E1179 – カリフォルニア大学が予算削減に対して取る共同化戦略

カレントアウェアネス-E

No.194 2011.06.09

 

 E1179

カリフォルニア大学が予算削減に対して取る共同化戦略

 

 2011年5月,米国カリフォルニア大学の全学図書館・学術情報諮問委員会(Systemwide Library and Scholarly Information Advisory Committee)が,図書館計画タスクフォース(Library Planning Task Force)による中間報告を発表した。このタスクフォースは,カリフォルニア大学の執行副総長兼学事長であるピッツ氏の要請によって2010年8月に組織されたもので,同大学の教員や図書館長,学外有識者等から構成されている。

 今回の中間報告では,今後6年間にカリフォルニア大学図書館が直面する予算削減等の3つの課題について述べられ,対する4つの戦略とそれらを3段階(3年間)のフェーズで実行する計画が提案されている。

 3つの課題とは以下のものである。

  • カリフォルニア州予算の削減等によって,2009-2010年には2億4,400万ドルだったカリフォルニア大学図書館の年間予算は,2016-2017年においては1億9,200万ドルとなり,約5,200万ドル(21%相当)減少する見積もりである。
  • 学術出版物の価格高騰によってカリフォルニア大学図書館の購買力は1,700万ドル相当減少する見積もりである。上述の5,200万ドルと合わせた6,900万ドルという減少額は,デービス校,アーバイン校,サンディエゴ校の3図書館の年間予算の合計に相当する。
  • 今後5~7年の間にカリフォルニア大学図書館の書架スペースは限界を迎えると見られる。

 報告では,これらの課題に対して,(1) 10キャンパスに分散する大学図書館全体のサービス共同化を拡大,(2) 学術出版物の価格上昇に対する,学術情報流通システム変革のための教員による努力をサポートすること,(3) 図書館収入源の多角化,(4) 立案・協議・意思決定の枠組みの改善,という4つの戦略を提案している。

 中でも,(1)「サービス共同化の拡大」という戦略が最も有望だとしている。カリフォルニア大学図書館では過去35年の間に,総合目録Melvyl,保存書庫,資料の購入,キャンパス間ドキュメントデリバリー,電子リソースの契約,カリフォルニア電子図書館(CDL)といった様々なサービス・業務を共同で行ってきており,年間予算を1億1,400万ドル節約してきたという。これら既存の共同化に加えて,現在計画されている「カリフォルニア大学コレクション:21世紀以降のためのコンテンツ」,次世代Melvyl,次世代テクニカルサービス等のプロジェクトを,戦略的に拡大し,注意深くマネジメントしていくことが肝心であるとしている。

 そのためには(4) に挙げた「立案・協議・意思決定の枠組みの改善」が求められるという。特に,図書館長協議会(CoUL)と副学長協議会(COVC)の間に明確な意思伝達チャネルを設けて,各キャンパスの図書館の決定を確実に周知させることや,既存のサービス共同化のポートフォリオを評価するプロセスを作り,大学のニーズとの整合性や予算投下の妥当性を確認するようにすること等が必要であるとしている。

 同報告は,サービス共同化を中心としたこれらの戦略を3年間で実行し,2011-12年に1,500万ドル,2012-13年に2,500万ドル,2013-14年に1,200万ドルと順に削減していくことによって目標の5,200万ドルという額を達成するという行動計画の提案で締めくくられている。

Ref:
http://libraries.universityofcalifornia.edu/planning/taskforce/interim_report_package_2011-05-09.pdf