カレントアウェアネス-E
No.165 2010.02.03
E1017
オランダ王立図書館,2010‐2013年の戦略計画を発表
オランダ王立図書館(KB)はこのほど,2010年から2013年までの戦略計画(E549参照)を作成し,公表した。KBは,「人と情報を結びつける(bring people and information together)」をミッションとする。このミッションの下,デジタル化の影響を受けて情報提供のあり方が激変する中でKBが影響力を持つために,「オランダの全ての出版物及びオランダについて書かれた全ての資料に,誰でも,どこからでもアクセスできるようにする」「オランダの(学術)情報インフラにおいて中心的な役割を担う」「国内的,国際的に,デジタル情報への永続アクセスを促進する」というビジョンを掲げている。さらにこのビジョンを達成するため,5つの戦略的優先事項を挙げている。
1つめが,「オランダの全ての出版物,オランダについて書かれた全ての資料に誰もがアクセスできるようにする」である。この実現のため,KBは今後,大規模な電子図書館の構築に取り組む。この電子図書館では,1470年以降オランダで刊行された全ての出版物,オランダで刊行された全てのデジタル出版物,オランダについて書かれたデジタル出版物の一部が提供される予定で,この壮大な計画に向けて,資料のデジタル化や資料提供のための著作権に関する関係者との交渉がスタートする。
2つめが,「国内の情報インフラを改善する」である。現在は各図書館に断片化している情報インフラを整理し,誰もが,オランダの学術図書館や公共図書館の所蔵資料全てにアクセスできるよう,単一の,相互に接続された情報インフラを作ることを目指していくという。
3つめが,「デジタル情報の長期保存を保証する」である。KBはデジタル情報の長期保存の研究に1990年代半ばから取り組み,国内のみならず,国際的にも重要な役割を果たしてきた。今後も積極的にこの研究に取組み,より大量のデジタル情報を保存できるようなシステムの開発を計画している。
4つめが,「コレクションを維持し,公開し,強化する」である。ここでは,印刷からデジタルへの収集資料のシフト,オランダの歴史・文化・社会に関する資料の拡充,コレクション中の重複資料の排除,といった方向性が示されている。特に今後は,「紙資料とデジタル資料は相互に補強し合う」という観点から,コレクションの整備が進められる。
5つめが,「KBを挑戦的な組織にし,魅力的な職場にする」である。先述の電子図書館を実現するには,組織とスタッフの変化が必要であるとの考えの下,組織構造改革,スタッフのスキル開発が推進される。
本戦略計画で特に目を引くのは,その具体性である。序文に「われわれは今後4年間で達成すべき目標をできる限り具体的に設定した」とあるとおり,上記の5つの戦略的優先項目でも,それぞれを実現した場合のKBの姿が「2013年のKB」として示されている。それは例えば,「インターネットで検索して,KBのウェブサイトが提供している情報へ到達する利用者数が,2013年に年間2,000万人になる(2009年は年間500万人)」というように,非常に明確である。その他,今後の予算構成の概略について,4年間分の見通しを示している点も注目される。