E1504 - SPARC Japanセミナー2013「再利用とAltmetricsの現在」

カレントアウェアネス-E

No.249 2013.11.21

 

 E1504

SPARC Japanセミナー2013「再利用とAltmetricsの現在」

 

 Open Access Week最中の2013年10月25日,国立情報学研究所において,第3回SPARC Japanセミナー2013「オープンアクセス時代の研究成果のインパクトを再定義する:再利用とAltmetricsの現在」が開催された。5本の講演とパネルディスカッションで構成され,100名余の参加者があった。以下,概要を紹介する。

 初めに,池内有為氏(筑波大学大学院)が登壇した。研究データの公開と再利用について,研究の信頼性・透明性の担保や,政府や研究助成機関等によるデータ公開義務化等を推進要因に挙げながらも,その実現にはまだ様々な障壁が存在しているとし,大学図書館による研究者支援に期待が高まっていると述べた。同氏は,英国の大学図書館による研究データ管理支援について,今夏行った訪問調査(E1481参照)の結果を紹介し,今後日本の大学図書館が支援に乗り出す場合,英国のような先行事例に学びながら,自機関の研究者のニーズを的確に把握し,それに照らし合わせてポリシーと計画を立てることが重要であり,データリポジトリの構築については外部サービスの活用も検討すべきだと提言した。

 次に,多様な研究成果の共有プラットフォーム“figshare”の創設者ハーネル(Mark Hahnel)氏が登壇した。ハーネル氏は,研究者は,論文にとどまらず,ビデオやデータセット,図表といった多様な研究成果物をすべてオープンにすることで,自身の研究のインパクトの大きさを示すことができると述べた。その上で,膨大で多様な研究成果物のオープンアクセスを進めるには図書館の支援や啓蒙活動が必要であること,成果物のインパクトを測定するには被引用数やaltmetricsのような新たな方法があるが,研究データのインパクト測定方法の標準化は発展途上であることを指摘した。そして研究の内容及び成果のオープン化で次世代の研究はより効率的に行えると締め括った。

 続いて,「論文やデータセットなど様々な研究成果物の影響を,ソーシャルメディアの反応を中心に定量的に測定する手法」であるaltmetricsの提唱者プリーム(Jason Priem)氏が登壇した。Webの登場を印刷機の発明に次ぐ学術コミュニケーションの第2の革命と位置づけ,論文の流通のみでなく,データの収集とその分析,ストーリーテリング,対話についてもWebベースに移行することで,Webの特性を最大限に活用した新たな学術コミュニケーションが可能になるとした。その上で,これらのインパクトを可視化するには被引用数だけでは不十分で代替的指標が必要であると指摘し,同氏が共同創設者の一人であるaltmetricsサービス“ImpactStory”は,すべての科学者の,すべての生産物の,すべてのインパクトを包括的に把握するオープンデータソースとなることを目指しており,altmetricsにより学術コミュニケーションにおけるネットワーク志向のフィルタリングが可能になると述べた。

 4人目の登壇者,坊農秀雅氏(ライフサイエンス統合データベースセンター)は,生命科学分野の大規模データ利用技術開発の現状について報告し,今後の課題としてデータ流通を促進するための取り組みが必要と指摘した。

 最後に登壇した大園隼彦氏(岡山大学附属図書館/デジタルリポジトリ連合)は,機関リポジトリへのaltmetrics導入について事例報告を行った。学内刊行誌の例で見る限り,コンテンツのダウンロード数とaltmetricsスコアは必ずしも相関関係にないと指摘した上で,多様な指標を表示することの意義や,コンテンツ増加のきっかけとなることへの期待を述べた。

 続いて行われたパネルディスカッションでは,林和弘氏(科学技術・学術政策研究所)をモデレータとしてパネリストとフロアとの活発な意見交換が行われ,今回のテーマに対する関心の高さが窺えた。

 学術情報を取り巻く環境の変化が続く中,研究者がその動向に対応しながら研究パフォーマンスを上げるには,情報の提供や研究環境の整備等,図書館の果たす役割は大きいと考えられる。本セミナーではオープンアクセスを礎にした将来の研究のあり方についての議論が展開されたが,図書館はこのような中長期的な見通しに目を配りながら状況の改善に積極的に関与していくことが必要だろう。

(鹿児島大学附属図書館・西薗由依)

Ref:
http://www.nii.ac.jp/sparc/event/2013/20131025.html
http://togetter.com/li/581824
http://figshare.com/
http://impactstory.org/
http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-STT134J-2.pdf
http://keitabando.org/2013/09/29/drf45altmetrics/
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/Index.e
E1481