カレントアウェアネス
No.220 1997.12.20
CA1165
コンソーシアム方式による電子情報へのアクセスの確保
従来,総合目録による図書館間貸出の促進や,印刷された資料の共有を目的に,米国では図書館コンソーシアムが形成されてきた。しかし最近,抄録・索引誌,電子雑誌,参考図書データベース等の電子的資源を共有する,新しいタイプのコンソーシアムが形成されてきている。ここでは,州レベルの新しいタイプのコンソーシアムのうち,ジョージア州のGALILEO,ルイジアナ図書館ネットワーク,オハイオリンクを中心に紹介する。
GALILEO(Georgia Library Learning Online)
GALILEOは,34の公立カレッジと大学により構成されるジョージア州大学システムにより組織,運営されている。OCLCのSiteSearchソフトウェアを使って,Periodical Abstracts等UMI社のデータベースやカレントコンテンツ等のデータベースを提供するほか,OCLCFirstSearch,ブリタニカ百科事典,ゲイル社の各種参考図書データベース,アカデミック・プレス社の雑誌のフルテキストといった,教員や学生に必要な電子的資源を,通信ネットワークPeachNetを使って提供している。PeachNetを通じてインターネットへのアクセスもできる。印刷資料の図書館間貸出の援助もしている。現在,公立カレッジと大学のみならず,私立学術図書館,職業技術専門学校,公立図書館にもサービスの範囲を広げており,将来,学校図書館を加えることも考えている。州の富くじと一般歳入から年200万ドルの資金が拠出されている。
ルイジアナ図書館ネットワーク
ルイジアナ州立大学が中心となり,LOUIS(ルイジアナオンライン大学情報システム)を使って,州中の公立学術図書館,公立図書館,学校図書館に,インターネットや参加学術図書館のOPACへのアクセスを提供している。また,UMI社のデータベース,H.W.ウィルソン社の各種索引データベース,A Matter of Fact 等ペリアム・プレス社のデータベース等を提供している。資源共有よりも電子図書館資源へのアクセスに重点を置いている。資金は,最初は連邦政府の助成金に依ったが,現在は州から出され,ネットワーク接続のコストは各図書館が負担している。
オハイオリンク
オハイオリンクは元来,オハイオ州立大学を中心とする公立カレッジと大学が,総合目録を使って資料を共有するために始めたもので,現在は,私立学術図書館,学校図書館,公立図書館にまで範囲を広げ,UMI社,ウィルソン社,ペリアム・プレス社,OCLC等のデータベースを含む電子的資源を提供している。資金は州から出されている。
最近,オハイオリンクは,エルゼビア電子ジャーナル購読プログラム(EES)を導入した。図書館コンソーシアムがEESの契約をした最初のケースである。目下,主要な参加館は,エルゼビアの雑誌を平均して260タイトルしかとっていない。2年制カレッジは,全部合わせて13タイトルしかとっていない。しかし,今回の契約で,エルゼビアの雑誌の予約購読に過去に払っていた代金とほぼ同額で,1995年以降に発行されたエルゼビアの全ジャーナルを,電子的に提供することができるようになった。
ちなみに,1995年初めに登場したこのEESは,現在,世界中の40近い機関が導入していて,日本では東北大学,東京工業大学,東京大学農学部,早稲田大学などが導入している。
オハイオリンクはまた,アカデミック・プレス社とも175タイトルを提供する3年間100万ドルの契約を1996年に結んでいる。
他にも,テキサス州のTexShareが,州立大学図書館にUMI社のデータベース等を,バージニア州のVIVAは,39の公立のカレッジと大学図書館に(将来は州中の全ての図書館に)OCLC FirstSearch等を供給している。両者とも州が資金を出している。
なお,1つの図書館がこの種の州レベル・コンソーシアム以外に,全国レベルや地域レベルの複数のコンソーシアムに重複加入していることも多い。
今回紹介した電子的資源を供給するための州レベルのコンソーシアムには,幾つかの特徴がある。1つには資金のついた理由だが,インターネットとWWWが広まり,“情報スーパーハイウェイ”が新聞・雑誌をにぎわせる中,全ての学校,全ての図書館を電子的につなぐ案は州議会に受け入れられやすかった。それゆえ,図書館に設置される端末は,特定の電子図書館サービスのみならずインターネットにもつなげられている。現在,多くのコンソーシアムは,公立の大学やカレッジのみならず,州立の公共図書館や私立の学術図書館にサービスを広げることが求められている。
2つ目は,コンソーシアムが電子的資源を購入しやすい環境になっているということだ。エルゼビア等の出版社は,ライセンスを含む電子的資源のセットの価格を公開して,大学や大学システム同様,図書館コンソーシアムを商売の対象にしている。最近では,OCLC FirstSearch Electronics Collection Online(12から15の出版社の350から500の雑誌をサービスする)の試行サービス(7社62雑誌を提供)にも,GALILEO,VIVAが参加している。一方,図書館の方でも,電子的資源のセットをコンソーシアムで購入する方が,図書館が各自で購入するよりも負担が少ない。そして,たいてい何年かにわたっての予約購読契約をするので,雑誌の値上がりを気にせず資金計画を立てやすくなる。
3つ目は,電子図書館という同じ目的に向かいつつ,州ごとに異なるアプローチをとっていることだ。同じ様な電子的資源のセットを供給していながら使用しているハードウェア,ソフトウェアも資金の使われ方も各コンソーシアムで異なっている。どの方法がよりよいかは,今後淘汰されて行くことになろう。
永村 恭代(ながむらやすよ)
Ref: Potter,William Gray. Recent trends in statewide academic library consortia. Libr Trends 45(3) 416-434,1997
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