CA1901 - 動向レビュー:デジタル教科書の導入と著作権制度 / 大谷卓史

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カレントアウェアネス
No.332 2017年6月20日

 


CA1901

動向レビュー

 

デジタル教科書の導入と著作権制度

吉備国際大学アニメーション文化学部:大谷卓史(おおたに たくし)

 

1. なぜデジタル教科書か

 2011年、文部科学省が公表した、2020年に向けての教育の情報化の基本方針である「教育の情報化ビジョン」においては、教育の情報化とは、(1)子どもたちの情報活用能力を育成する「情報教育」、(2)「教科指導における情報通信技術の活用」、(3)「校務の情報化」の3つの側面を通して、教育の質の向上を目指すことだとされている(1)

 (2)「教科指導における情報通信技術の活用」を扱う同ビジョン第3章「学びの場における情報通信技術の活用」によると、情報通信技術の活用によって、従来の「一斉指導による学び(一斉学習)」に加え、「子どもたち一人一人の能力や特性に応じた学び(個別学習)」、「子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学び(協働学習)」の推進を目指すとしている。

 同章において、デジタル教科書は、「いわゆるデジタル教科書」として、次のように定義される。

  • 「デジタル機器や情報端末向けの教材のうち、既存の教科書の内容と、それを閲覧するためのソフトウェアに加え、編集、移動、追加、削除などの基本機能を備えるもの」(2)

 さらに、「いわゆるデジタル教科書」は、教員が電子黒板等により子どもたちに提示して指導するための「指導者用デジタル教科書」と、主に子どもたちが個々の情報端末で学習するための「学習者用デジタル教科書」の2つに大別されるとする。

 今後登場が予定される後者の「学習者用デジタル教科書」は、とくに、個別学習や協働学習への寄与が期待されている。

 個別学習に関しては、学習履歴の把握・共有による個別指導(3)や、デジタル教材との組み合わせによって、必要な情報や機能を選び抽出して利用することで、子どもたちがその特性や発達の段階、興味・ニーズに応じて学べるなどのことが期待されている。また、弱視や識字・学習の障碍などを持つ子どもが、文字の拡大機能や読み上げ機能などを活用して、効果的な学習を進めることも強く期待される点である。

 一方、協働学習においては、ネットワークを介してデジタル教科書を仲立ちとして、教員と子どもたち、または、子どもたち同士が双方向にコミュニケーションすることが想定されている。現在電子書籍で実現されているソーシャルブックマークやネットワークを介する書き込みの共有などが、「いわゆるデジタル教科書」には、基本的な機能として求められることとなりそうである。

 2016年12月に公表された「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議 最終まとめ」(以下、検討会議まとめ)では、「デジタル教科書(教材)」は、ICTを活用する授業を実現する教材の一つとして位置付けられている。ICT活用授業は、児童生徒の資質・能力等をさらに育み、効果的・効率的な授業運営を可能にすることなどから、「主体的・対話的で深い学び」の実現に大きく貢献するものとされる(4)

 

2. 「いわゆるデジタル教科書」

 ところが、すでにみたように、文部科学省の文書においては、デジタル教科書は「いわゆるデジタル教科書」(または、「いわゆる『デジタル教科書』」)と、一定の留保付きの表記が行われている。このように、留保付きの表現であるのは、その教科書としての位置付けがいわば宙に浮いているからと考えられる。

 一般的な認識では、デジタル教科書とは、小・中学校の義務教育課程および高等学校における検定済教科書をデジタル化したものと見なされ、これまで特定の教科や単元、テーマについて制作され、試行的・実験的に活用されてきた。ところが、その一方で、そもそも「検定済教科書をデジタル化したもの」に検定が必要か、それが検定済教科書とどのような関係にあるのかなど、その位置付けが決まっていなかった。つまり、制度上「(検定済)教科書」(5)とはいえない宙に浮いたものだった。それゆえ、「いわゆる」という留保付きの表現で語られてきたと考えられる。

