カレントアウェアネス-E
No.12 2003.04.02
E070
開発途上国に対する電子ジャーナル提供の現状
現在,国際的な情報格差を縮小するために,出版社等の多くの機関が,開発途上国に対して無料もしくは安価に電子ジャーナルを提供する試みを行っている。そうした試みの現状を把握するために,「科学出版物の入手のための国際ネットワーク(INASP)」(注)が,2002年夏,電子ジャーナルの出版機関を対象に質問票調査を実施した。その最終レポート『電子ジャーナル:開発途上国アクセス調査』が,INASPのホームページ上で公表されている。
それによると,回答機関のうち63.5%が,開発途上国に電子ジャーナルを提供する何らかの試みを行っていた。その多くは複数の出版社等が共同実施するイニシアチブに参加しており,同様のイニシアチブはいくつも存在していた。また,未実施機関も含め大多数の機関が,開発途上国への電子ジャーナルの提供に興味をもっていた。同レポートでは,共同イニシアチブは,自社単独の試みよりも出版社側の費用負担が抑制されるため,未実施機関がこうした試みに踏み出す良い機会を与えているとまとめている。
(注)国際科学会議が設立した協力組織で,出版流通が未発達な国を対象に,情報流通の促進を使命とした様々な活動を行っている。