作権その他の知的財産権の概要,デジタル情報へのアクセスに係る著作権法の図書館への影響,デジタル情報の保存に関する政策といった項目について解説しているほか,最も重要な課題として,デジタル形式で保存された資料へのアクセスと利用の方法を挙げている。その上で,この課題の解決に向けて,図書館と著作権者の協力が必須であると結論づけている。
Ref:
http://www.ippr.org.uk/ecomm/files/preservation_access_ip.pdf
http://www.managinginformation.com/news/content_show_full.php?id=4963