 検討会議まとめにおいても、「いわゆる『デジタル教科書』」と表現され、「教科書発行者から補助教材として制作・販売されている『デジタル教科書』を、便宜上、『デジタル教科書(教材)』と呼ぶ」(6)としている。

 検討会議まとめにおいては、デジタル教科書は紙の教科書と同一の学習内容(コンテンツ)であって、それゆえにビューワの活用でレイアウトの変更が可能であるとしても(7)、改めて検定を経る必要がないものとする一方、あくまでも紙の教科書と併用する補助教材という位置付けとされている(8)

 

3. デジタル教科書の著作権制度上の課題

 本章においては、デジタル教科書にかかわる著作権制度上の課題にはどのようなものがあるか検討する。

 

3.1. 「いわゆるデジタル教科書」と著作権法第33条

 検定済教科書等における著作物の利用に関して、「学校教育の目的上必要と認められる限度において」著作権者に許諾の必要がないと定めた著作権法第33条においては、対象となる「教科用図書」は、初中等教育における「児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するもの」としている。

 ところが、「いわゆるデジタル教科書」は、すでに見たように、検定教科書と同一内容であるものの、検定の必要がないなど制度上の取り扱いが教科書と同一ではない。すなわち、学校教育法上使用義務がある教科用図書ではないことから、著作権法第33条の権利制限規定の対象とはならない可能性が高い(9)

 著作権者に許諾を得たうえで、著作物掲載の(補償金ではなく)著作権使用料を支払うこととなることを考えると、一般的に、報酬が高額になる可能性が考えられる。著作権使用料支払いが高額になることで、「いわゆるデジタル教科書」の制作費も高騰し、価格は高いものとなるかもしれない。

 デジタル教科書に関しては無償供与が望ましいとの意見が強いものの、義務教育諸学校の教科用図書の無償供与措置の対象となることは直ちには困難であるとされる(10)。上記の著作権使用料支払いの高騰による高価格化は、家計の教育費負担を増加させるだろうし、無償供与措置対象となる場合にも、価格高騰を許せば財政に負担を及ぼすこととなる。逆に、価格高騰を抑えるため、検定教科書と同様に、デジタル教科書の購入価格(制作費)の上限を定めるならば、著作権使用料が支払えないため、貧しい内容となる可能性がある。また、デジタル教科書の内容は検定教科書と同一内容であるという条件を考えれば、検定教科書の内容も貧しくなる可能性もあるだろう(11)

 

3.2. デジタル教科書と公衆送信権・伝達権

 著作権法第23条は、著作者がその著作物を公衆送信する権利と受信装置を用いて公に伝達する権利を専有すると定める(12)

 ところで、著作権法第35条第1項においては、授業の過程での使用を目的とする複製(13)、同法第38条第1項においては、著作物の非営利・無料・無報酬での上演・演奏・上映・口述ができるとする。そして、同法第38条第3項においては、放送される著作物は、(営利かつ公衆から視聴料金を取る場合も)通常の家庭用受信装置を用いて公に伝達することができるとされる(14)

一般的に、インターネット上で提供される著作物を閲覧する場合、その電子データをクライアント(PCやタブレットPC、スマートフォンなど)にダウンロードする。このとき、このダウンロードした著作物はハードディスク等に再び閲覧できる形で保存されていて、インターネットへの接続を切っても、繰り返し閲覧ができる。この場合、著作権法上、サーバーからクライアントに対して複製が行われていることになる。

 デジタル教科書においては、本文や写真・図表等にハイパーリンクを埋め込むことができるので、教員や生徒・児童が教室において、電子黒板等にインターネット上の著作物を表示することができる。この著作物がクライアントにダウンロードされる場合、自動公衆送信→受信→ダウンロード(複製)→表示(上映)の手順を経ることから、著作権法第35条第1項・第38条第1項の規定から、無許諾での複製および上映は適法と解釈できる(15)

