CA977 – ミニテルとフランスの図書館 / 河野麗子

カレントアウェアネス
No.184 1994.12.20


CA977

ミニテルとフランスの図書館

フランスのミニテルは,世界でも最も成功したビデオテックス・システムだと言われている。最初ミニテルは,電子電話帳サービスとして始まったが,現在では様々なサービスが提供されている。利用者は,各家庭で端末をたたいて時報・天気予報はもちろん,ショッピング・旅行情報・名所の観光案内等を知ることができ,ゲームやチャットライン(コンピュータを介した会話)も楽しめる。また,医療関係のデータベースや図書館のOPACにもアクセスすることができる。

1994年初め現在,フランスでミニテルを利用している人は650万人にのぼるという。この成功の背景には,政府がネットワークの発展に力を入れ,ミニテルの端末が無料で各家庭に配られたこと,端末が扱いやすく,キーボードに慣れていない人にも容易に操作できたこと,それに料金の払いやすさがあった。前もってどのサービスを使うか決めておく必要はなく,ミニテルを使用した分の料金は通常の電話料金とともに請求される。電話会社が利用者から料金を徴収した後,サービス提供者がその一部を情報料として受取るという料金システム(“キオスク”料金システム)をl984年から導入し,これを機に,サービスの多様化に拍車がかかった。

フランスでは1984年に,オンラインにより図書の在庫情報を提供する(わが国の『日本書籍総目録』に相当する)販売書誌Electreが出されたが,1986年にはそれがミニテルを通じて検索できるようになった。さらに89年には本に関する多くのサービス,例えばミニテルを通じて本を注文し,48時間以内に家に配送してもらうといった販売サービスも登場した。また,抄録や著者のプロフィール,文学賞など各賞の受賞者を収録したデータベースも登場した。

図書館では,リヨン,グルノーブル,アミアン,アルル,ガン,シャモニーなどの市立図書館やポンピドーセンター公共情報図書館,ビデオテック・ド・パリ,ラ・ヴィレット科学産業都市メディアテックなどがOPACを公開しているほか,全国逐次刊行物総合目録(CCN)や図書総合目録へのアクセスも可能である。

一方,現在建設中のフランス図書館(BDF)はハイテクを駆使した最先端の図書館になる予定である。OPACの提供はむろんのこと,電子的に作成されたテキスト,あるいは印刷物からスキャンして作成されたテキスト等の電子的な資料を,ミニテル等のネットワークを通じてオンラインで提供する計画も進められている(CA910参照)。BDF建築作業の進行状況などに関する情報を提供することは,すでに始まっている。目録情報ばかりでなくフルテキストが提供され,ミニテル等を通じて容易にアクセスできるようになれば,今までBNの閉鎖性に悩まされてきた世界中の研究者から利用が殺到するだろう。許容量を超える利用をどうするかは今後の課題となると思われる。

なお,ミニテルネットサービスは,日本では三井情報開発がフランステレコムと提携し,1989年5月よりサービスを開始している。

河野麗子(かわのれいこ)

Ref: Kessler, Jack. French libraries online: electronic Hachette ? Electron Libr 12 (2)79-88, 1994
Lanoue, Margaret. The French videotex system, Minitel: its uses and applications in libraries. Electron Libr 12 (2) 89-95, 1994