カレントアウェアネス
No.179 1994.07.20
CA952
ライブラリー・ショップ−図書館のセールス・ポイント−
最近の博物館において,ミュージアム・ショップの占める位置は決して小さくない。人々は今見てきたばかりの展示品の写真やレプリカを買い求めることによって,博物館が伝達しようと意図した情報をしっかり受けとめ確認する。博物館訪問の記念品として,その人の心の中に大きな印象を後々までも残すその意味で,この「情報産業」は,博物館の本質的な存在意義にも関わる活動として認識されてきている。
図書館においてはどうか。無料原則の文化施設にふさわしくない商業主義的活動とされているのか,なじみが薄い。そのくせ一頃,文具やグッズを売って,その収益を逼迫した財政に当てたらどうかという議論があった。
外国の公共図書館では,徐々に様々な販売活動が試みられているが,特に,こうした活動に力を入れる理由は,収益を財政に当てるためというより,図書館のPR活動として意義付けしていることが興味深い。PRは,広報紙を出すことに限らないという一例である。
店もそうであるが,図書館に人を呼び込むためには,宣伝することが重要なことだといえよう。企画段階では,店の名前やロゴを募集し,販売する段では,利用者に親しまれる商品を並べることにより,店の宣伝のみならず,図書館の宣伝にしようという魂胆である。本,特に古本はとりわけ大きなマーケットで,図書館の宣伝に一役買っているし,紙,鉛筆といった実用的な文具は,利用者がうっかり忘れたときに買い求めることができよう。また,シンシナティの図書館では色とりどりのカードが,リッチランド郡の図書館では手作りのガラス細工が利用者の目を楽しませている。美術館のショップや書店のレジまわりからアイディアを拝借するなら,しおり,Tシャツ,人形,伝統工芸品,キャンディやカラフルペンなども商品として考えられる。地域の実状にあわせて,回りの小売店と競合しない「名物」を優先的に考え出せば,それも一つの売りとなる。もちろんマーケティングは必要であるし,最初からあまり高価なものに手を出さないよう注意されたほうがよい。
簡単になじまないかもしれないが,積極的に地域と関わっていこうという念入りな準備と努力の結果,ささやかな増収と,図書館の知名度をあげることができたら儲けものであろう。
河合美穂(かわいみほ)
Ref: Strauch, Katina. Selling points. Wilson Libr Bull 68(6) 45-47, 1994
梅悼忠夫 メディアとしての博物館 平凡社 1987. 269p