 ところが、学校教育法上の学校における授業の過程での利用目的であっても、ストリーミング方式(16)の映像(音楽を伴うものも含む。以下同様)に関しては、インターネット上の著作物をスクリーンやディスプレイ等で表示して、学校教育法上の学校において授業を受ける者(学生・生徒・児童等)に視聴・閲覧させることは、著作権法上(少なくとも形式的に)違法となる可能性がある(17)

 なぜならば、教室における電子黒板等によるストリーミング方式の映像の提示は、自動公衆送信→受信→表示(伝達)と解釈する余地があって、このように解釈すると、著作権法第35条第1項・同法第38条第1項による著作権の制限の対象とはならないからである。

 まず前提として、次の2点を確認しておこう。

  • (1) 公衆送信された著作物が複製(自動公衆送信の場合、ダウンロード)されたうえでディスプレイ・スクリーン等に表示された場合には、著作権法上は「上映」(第2条第1項第1号、第22条の2)に当たる。
  • (2) 一方、放送・有線放送された著作物が、複製されることなく、ディスプレイ・スクリーン等に表示された場合は、「伝達」(同法第23条第2項)に当たる。

 悩ましいのは、ストリーミング方式による映像の提示が、「上映」に当たるか、「伝達」に当たるか解釈に迷う点があることである(ただし、結論としては「伝達」と解釈するしかないと筆者は考える)。

 なるほど、ストリーミング方式による映像の提示の過程では、物理的には、メモリ・ハードディスクへの一時的蓄積が生じている。法律上この一時的蓄積=複製が生じていると認めれば、適法に複製・アップロードされた映像をストリーミングによって視聴する場合は、著作権法第47条の8(著作物の情報処理に伴う複製における著作権の制限)から、たとえ一時的蓄積=複製が生じていたとしても、この映像の視聴に伴う複製行為は、無許諾で行っても著作権侵害には当たらない(18)

 ところが、ストリーミング方式の映像の視聴の過程で複製が生じているとしても、これをディスプレイやスクリーンに表示して視聴者に提示する行為は、「伝達」と解するしかない。

 まず、自動公衆送信される著作物が受信装置を用いて伝達されるとする条文がある。著作権法第39条第2項においては、時事問題に関する論説について、「自動公衆送信される論説は、受信装置を用いて公に伝達することができる」と規定する。また、第40条第3項においては、政治上の演説等について、「自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる」とする。

 さらに、そもそも著作権法第2条第1項第17号において、「上映」を定義して、著作物を「映写幕その他の物に映写すること」とするものの、「(公衆送信されるものを除く。)」としている。したがって、上記の著作権法第47条の8を仲立ちとして、自動公衆送信された著作物をディスプレイやスクリーンに映写する行為を「上映」とする解釈はありえない。

 したがって、ストリーミング方式の映像のディスプレイやスクリーンへの映写は、その前段階として一時的蓄積=複製が生じているとしても、「上映」とはいえないから、第23条第2項に規定されているように、自動公衆送信された著作物の受信装置による伝達と解するしかない。

 そうすると、授業の過程で使用するとしても、ストリーミング方式の映像を学生・生徒に視聴させる行為は、自動公衆送信された著作物を公衆に向けて(複製物の上映ではなく)「伝達」することとなる。だから、著作権法第35条第1項・同法第38条第1項の著作権の制限の対象とはみなされない。

 さらに、同法第38条第3項においては、放送・有線放送された著作物を受信して「受像装置で公衆に視聴させる」行為は、伝達権が制限されるとするものの、自動公衆送信による伝達を著作権の制限対象としていない(放送のインターネットによる同時再送信は、同項による著作権の制限対象である)(19)

 ただし、いったんハードディスク等にストリーミング方式の映像を複製したうえで、電子黒板等に表示するならば、これは、上記の複製→上映の過程を経ることとなるので、著作権法第35条第1項・同法第38条第1項による著作権の制限を受けることとなる。

