E1932 – 国立国会図書館の分野横断統合ポータルの構築に向けた取組

カレントアウェアネス-E

No.328 2017.07.06

 

 E1932

国立国会図書館の分野横断統合ポータルの構築に向けた取組

 

 国立国会図書館(NDL)は,国内の様々な機関が持つ豊富な「知」を活用するための単一のアクセスポイントの提供を目指し,国立国会図書館サーチ(以下,NDLサーチ)の構築を通じて,全国の図書館,公文書館,博物館・美術館や学術研究機関等との連携拡張に取り組んできた。2017年3月には,NDLサーチと文化庁の文化遺産オンラインの一部との連携を実現し,NDLサーチを通して文化遺産オンラインの国指定文化財等データベースのデータ約3万2,000件を検索することができるようになった。2017年5月現在,NDLサーチは約70機関(これらの機関にデータを提供する機関を含むと数千機関)と連携し,検索可能なメタデータ件数は約100データベース・約1億2,000万件に及ぶ。NDLサーチが連携先をさらに拡張し,多様なコンテンツのメタデータを統合的に検索可能にすることは,NDLが2016年3月に策定した第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画でも知識の循環を促進する情報基盤整備の一環として目標に掲げているが,同時に,以下で紹介するデジタルアーカイブの利活用促進に向けた国の動きの中でも求められている。

 内閣総理大臣を本部長とする知的財産戦略本部が毎年策定している「知的財産推進計画」では,「知的財産推進計画2014」において,「アーカイブの利活用促進に向けた整備の加速化」と題して,デジタルアーカイブの整備に国全体で取り組むことが初めて目標として掲げられた。「知的財産推進計画2015」では,分野を超えたアーカイブ間連携の必要性が示され,NDLサーチが文化遺産オンラインをはじめとする他分野の主要アーカイブとの間で連携を進めることが記載された。NDLは立法府に属する機関であるが,国のデジタルアーカイブの施策において重要な役割を担っているため,便宜上,計画に盛り込まれることとなった。さらに「知的財産推進計画2016」では,NDLサーチが国の分野横断統合ポータルとして位置づけられた。しかし,さらなる連携拡張に取り組む中で,NDLサーチは図書館分野を中心に発展してきた経緯から,分野横断統合ポータルとしては機能やメタデータフォーマットの面で課題があることが明らかとなった。この課題を解決すべく,2017年5月に決定された「知的財産推進計画2017」では,NDLが2020年までに国の分野横断統合ポータル「ジャパンサーチ(仮称)」の構築を目指すことが明記された。NDLは現在それに向けて取り組んでおり,より使いやすいポータルとなるよう,求められる機能の検討を行っているところである。

 ジャパンサーチ(仮称)の実現に向けて国全体としてなすべきことは,2017年4月に公開された「我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性」(以下「報告書」)と「デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン」(以下「ガイドライン」)に記されている。これらは,「知的財産推進計画2015」を受けて設置された「デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会・実務者協議会」でとりまとめられたもので,事務局は内閣府,メンバーはNDLのほか,総務省・文部科学省・経済産業省等の関係省庁,国立博物館・国立美術館等の主要な「アーカイブ機関」(コンテンツを保有する機関)等である。

 報告書では,日本におけるデジタルアーカイブの構築と利活用推進の今後の方向性として,分野・地域コミュニティごとの「つなぎ役」(Europeanaのアグリゲーターに相当)が,保有するコンテンツのデジタル化・メタデータ整備を行うアーカイブ機関のメタデータをとりまとめ,ジャパンサーチ(仮称)と共有できるようにすることが示されている。国は,デジタルアーカイブに関わる人材の育成・確保や予算化の検討,技術・法務面に係る業務をサポートするためのネットワーク整備等を通して,つなぎ役とアーカイブ機関の双方を支援していくこととされている。

 ガイドラインは,アーカイブ機関がデジタル情報資源を整備・運用する際に役立つものとなるよう作成された。アーカイブ機関で取り組むべきこととして,メタデータの整備,サムネイル(コンテンツの縮小画像)やプレビュー(音声・動画の部分抽出)の作成,デジタルコンテンツの作成・収集,長期アクセス保証のための方法等が示されている。また,データの共有方法,自由な二次利用を可能にするメタデータ等のオープン化の推進等についても記載されている。特に公的機関が保有する又は公的資金の助成によって作成されたデータは,クリエイティブ・コモンズのCC0又はCC BY(メタデータについてはCC0)を採用することが求められている。一般ユーザや企業等のデジタルアーカイブの活用者,各分野のつなぎ役が留意すべき事項も紹介されている。

 現在,NDLは,日本が保有する多種多様なコンテンツに国内外からアクセスし利活用できるようにすることを目指し,各分野のつなぎ役が運用するデータベースとの連携に向けた調整を進めている。近い将来,日本の知と文化を網羅するプラットフォームとしてのジャパンサーチ(仮称)を実現させるためには,各分野のアーカイブ機関,つなぎ役,関連府省及び産学官をまたいだ連携が不可欠である。国の動きと連携しつつ,さらにこの取組を加速させていく必要がある。

電子情報部電子情報企画課・中川紗央里

Ref:
http://iss.ndl.go.jp/
http://bunka.nii.ac.jp/
http://iss.ndl.go.jp/information/2017/03/29_announce_2/
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/tech/plan.html
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20170516.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/houkokusho_summary.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/houkokusho.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/guideline_gaiyou.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/guideline.pdf