カレントアウェアネス-E
No.36 2004.05.19
E195
公共図書館は生き残れるか?(英国)
4月27日に発行されたレポート『責任者は誰?(Who’s in Charge?)』が英国の図書館界に波紋を呼んでいる。著者のコーツ(Tim Coates)氏は大手書店の経営者を務めた経歴のある人物で,近年は中央政府や地方議会に対して図書館政策のアドバイスを積極的に行っている。
レポートでは,全国規模およびハンプシャー州での公共図書館サービスの実態,財務状況,統計資料などを調査した結果,過去10年で来館者が21%減り貸出も35%減少したにもかかわらず,コストは39%上昇していること,その上資料購入には図書館経費の9%しか使われておらず,10ポンドの図書を提供するのに人件費などで24ポンドのコストがかかってしまっていることなどが明らかになったとし,図書館が納税者のニーズに十分応えられておらず,このままでは2020年頃には図書館はまったく利用されなくなってしまうのではないかとの厳しい見通しを示している。そして,納税者の二ーズに応えるために,資料購入費の3倍増,開館時間の1.5倍延長,施設の改装などを,既定の予算の中で実現する必要があると提言をまとめている。
このレポートに対して,英国図書館・情報専門家協会(CILIP)は即座に,公共図書館サービスは英国全体で人口の60%が利用登録し,毎年3億7,700万冊もの貸出があり,コストは予算の2%に満たない,と反論のコメントを出した。また,図書館は絶版になった図書を含めて管理する役割を法的に負っていることや,もし開館時間を延長すればその分コストがかかるのは避けられないことなどを挙げ,レポートの間違いは図書館を利潤を追求する書店と同列に扱っているその前提にあると指摘している。
Ref:
http://www.rwevans.co.uk/libri/index.htm
http://www.cilip.org.uk/news/2004/040429.html
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/alnews2004/april2004ab/cilip.htm