E298 – GPOのデジタル化戦略とFDLPの危機

カレントアウェアネス-E

No.53 2005.02.16

 

 E298

GPOのデジタル化戦略とFDLPの危機

 

 米国政府印刷局(GPO)は2004年12月,2005年から2009年にかけての戦略ビジョンを発表した。政府情報の約50%がデジタル形式でのみ発行されている現状をふまえ,デジタル・コンテンツ・システムを2007年末までに構築し,政府情報をデジタル形式で作成,収集,組織化,マネージメント(真正性の保証や版の管理),保存,提供していく「デジタル情報の工場」を目指すとしている。同時に,「最後の拠り所としてのコレクション」(E202参照)をコンセプトに,政府刊行物を印刷体とデジタル媒体の両方で保存するダーク・アーカイブの建設も計画しており,2007年末までには過去の政府刊行物の70%がデジタル化される見込みであるという。

 一方で,こうしたデジタル環境への急激な転身に対して警鐘を鳴らす動きもある。米国法律図書館協会(AALL)は1月26日,GPOが2006会計年予算案の中で連邦政府刊行物寄託図書館制度(FDLP)の縮小を企図しているとして緊急声明を発表した。それによると,GPOは10月からFDLPへの印刷体の配布物を50タイトルに限定し,その他については有料のオンデマンド印刷で提供する方式に変更する計画であるという。AALLは,デジタル・コンテンツ・システムの機能が完備され,信頼性に問題がなくなるまでは,これまで米国市民の政府情報へのアクセスを保証してきたFDLPの仕組みを維持するべきであるとして,現在の無償配布プログラムを継続するよう求めている。

Ref:
http://members.whattheythink.com/allsearch/article.cfm?id=18649
http://www.gpo.gov/congressional/pdfs/04strategicplan.pdf
http://www.ll.georgetown.edu/aallwash/aa01262005.html
E202