E1266 – ディスカバリサービスの様々な関係者の権利と義務を整理する

カレントアウェアネス-E

No.210 2012.02.23

 

 E1266

ディスカバリサービスの様々な関係者の権利と義務を整理する

 

 2012年1月30日付けで,全米高度情報サービス連合(National Federation of Advanced Information Services:NFAIS)が,ディスカバリサービス(CA1727参照)に関するガイドライン“Code of Practice: Discovery Services”のドラフト版を公開した。NFAISは,1958年に設立された非営利団体で,Elsevier社等の学術出版社や米国化学会(ACS)等の学協会に加えて,OCLC,国立医学図書館(NLM),英国図書館(BL)といった多様な情報サービス機関が加盟している。

 ディスカバリサービスは,その導入機関の内外から集めたメタデータやフルテキストをもとに事前に作成した統合インデクスを単一の検索ボックスから検索できるようにしたサービスとされている。その統合インデクスの作成においては,コンテンツを所有する出版社や配信を仲介するコンテンツアグリゲータ等との契約が必要になる場合もある。このように様々な立場の者が関わるという特徴を持つディスカバリサービスが孕んだ論点を整理して,その契約に際し役立つ資料とすること等が同ガイドラインの目的となっている。

 ガイドラインの本論部分はディスカバリサービスに関する「論点と懸念」及び「権利と義務」という節に分かれている。

 まず,ディスカバリサービスの論点と懸念については,「コンテンツアグリゲータがその権利がないにも関わらずディスカバリサービスにコンテンツを提供してしまうこと」や「ユーザ認証の不備によって,ディスカバリサービスの導入機関がアクセス権のないコンテンツを利用してしまうこと」といった権利関係のものにはじまり,「導入機関が,統合インデクスの収録範囲や正確性・最新性,検索結果のランキングアルゴリズムについて明確に把握していないために,ディスカバリサービスの検索結果の価値を正しく判断できないこと」や「ディスカバリサービスを通じて提供されることによってコンテンツ所有者のブランドが意識されなくなり知名度が低下する可能性があること」等の問題点が挙げられている。

 次に,この論点整理を受けて,ディスカバリサービスの関係者が享受できる「権利」と果たすべき「義務」についてまとめられている。関係者として,コンテンツ所有者,コンテンツ提供者,ディスカバリサービス,導入機関の4者が挙げられ,それらが16項目の権利及び義務とどのように関わっているかが一覧表として整理されている。例えば,「契約上合意されたコンテンツのみを対象とする」は,コンテンツ提供者とディスカバリサービスにとっては義務であり,他の2者にとっては権利であるとされている。また,「ランキングアルゴリズムを明らかにする」はディスカバリサービスにとってのみ義務とされている。

 巻末の付録では,ディスカバリサービスが収録した主題別データベース等の全ての情報を利用できる場合でないかぎり,それらのデータベースを完全に置き換えてしまうものではないと述べ,その理由として,ディスカバリサービスに提供していない情報の存在や専門分野に特化したインデクシング等を挙げている。

 このガイドラインに関する意見が2012年3月16日まで募集されている。

Ref:
http://www.nfais.org/
http://info.nfais.org/info/codedraft1312012.pdf
http://info.nfais.org/info/codedraftintroduction.pdf
CA1727