カレントアウェアネス-E
No.208 2012.01.19
E1253
小学生の“調べる”をお手伝い―国際子ども図書館子どもOPAC
国立国会図書館(NDL)は,2012年1月6日,小学生向けインターフェイスの蔵書検索システム「国際子ども図書館子どもOPAC」(以下,「子どもOPAC」という)の本格稼働を開始した。国際子ども図書館(ILCL)のホームページや国立国会図書館キッズページなどから利用できる。検索対象の初期設定は,ILCLの児童向け閲覧室である「子どものへや」「世界を知るへや」の開架資料だが,トップページで検索対象を切り替えると,ILCLの全所蔵資料も検索できる。検索結果のダウンロードも可能である。
子どもOPACは,「国立国会図書館サーチ」(E1087参照)のシステムの一部として開発された。既存の児童向けOPACや関連研究を参考に検討し,識字や各種知識の習得途上にある児童が無理なく使えるよう,以下のような工夫を盛り込んでいる。
- 学校で図書館を本格的に利用する小学校高学年を想定した標準の検索メニュー「言葉を入れてさがす」の他に,漢字が少なく,検索語の種類や本の種類を順に選ぶ形で検索できる「(にゅうもんへん)ことばをいれてさがす」メニューを設けた。また,検索語の入力が困難な児童向けに,テーマを選んでいくと目的の情報にたどりつく検索メニュー「本をテーマからさがす」も設置した。これら3つの検索メニューはトップページで選択できる。
- 検索経験の浅い児童は,検索システムに適した検索語や検索条件を選ぶのが難しく,検索結果が0件ヒットや大量ヒットになってしまう傾向がある。児童を効率よく目的の情報に導くために,0件ヒットや大量ヒットした場合には,適切な再検索を促す画面に遷移する機能を設けた。また,必要な操作を児童に分かりやすく伝えるために,セリフ形式の対話型ナビゲーションを採用した。
- 児童に親しみを持ってもらい,図書館や本に興味を持ってもらうために,案内役として,羊の男の子「ヨウくん」やヨウくんのお姉ちゃん「ライちゃん」などのキャラクターを配置した。
図書館の児童サービスは,図書館員が児童と本をつなぐ活動を行うものであり,児童向けOPACもそうした児童サービスの一部だと考えている。子どもOPACは,図書館員をはじめとする大人が児童のOPAC利用を支援し,図書館の使い方を教えることも想定して開発を行った。例えば,「件名」や「請求記号」など,児童に知ってほしい図書館用語はやさしい言葉に直さずに用い,児童に用語や使い方を教える際に参照できるよう,「使い方」画面に丁寧な解説をつけた。また,ILCL外での利用も想定し,公共図書館や学校図書館の利用を促す「この本を読みたい時は?」画面を設けるなどした。
子どもOPACの開発に当たっては,わが国における児童向けOPACのモデルケースの一つとなることも目指した。既存の書誌データで可能な範囲などの制約から,子どもOPACでは,絵本や児童文学に関する読書案内機能など,児童向けOPACにあると良い機能を全て盛り込めた訳ではないが,開発担当者としては,そのことでかえって公共図書館などでも実現可能な現実的なモデルケースになったのではないかと考えている。
ILCL館内では,2012年1月6日から,児童向け閲覧室での提供を開始した。来室した児童は,楽しそうに,また予想以上に上手にOPACを使いこなしている。ILCL外でも,OPACの使い方を教える際に,また,ILCLの児童向け閲覧室で提供されている資料を知る際に活用されることを期待している。
(国際子ども図書館児童サービス課)
Ref:
http://iss.ndl.go.jp/children/top
http://www.kodomo.go.jp/kids/research/index.html
E1087