E1090 – 教育現場に立つ「ブレンディッド・ライブラリアン」

カレントアウェアネス-E

No.178 2010.09.02

 

 E1090

教育現場に立つ「ブレンディッド・ライブラリアン」

 

 2010年8月2日付けのChronicle of Higher Education紙(ウェブ版)に,「ブレンディッド・ライブラリアン」(Blended Librarian)という見慣れない言葉が掲載され,このブレンディッド・ライブラリアンによる大学での情報リテラシー教育が紹介された。

 ブレンディッド・ライブラリアンは,2004年に,米国フィラデルフィア大学ポール・J・グットマン図書館のベル(Steven Bell)氏とペンシルバニア州立大学のシャンク(John Shank)氏が提唱した大学図書館員像である。この両氏の定義によると,ブレンディッド・ライブラリアンとは,伝統的な図書館員のスキルと情報技術に関するハード/ソフト両面での技能,教育工学等に関する知識を適切に結びつけ,大学での教育活動の現場で活躍できる大学図書館員であるという。

 ベルとシャンクの両氏がLearningTimes Networkから援助を受け2004年に開設したウェブサイト“The Blended Librarians Online Learning Community”は,現在4,000人以上のブレンディッド・ライブラリアンが登録しており,彼らのウェブ上での活動の拠点となっている。このサイトには,彼らのコミュニティとして果たすべき次のようなビジョンが掲げられている。

  • 学生のために,図書館員,教員,大学職員らがよりよい協力のあり方を見出すためのコミュニティであること。
  • ディスカッションやウェブキャストを通じて,継続的な知識と技術の向上を行えるようなコミュニティであること。
  • デジタルの学習教材の開発を通じて,教員の行う授業にIT技術,図書館リソース等を取り込む手助けを図書館員が行い,図書館員と教員との関係を変えるようなコミュニティであること。

 Chronicle of Higher Education紙の紹介する,ニューヨーク州立大学バッファロー・ステート・カレッジ校のマクブライド(Mark McBride)氏は,「急速に変わる物事に対して図書館員自身もそれに合わせて変わらなければならない」と語っており,いずれのビジョンからも,積極的に教育現場へ参加しようとする変化への意志を読み取ることができる。

 マクブライド氏が担当している情報リテラシー教育“LIB300: Advanced Library Research”は,批判的な思考と評価スキルとともに,上級の図書館 調査スキルを学生に教えるコースである。コースの目標として,必要とする 情報の特徴とその範囲を判断することや,情報とその信頼性について批判的に評価することができること,図書館サービスとリソースを効果的に利用し,生涯学習のリソースとしての図書館の価値を理解できること等が挙げられており,単に学生が受動的に講義を受けるものではなく,ワークショップのように実践的な内容となっているという。

Ref:
http://chronicle.com/blogPost/A-Blended-Librarian-Talks/25938/
http://www.acrl.org/ala/mgrps/divs/acrl/publications/crlnews/2004/jul/blendedlibrarian.cfm
http://blendedlibrarian.org/
http://sites.google.com/site/lib300site/