E1973 - アーカイブサミット2017 in 京都<報告>

カレントアウェアネス-E

No.337 2017.11.16

 

 E1973

アーカイブサミット2017 in 京都<報告>

 

 2017年9月9日から10日まで,京都市左京区の教養教育共同化施設「稲盛記念会館」(京都府立大学下鴨キャンパス内)および京都府立京都学・歴彩館において,アーカイブサミット組織委員会(委員長:長尾真(京都府公立大学法人理事長))の主催により「アーカイブサミット2017 in 京都」が行われた。本稿では同委員会事務局(事務局長:吉村和真(京都精華大学副学長))の立場から,今回のサミットの内容と意義について報告する。

●概要

 「アーカイブサミット」とは,産官学民を横断するアーカイブ関係者による集まりで,2015年,2016年は東京で開催された(E1814参照)。9日は「社会のアーカイブ化」をテーマに,この1年のアーカイブをめぐる状況のレビュー,3会場同時に2ターン行った6つのセッション(「災害とアーカイブ」「空間情報とデジタルアーカイブ」「文化資源をつなげるジャパンサーチ構想」「京都におけるアーカイブの現状と課題」「デジタルアーカイブの情報技術」「デジタルアーカイブ学会の未来」),さらにセッション全体のレビューと懇親会を開催した。10日は「アーカイブの社会化」をテーマに,「届く、使うデジタルアーカイブ」「クールジャパンの資源化について」の2つのミニシンポジウム,主催者・共催者による京都府・京都市の取組を紹介する内容の挨拶,御厨貴氏(東京大学名誉教授)による「アーカイブの視点から見ると世界が変わる」と題した基調講演,シンポジウム「社会化するアーカイブ」を開催し,閉会となった。さらに,7企業・団体によるデジタルアーカイブに関連する内容の展示も開催した。両日で,アーカイブに関する広範な専門家や市民334人が参加し,活発な議論が行われた。

●内容

 各企画とも重要かつ熱のこもった議論が展開されたが,本稿では特に,3つの企画に触れたい。まず,9日のセッション「文化資源をつなげるジャパンサーチ構想」では,現在,国立国会図書館(NDL)などを中心に進められている新しい分野横断統合ポータル「ジャパンサーチ(仮称)」(E1932参照)について構想段階での発表が行われた。多様なコンテンツのメタデータを統合的に検索可能にして日本国内の文化的・学術的資源を,まさにつないでいこうという非常に重要な試みについて熱い議論の場となり,翌日まで様々な意見が聞かれた。2つ目は,10日のミニシンポジウム「届く、使うデジタルアーカイブ」である。ここではデジタルアーカイブを,絵図と写真を中心に加工し,街歩きの資料として存分に利用している梅林秀行氏(京都高低差崖会崖長)を中心に,現在のデジタルアーカイブについて,利用規約・アーカイブが生み出される研究過程との接続・利用者側の振舞いなどから,運用者の課題がえぐり出された。3つ目は,同じく10日のシンポジウム「社会化するアーカイブ」である。登壇者は,前述の梅林氏に加え,日本近現代史が専門の河西秀哉氏(神戸女学院大学准教授)・漫画家で貴重な原画の保存・公開の活動も行っている竹宮惠子氏(京都精華大学学長)・著作権に詳しい福井健策氏(弁護士)の計4人,司会は江上敏哲氏(国際日本文化研究センター)であった。ここではアーカイブが社会にもたらす可能性と,アーカイブが社会に根付くために何が必要か,がそれぞれから報告された。

●狙い

 2015年,2016年のアーカイブサミット,またそれにとどまらないアーカイブをめぐる議論を観測し,さらに京都で開催するという意義を念頭に置いたとき,今回は以下を特に意識した。デジタルアーカイブを徹底的に使っている利用者の視点を投入すること,現物資料の調査・保存の過程とデジタルアーカイブの議論をつなぐこと,関西で活発な地理情報システム(GIS)と歴史資料をつないだ空間のアーカイブとマンガ・アニメ・ゲームという新しいメディアをテーマにすること,である。さらに,多業種多分野の専門家・専門組織が隣接している京都という土地で行う以上は,立場を超えた極力フラットな,ひとつの「広場」が生じるように,プログラムや会場設定・進行で工夫しようとした。

 運営面での新しい試みとしては,ファシリテーショングラフィックを大規模に導入したことであろう。会議や話し合いをキーワードを軸に図示するなどして可視化する仕掛けであるが,今回は,初日のセッションが3会場で並行して行われることから,成果を参加者全員で,その日のうちに共有するために必要と考え,6セッションすべてに導入した。そして,初日夕方のセッション全体のレビューの際に,各セッションで作成されたグラフィックを会場前方に順に貼り出し,各セッションのコーディネーターが壇上に上がってその内容を検討することで,参加者全員と内容の共有を図った。分科会制をとる企画において,ひとつの新機軸を打ち出したものと評価している。

●事務局体制

 前提として,事務局は完全に有志のボランティアで運営した。当日は,アルバイトや一般参加者に協力を依頼し,27人で臨んだが,準備段階から参加したのは6人から8人のコアメンバーであった。このメンバーで,構成・内容の検討,登壇者との連絡,共催者・協賛者との調整,会計・受付の管理,会場・展示の設定,広報・当日資料の作成を行った。準備を開始したのは2016年8月からで,当初は月に1度程度,2017年6月末からは毎週会合を持った。各方面に相談しながらも,それぞれが組織を背負わずに議論を交わして自由に企画・運営ができ,上記のような狙いを達成できたのは,この事務局体制によることが大きい。なお,脆弱な基盤のなか,非常に多岐にわたる検討と工夫を行ったことによって,種々の困難な条件を打開し,無事開催することができたことを記録しておく。

●おわりに

 10日のシンポジウムの最後,全企画の終了時に,司会から,続きは参加者が各業界や各職場に帰ってからそれぞれで周囲と議論して欲しい,との発言があった。この種のイベントを,一過性の,急に立ち現れ立ち消えた一種の祝祭空間にとどめずに,考え続けるきっかけを参加者が共有することになれば,それこそが目的が達成されたことになろう。

 このことは企画意図の修正となっても現れる。今回掲げた「アーカイブの社会化」というテーマについて,「社会化」には「発達」という意味内容があるとの指摘が当日飛び出した。そう,われわれは今まさに発達過程を皆で作って/立ち会っているのである。われわれには,「アーカイブ【が】社会化」するため,どう行動するかが問われている。

 アーカイブという概念の外縁を,最大限に広く取り,知を切り出し,蓄積し,循環する仕組みを,まだ見ぬ形で想像し,そこにむかって議論して,社会的・システム的に実装していくことに少しでも貢献できれば事務局の労苦も報われることとなる。

 今回は,京都での開催ということもあり,共催として京都府/京都市/京都府立大学/京都文化力プロジェクト実行委員会,協賛としては京都府内に所在する団体を含む,株式会社アーイメージ/株式会社カーリル/京セラコミュニケーションシステム株式会社/株式会社Stroly/デジタルアーカイブ推進コンソーシアム/凸版印刷株式会社の参加を得た。この場で感謝の意を表したい。

アーカイブサミット組織委員会・福島幸宏,小村愛美

Ref:
http://archivesj.net/summit2017top/
https://togetter.com/li/1149122
https://togetter.com/li/1149479
https://www.homes-vi.org/event/facilitation-graphic/
http://egamiday3.seesaa.net/article/453865890.html
http://archivistkyoto.hatenablog.com/entry/2017/10/02/202548
E1814
E1932

 

 

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