E1003 – 次世代の図書館システムをデザインするOLEプロジェクト

カレントアウェアネス-E

No.163 2009.12.16

 

 E1003

次世代の図書館システムをデザインするOLEプロジェクト

 

 2008年8月,アンドリュー・メロン財団の助成のもと,サービス指向型アーキテクチャに基づく図書館システムを設計する1年間のプロジェクト“Open Library Environment(OLE) Project”が開始され,2009年10月に同プロジェクトの最終報告書が公開された。なお,プロジェクトには,米国の大学図書館,カナダ国立図書館・文書館(LAC),オーストラリア国立図書館(NLA)などが参加し,米国デューク大学図書館が中心的役割を担っていた。

 プロジェクトでは,300以上の図書館,教育機関,専門組織,企業の協力の下で,次世代型の図書館システムの設計が図られている。OLEのシステム設計では,商用システムとの違いが意識されており,主要な特徴として以下の4点が挙げられている。

  • 印刷物主体のワークフローからの脱却
  • 図書館資料の質的変化や学術情報への新しいアプローチの反映
  • 他の商用システムとの統合についての適応性
  • 各機関ごとのニーズに対応するための修正の容易さ

 OLEのシステム設計は,既存の統合図書館システム(ILS)の改良という範囲を超えた,資料の収集と提供以上の役割を見据えており,他のシステムとの連携を可能にして,新しいサービスを展開するものである。OLEでは,図書館の業務をその機関の組織構造および研究プロセスの内部に位置づけており,図書館が研究者の研究プロセスにおいて主要な役割を担うためのサポートを行うという定義付けの下でシステム設計を行っている。

 報告書に描かれている参照モデル(Reference Model)によると,システムは上位レベルの複数のOLEコンポーネントから形成されており,各コンポーネントはいくつかのワークフローやプロセスから作られている。例えば,OLEコンポーネントの一つである「記述エンティティ」には,メタデータの取得,新規作成,修正,削除,公開というプロセスが含まれている。そのほか,サードパーティが開発・提供するものを再利用することができるサードパーティコンポーネント,OLEプロジェクトとサードパーティの両者が提供するコンポーネント,リソース・コレクション・人・組織・サービスといったエンティティ,各コンポーネントを管理・連結させる働きを有するミドルウェアなどが主要な構成要素となっている。

 OLEプロジェクトでのシステム設計は完了し,次なる段階に進むべく,新しいプロジェクト“Kuali-OLE Project”が動き出している。米国インディアナ大学が主導するこのプロジェクトでは,前段階となるOLEプロジェクトの設計や提言を土台として,ソフトウェアの開発・構築を行っていくとのことである。また,2012年半ばにはプロジェクト参加機関のILSをOLEのシステムにリプレースすることも可能になるのではという期待も示されている。

Ref:
http://oleproject.org/
http://oleproject.org/wp-content/uploads/2009/11/OLE_FINAL_Report1.pdf
http://www.kuali.org/ole
http://www.libraryjournal.com/article/CA6707828.html