E1196 – 米国図書館協会(ALA)の2011年の年次大会

カレントアウェアネス-E

No.197 2011.07.28

 

 E1196

米国図書館協会(ALA)の2011年の年次大会

 

 米国図書館協会(ALA)の2011年の年次大会(E1074参照)が,2011年6月23日から28日にかけて,ルイジアナ州ニューオーリンズ市で開催された。ALAは,2006年の年次大会を,2005年のハリケーンで大きな被害を受けた同市で開催しており(E597参照),5年ぶりの開催となった今回の大会では,被災した公共図書館の復興プロジェクトの報告等も行われた。以下に,Library Journal誌での特集の記事を基に,様子の一部を紹介する。

 大会総会のオープニングスピーチは,性的マイノリティのための活動“It Gets Better”を行っているサビッジ(Dan Savage)氏により行われた。“It Gets Better”は,性的マイノリティの少年がいじめを苦に自殺したという事件を受け,サビッジ氏らが自身の過去の経験や現在の生活を語る内容の動画をYouTubeに投稿したことから始まった運動で,オバマ大統領を始めとする著名人もメッセージ動画を登録している。サビッジ氏は,自殺した少年も,性的マイノリティに関する情報を得られていたら希望を持てたかもしれないと述べ,情報と情報へのアクセスが重要であることを訴えた。

 図書館・情報技術協会(LITA)による,新技術の動向に関する討論会には,多くの観衆が集まった。議論の中心はモバイル機器用のアプリで,パネリストからは,「特定のプラットフォームに依存することになるという問題点があるが,現時点ではモバイル機器用ウェブサイトよりも優勢である」「マーケティング戦略の中核となるものであり,先進的な印象を与え,図書館のブランドにもなりうる」等の見解が示された。また,電子書籍に関し,ウェブを利用したソーシャルリーディングの進展や,書籍の概念の再定義の可能性についての発言もあった。

 電子書籍に関しては,図書館向けのベンダーによる新サービスの発表等が行われた。電子書籍貸出システム大手のOverDrive社と,新たに参入する3M社がそれぞれ行ったデモに対して,ある図書館員は,競争による価格低下や機能改善は望ましいが,複数のプラットフォームの併存により利用者にとって利用方法が分かりにくくなる点が悩ましいとコメントしている。また,Internet Archiveが2011年2月から開始した,図書館内での電子書籍貸出プログラムの参加館が1,000館を超えたことも発表された。

 大会期間中には,各種の表彰も行われた。Library Journal誌等による「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたワシントン州キング郡の公共図書館は,パートナーシップや信頼に基づくコミュニティとの相乗効果等が評価されての受賞となった。その他,「パラプロフェッショナル・オブ・ザ・イヤー」から「パラライブラリアン・オブ・ザ・イヤー」へと改称された司書補助職の表彰や,都市図書館協議会(Urban Libraries Council)による,先進的モデルとなる11の公共図書館の発表も行われた。

 大会にあわせてALA会長が交代し,2011-2012年期は,ラファエル(Molly Raphael)氏が会長となった。

Ref:
http://www.alaannual.org/
http://connect.ala.org/node/137339
http://www.libraryjournal.com/csp/cms/sites/LJ/Community/ALA/index.csp
http://www.libraryjournal.com/lj/community/ala/891135-448/ala_annual_2011_opening_session.html.csp
http://www.libraryjournal.com/lj/community/ala/891161-448/ala_annual_2011_top_tech.html.csp
http://www.libraryjournal.com/lj/mobilemoverflow/891148-460/ala_annual_2011_overdrive_3m.html.csp
http://www.libraryjournal.com/lj/community/ala/891156-448/ala_annual_2011_king_county.html.csp
CA1725
E597
E1074