CA940 – イタリアにおける図書館ネットワークの構築 / 奥山裕之

カレントアウェアネス
No.177 1994.05.20


CA940

イタリアにおける図書館ネットワークの構築

イタリアではこれまで10年以上にわたり,文化財・環境財省の主導で全国図書館ネットワーク(Servizio Bibliotecario Nazionale: SBN)の構築が進められてきた。このネットワークは,国立・公共・大学など各種の図書館の蔵書総合目録を作成し,さらに新規の目録データ入力をオンラインにより共同で行うことに主たる目的を置いている。

ネットワーク化を実現し,国内の図書館サービスを再編成することを目指すプロジェクトがSBNの構想の端緒としてスタートしたのは,1979年にさかのぼる。当初は特に資金が不足し,また地方財源に多くをたよっていたこともあって,各図書館が個別に,あるいはグループを作って機械化を進めるという手法が取られた。またプロジェクトは,ネットワークに参加する各図書館の自発的な協力を運営の基本とすることを方針として打ち出した。

そして1986年以降,ローカルレベルの各システムを中央のシステムに接続するための基盤整備が進展する。文化財・環境財省所轄の図書館総合目録・書誌情報中央研究所(ICCU)が,中央の総合目録システムインディーチェ(Indice)を開発し,さらにDBMSの異なるシステム間の接続に関する規格の設定,通信ソフトや共通の目録フォーマットの開発なども行ったのである。この時期にプロジェクトへの国からの支出が実現し,しかも後には短期の補助金の扱いから恒常的な予算項目へと格上げされるといった事情が,SBNの急速な進展に大きく寄与した。

1992年6月には,フィレンツェ・ローマの両国立中央図書館やその他の図書館のシステムがインディーチェに接続され,SBNが本格的に稼働し始めた。その後,ラヴエンナ・ヴエネツィア・ミラノの各地域のシステムが次々に接続し,1993年8月現在,4つの国立図書館をはじめ,104機関がSBNの傘下に入っている。

インディーチェに接続した各機関は,まずそれぞれのシステムに蓄積された図書・雑誌の目録データを中央のシステムに転送する。インディーチェでは集まったデータを統合し,重複するデータを除去する作業を行う。重複除去プログラムの作成は困難を極めたが,当初の方針通り参加機関とインディーチェ職員が協力して開発に当たり,プログラムを完成させると同時に,相互の協力体制を確固たるものにした。

一方各図書館が新たに入力を行う際には,まずオンラインで総合目録を検索し,他館が同じ資料を所蔵しているか否かを確認する。同一資料のデータが存在した場合には,そのデータを各図書館が属するシステム内に取り込み,ローカルデータを書き加える。同時に総合目録には,この図書館の所蔵情報が付け加えられる。同一資料を所蔵する館がないときは,新規に入力するデータがそのまま総合目録上のデータとなる。

SBNは既にタイトル数65万を擁し,主として1986年以降に刊行された資料についての大規模な総合目録として機能している。1994年中には接続館が174に拡大する予定で,さらに近い将来,別系統の全国書誌ファイルSBLを統合する計画もあり,総合目録の対象資料は遡及的に広がることになる。UNIMARCフォーマットへの変換手法の開発など,国際的趨勢に対応するための試みも盛んに行われており,またサービスの効率化を目指す新たなプロジェクトも開始されている。

イタリアの図書館の歴史は古く,大規模な施設も多いが,それに見合う書誌の整備という点では,他のヨーロッパ諸国と比べて遅れていたと言われる。SBNのさらなる発展により,各図書館の資料提供サービスが充実し,さらにはイタリアの出版文化が世界的に幅広く共有されるようになることが期待される。

奥山裕之(おくやまひろゆき)

Ref: The Italian library network: SBN -Servizio Bibliotecario Nazionale. Program 28 (1) 43-52, 1994
萩原愛一 Le Biblioteche d'Italia 国立国会図書館月報 (387) 25, 1993
植田覚 イタリアの全国書誌 書誌索引展望 9 (1) 11-15, 1985