 

4. まとめ

 本稿においては、いわゆるデジタル教科書の制度上の位置付けのあいまいさと現行の著作権法における公衆送信にかかわる著作権の制限規定の不在によって、デジタル教科書の高度かつ効果的な活用が制限される可能性を示した。

 検定教科書のオープンアクセス(OA)化がときに話題となるが(20)、その場合にも、本稿で指摘したような問題が考えられる。さらに、オンデマンド方式による授業への対応等も必要である(21)

 デジタル教科書による学修をより高度かつ効果的にするためには、いわゆるデジタル教科書の制度上の位置付けに関してさらに整理を進めるとともに、少なくとも著作権法第47条の8とのかかわりから「上映」「伝達」の定義を見直し、自動公衆送信と伝達にかかわる著作権の制限規定を改正することが必要と考えられる。

 

(1)“教育の情報化ビジョン ~21 世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~”. 文部科学省. 2011-04-28. p. 5.
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/afieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf, (参照 2017-04-19).

(2)“教育の情報化ビジョン ~21 世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~”. 文部科学省. 2011-04-28. p. 10.
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/afieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf, (参照 2017-04-19).

(3)ただし、学習履歴の把握・共有に関しては、個人情報保護・プライバシー保護の課題が生じるものと考えられる。

(4)「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 2-3.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf, (参照 2017-04-19).

(5)「教科書の発行に関する臨時措置法(昭和23年7月10日法律第132 号)」によれば、教科書とは、「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及びこれらに準ずる学校において、教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するもの」とされる。
“教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年七月十日法律第百三十二号)”. 電子政府の総合窓口 e-Gov.
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO132.html, (参照 2017-04-19).

(6) 「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 1.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf, (参照 2017-04-19).

(7)現行検定制度においては、レイアウトも教科書検定における検定対象である。
「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 11.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf, (参照 2017-04-19).

(8)また、次期学習指導要領実施との関連における教科書の改善という観点から見た「デジタル教科書」のあり方に関しては、次も参照。
教科用図書検定調査審議会. “教科書の改善について(論点整理)”. 文部科学省. 2017-01-23. p. 12-15.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/106/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/03/24/1383603_002.pdf, (参照 2017-04-19).

(9)「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 中間まとめ」においては、デジタル教科書においても、その著作物の利用に当たっては、著作権法第33条に該当するもので、補償金支払いを行うべきとする。しかしながら、本文で述べたように、デジタル教科書が初中等学校で利用される教科用図書であるかどうかに関しては、まだあいまいさが残り、補償金よりも著作権料支払いを受けるべきとする著作権者などの権利者との間で議論が起きる可能性がある。
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会. “「デジタル教科書」に係る著作権制度に関する論点(案)”. 文化庁.
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h28_04/pdf/shiryo_6.pdf, (参照 2017-04-19).
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会. “文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 中間まとめ(案)”. 2017-02, p. 39-40.
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h28_06/pdf/shiryo_2.pdf, (参照 2017-04-19).

(10) 「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 14.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf, (参照 2017-04-19).

(11)著作物を教科用図書(教科書)等に掲載するための補償金額に関しては、文化庁長官から文化審議会に対して毎年諮問が行われ、決定されている。一方で、いわゆる「疑似著作権」の対価を求められることがあると言われる。「疑似著作権」問題とは、神社仏閣等の建築物の外観や書画等の古典的作品の所有者がそれらの撮影や、美術作品が写った写真提供に当たって高額の対価を求める事例があり、これらの請求の根拠として「著作権」が主張されることをいう。実際のところ、こうした主張があっても、建築物の外観は著作権法第46条により著作権が制限されるし、古い建築物や古典的美術作品は著作権保護期間が経過していれば、著作権が消滅している。 ただし、建築物の撮影に際しては、建物所有者の敷地内での撮影が必要であれば、敷地を使用する対価請求は、敷地の所有権を根拠とすることができるだろう。また、著作物が撮影された写真の貸与に当たっても、写真という有体物の貸与の対価請求は、所有権が根拠となる。
このように、所有権を根拠とする報酬・対価の請求による教科書制作費増の問題に関しては、著作権法・制度とは別の枠組みにおいて解決が図られる必要がある。 この問題に関しては、次の文献を参照。
『著作権の世紀』の著者、福井健策弁護士に聞く 「疑似著作権」広がり懸念. 産経新聞. 2011-01-10. 東京朝刊12頁.
“先生!それは疑似著作権とは違うと思います。”. 花水木法律事務所. 2011-01-12.
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-6cd5.html, (参照 2017-04-06).

