E2004 – 京都大学附属図書館における貴重資料画像の二次利用自由化

カレントアウェアネス-E

No.343 2018.03.08

 

 E2004

京都大学附属図書館における貴重資料画像の二次利用自由化

 

    京都大学では,2017年9月7日に「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」を試験公開し,12月1日には公開画像を追加して正式公開するとともに,附属図書館所蔵資料の電子化画像を自由利用可能とした。本稿では,画像の自由な二次利用を認めるにあたって,関連規則の整備をどのように行ったかを紹介する。

●関連規則改正の経緯

    京都大学では,維新特別文庫(1994-1995年電子化),国宝・重要文化財等(1996年電子化)を皮切りに,20年以上にわたって一次資料の電子化・公開事業が進められてきた。2016年度から開始したオープンアクセス(OA)推進事業でも,学術情報リポジトリKURENAIによる研究教育成果のOA化推進とともに,所蔵する貴重資料を確実に保存しながら幅広い利用を促進するために,一次資料の電子化・公開を実施している。「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」の運用開始により,従来よりも高精細な画像を公開することができるようになることから,兼ねてから必要性が認識されていた画像の二次利用自由化に2017年度に取り組むことになった。

    京都大学では,「京都大学図書館保管資料特別利用規則」(以下「特別利用規則」)によって,図書館所蔵資料の複製とその複製物の利用に関する取扱いが規定されており,学内にある50余りの図書館・室が所蔵する資料に共通して適用されている。画像を利用する際は,この「特別利用」の一形態として,改正前には特別利用申請及び利用料の支払を求めていた(ただし,教育・研究を目的とする等,一定の条件を満たす場合は,利用料の支払を免除していた)。一方,画像の取扱いは,資料を所蔵する図書館・室の方針や個々の資料に関わる権利関係の状況にもよることから,特別利用規則を変更する際には,各図書館・室がそれぞれの現状に適した運用を選択可能とする必要があった。

    そこで,特別利用規則に新しい条項(第11条)を新設して,インターネット上で公開する所蔵資料の電子化画像のうち,資料を所蔵する各図書館・室の長が認めるものについては,利用の際に特別利用申請や利用料の支払を要しないことを定め,各図書館・室は内規等を制定してこれを実施することとした(2017年10月26日改正)。これを受けて,附属図書館では,「京都大学附属図書館本館における『インターネット上で公開するデジタルデータの特別利用』の条件に係る内規」(2017年11月28日附属図書館長制定;以下「内規」)を新たに制定し,特別利用規則第11条を実施する環境を整え,画像の二次利用を自由化した。

●利用ライセンスの表示

    上述の内規では,画像の原資料の所在と状態を明らかにするため,二次利用の条件として,所蔵館と,画像改変時はその旨の明示を求めている。また,「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」では,今後附属図書館だけでなく全学の図書館・室が所蔵する資料の電子化画像を公開していくため,所蔵館によって画像の自由利用可否及び利用条件等が異なる場合もあり得る。こうした二次利用の際に必要な情報を書誌単位でわかりやすく提供できるように,「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」では現在追加機能を開発中である。なお,平面複製である電子化画像の作成においては作成者に著作権が発生しないという法解釈に基づき,現在広く利用されるようになってきているクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)による利用ライセンスの表示を採用していない。
 

●画像の二次利用自由化の効果

    二次利用の事例としては,学術論文や教材への掲載,博物館展示,放送番組等での利用が挙げられる。

    特別利用規則の改正前は,一定の条件を満たして利用料が免除となる場合でも,事前に特別利用申請を提出して利用許可を得る必要があったため,特に公開日が迫った放送番組や新聞記事等での利用に対応できない場合があった。しかし改正後は,利用許可を待つことなく画像を活用できるようになった。このほか,毎年教科書や教材に掲載されている「天正遣欧使節肖像画」「国女歌舞伎絵詞」等についても,出版社は毎年同様の申請手続きを繰り返す必要がなくなった。これまでも頻繁に問合せや依頼があった地域の観光案内や展示会等での利用にも,さらに活用が広がることを期待している。

    京都大学では,汎用的な形式でデータを公開するプラットフォームとしてのIIIF(E1989参照),所蔵する貴重資料の高精細画像というコンテンツ,自由な二次利用という手段の3つの環境を整備することで,京都大学が所蔵する貴重資料が研究の推進・文化の振興に貢献することを願っている。

京都大学附属図書館・赤澤久弥,大村明美

Ref:
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1375887
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/news/2017-12-01-0
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/reuse
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/mainlib/wp-content/uploads/img/about/reiki/7/7-15.pdf
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/mainlib/wp-content/uploads/img/about/reiki/7/7-26.pdf
http://iiif.io/
E1989