E1957 - 東日本大震災被災地でのシャンティによる移動図書館活動

カレントアウェアネス-E

No.334 2017.10.05

 

 E1957

東日本大震災被災地でのシャンティによる移動図書館活動

 

 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(以下,シャンティ)は,2017年7月をもって,「いわて/みやぎ/ふくしまを走る移動図書館プロジェクト」を終了した。本稿では,プロジェクトのまとめと今後の活動について紹介する。

●シャンティ国際ボランティア会の概要

 シャンティは,1981年に日本で設立された国際協力団体である。1980年,タイに逃れたカンボジア難民が暮らす難民キャンプで,人々の精神的な支えとなるため,移動図書館活動,常設図書館の運営を行ったことが会設立のきっかけとなった。それ以降36年間アジアで図書や図書館を中心とした教育文化支援事業,国内外の自然災害に対する50を超える緊急救援活動を行っている。

●「いわて/みやぎ/ふくしまを走る移動図書館プロジェクト」

 東日本大震災直後に宮城県気仙沼市で地域支援の活動を開始したシャンティは,アジアでの図書館事業の経験を通して,被災地でも図書を通した支援事業を実施できないかと2011年5月上旬に調査を開始した。調査のために訪れた場所の中でも,岩手県の陸前高田市立図書館,大船渡市立三陸公民館図書室,大槌町立図書館は特に壊滅的な状況だった。避難所や市役所なども含め調査を終えたチームは理事会へ事業計画案を提出,6月上旬に承認され,岩手県の山田町,大槌町,大船渡市,陸前高田市の仮設団地などで移動図書館活動を開始することとなった。2011年6月には,岩手県遠野市に岩手事務所を開設し,地元出身の職員を雇用した。

 次は,本を揃え始めた。本は岩手県盛岡市に活動拠点をもつ「3.11絵本プロジェクトいわて」から,絵本・児童書,計5,000冊の寄贈を受けることができた。それ以外にも,「<大震災>出版対策本部」から文庫本や実用書,ブックオフオンライン株式会社,カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社などからも千冊単位で雑誌やコミックなどの寄贈を受けた。本を積み込む移動図書館車は日産自動車株式会社から寄贈の話を受けていたが,納車まで時間がかかるとのことから,最初は軽トラックに本箱を仕立て,簡易の移動図書館車を準備した。その後,2011年11月には正式な図書館車が届き,2011年12月にはメリルリンチ日本証券株式会社より移動図書館車の寄贈を受けた。

 それらの支援を受けて,仮設団地での移動図書館活動,常設の陸前高田コミュニティ図書室の設置・運営,仮設団地の集会所・談話室へのいつでも本を借りられる「文庫」と呼ばれる本棚の設置を開始した。その後,2014年には陸前高田コミュニティ図書室利用者の会である「友の会」を立ち上げ,プランターで花を育てるなどの環境美化,看板作り,貸し出しサポートなど地域の方と協力した図書室運営に力を注いだ。2014年4月より,山田町立図書館とはバーコードシステムを統一し,どちらの移動図書館活動でも本の貸し出し,返却ができる体制を構築した。移動図書館活動では「立ち読み,お茶のみ,おたのしみ」をスローガンとして,車両の隣にテントを張り,日本茶,コーヒーなどの飲み物を提供し,利用者に一息ついてもらえる場所を作った。利用者どうし,あるいはスタッフと他愛のないおしゃべりを楽しんで,たくさん笑って帰ってもらいたいという願いを込めて活動を継続した。このように活動を進める中で,利用者からは,「テレビを見ていても飽きてしまう。本を見ている方がいい。本は飽きなくていい」「移動図書館が来るから退屈しないでいられる。来なくなったらどうしよう」「夜,眠れない時に本をよく読むの」などの声が届けられた。

 岩手県での活動開始より1年後の2012年9月,シャンティは宮城県山元町に事務所を開設し,山元町と福島県南相馬市での移動図書館の運行を開始した。岩手県と同様に,移動図書館車で仮設団地を訪問し,図書の貸し出し,テーブルと椅子を設置してのお茶のみやおしゃべりの場づくりを行った。仮設団地で暮らす住民同士の交流促進や長期化する避難生活の気晴らしになることを目指したものである。

 このようにして2011年以降6年間継続した事業では3県6市町において,移動図書館車での訪問先は延べ297か所,移動図書館の利用者は6万8,116人,貸し出し冊数は14万3,774冊に上る。

●今後について

 各市町の図書館・室の活動が再開されたこと,仮設団地から災害公営住宅に転居あるいは自宅再建する方も増えたことなどから,シャンティは2014年下期に活動収束を決定した。その後,3県6市町の復興状況に合わせ地元の図書館やお話し会グループ,文庫に活動を引き継ぐための準備を進めた。山田町では,町立図書館が活動を引き継ぐことが決まり,継続的な活動のために,移動図書館車と書籍を寄贈した。大槌町では地元のお話し会グループに仮設団地での文庫活動を,大船渡市では,地域のお話し会グループに図書を引き継いだ。南相馬市では市立図書館に移動図書館車両と蔵書を寄贈,2017年3月には,山元事務所での貸し出しと最後の本の回収を終了し,事務所も閉鎖した。2017年7月には陸前高田市の新市立図書館が開館(E1956参照),岩手事務所の閉鎖をもってシャンティとしての活動を終了した。コミュニティ図書室は地元NPOが引き継いでいる。

 シャンティが実施した活動のまとめと記録については,2017年中に活動記録誌を出版予定である。ぜひ手にとっていただきたい。

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会・鈴木晶子

Ref:
http://sva.or.jp/
http://sva.or.jp/wp/?news=23773
http://sva.or.jp/activity/domestic/
http://sva.or.jp/tohoku/
E1956
CA1866