カレントアウェアネス-E
No.165 2010.02.03
E1015
スペインの国立電子図書館,著作権保護期間中資料の提供開始
スペイン国立図書館(Biblioteca Nacional de Espana)の電子図書館「ビブリオテカ・デジタル・イスパニカ」(Biblioteca Digital Hispanica:BDH)は2008年に開始され,コンテンツ数は約17,500件である。これまでは著作権の切れた資料のみを扱っていたが,今回初めて,著作権保護期間中の資料の提供を開始した。
この提供は,スペイン国立図書館とスペイン出版社組合連合(Federacion de Gremios de Editores de Espana) が2008年に開始した共同プロジェクト「エンクラーベ」(ENCLAVE)によるものである。エンクラーベは,著作権保護期間中の資料を電子図書館に取り入れたモデルを示すこと,そして資料のデジタル化とその利用促進を目的とし,とりわけ同種のサービスを考えている図書館に対してはその先行事例となることを狙いとしている。
BDHでは,タイトル,著者名,資料の形態,出版年等の基本的な情報から検索できるほか,資料本文のキーワード検索も可能となっている。利用者はBDHで検索し,その検索結果から出版社あるいは出版社の委託先機関固有のウェブサイトへ遷移することになる。利用者はそこで資料の内容の一部を読んだり,購入することも可能となっている。
今回公開された資料群は,出版社組合連合に加盟し同プロジェクトへ参加している90の出版社が提供している。出版社からBDHへのデータ提供は,それぞれが国立図書館へ提供するのではなく,原則として出版情報流通機関(Distribuidor de informacion del libro espanol en venta:DILVE)がその任を負っている。すなわち各出版社が出版情報流通機関に対して,本のカバー画像,内容紹介,資料の一部分などのデータを提供し,DILVEがフォーマットを統一して国立図書館にデータを送るという流れである。BDHの検索結果には,タイトル,著者名,出版者,出版年などの国立図書館が作成したメタデータと,カバー画像,内容紹介,資料の一部分,ISBN等のDILVEからのデータが統合されて表示される。
エンクラーベは2010年1月20日から第2期事業参加者の募集を開始しており,プロジェクトに提供する資料のデジタル化やフォーマットの変換を行うために,2010年度予算14万ユーロから一部を参加出版社に対して支援すると発表している。
(関西館図書館協力課・菊池信彦)
Ref:
http://www.bne.es/es/Catalogos/BibliotecaDigital/enclave/
http://www.bne.es/es/Catalogos/BibliotecaDigital/enclave/Convocatoria/
http://bibliotecadigitalhispanica.bne.es/R/
http://www.federacioneditores.org/
http://www.dilve.es/dilve/dilveweb/index_dilve.jsp