(12)著作権法において「公衆」とは、特定少数者を除く、不特定多数者・特定多数者・不特定少数者を指す。「公に」とは、公衆に対しての意である。公衆送信においては、電話回線やインターネットなど、特別の資格や結びつき(血縁や深い友人関係など)がなくても加入できるサービスの利用においては、送信先が限定されていても、公衆送信と見なされる。次の判決を参照。
東京地判平成19年5月25日(判時1979号100頁)(MYUTA事件)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/696/034696_hanrei.pdf, (参照 2017-05-13).
最三小判平成23年1月18日(民集第65巻1号121頁)(まねきTV事件上告審)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/012/081012_hanrei.pdf, (参照2017-05-01).

(13)さらに、同法第47条の10により、授業の過程での使用を目的として複製した著作物の複製は、公衆への譲渡が無許諾でできるとされているので、授業の過程において授業を受ける者に配布することができる。

(14)この解釈に関しては、次を参照。
加戸守行. 著作権法逐条講義. 六訂新版, 著作権情報センター, 2013, 1070p.

(15)学校教育法上の学校(非営利組織)の教室における著作物の公の上映(大型ディスプレイやスクリーンへの表示など)は、教員によるものであっても、上映そのものに対する料金支払い・報酬は生じていないとの解釈から、非営利・無料・無報酬の上映と解釈される。
大谷卓史. 情報倫理――技術・著作権・プライバシー. みすず書房, 2017, p. 229.

(16)ストリーミングとは、インターネット上のサーバーから映像・音楽等を受信しながらクライアントで再生する方式のコンテンツ配信を指す。

(17)この論点に関しては、我妻潤子氏(株式会社シュヴァン、知的財産管理技能士)の示唆から着目することとなった。

(18) “平成21年通常国会 著作権法改正等について 4.改正法Q&A 問10”. 文化庁.
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h21_hokaisei/, (参照 2017-04-19).

(19)著作権法第38条第3項括弧書きでは、公衆送信における伝達権が制限される場合に関して、「(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)」とする。ところが、この括弧書きは、放送される著作物がそれと「同時に」自動公衆送信される場合を想定しているものであって(いわゆる、「放送のネット同時再送信」)、放送された著作物をオンデマンドで自動公衆送信する場合は含まない。
加戸守行. 著作権法逐条講義. 六訂新版, 著作権情報センター, 2013, p.306-307.

(20)芳賀高洋, 鈴木二正, 大谷卓史. 検定済教科書等のデジタル化に関する課題の検討 ~デジタル(検定済)教科書の無償化やオープンアクセス化の可能性~. 電子情報通信学会技術研究報告. 2014, 114(116), SITE2014-25, p. 221-228.

(21)著作権法第35条第2項において、遠隔地の教室において同時受信される授業における著作物の公衆送信に関しては、著作権の制限対象とされているものの、オンデマンド方式の公衆送信はその対象ではない。

[受理:2017-05-17]

 


大谷卓史. デジタル教科書の導入と著作権制度. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1901, p. 16-19.
http://current.ndl.go.jp/ca1901
DOI:
http://doi.org/10.11501/10369300

Otani Takushi.
“So-calledDigital Textbooks” and Their Copyright Problems.