CA1141 - 図書館における多様な労働形態−イギリスの調査報告から− / 浜田久美子

カレントアウェアネス
No.216 1997.08.20


CA1141

図書館における多様な労働形態
−イギリスの調査報告から−

イギリスのラフバラ大学情報図書館学科のグールディング等は,大学・公共図書館など835の図書館情報サービス機関(LIS)を対象に,労働形態に関する郵送調査を実施し,475機関の図書館管理職から回答を得た(回答率57%)。

調査結果によるとLISにおいては,フルタイムの正規職員以外に次のような労働形態が存在した。(%は回答を寄せた475機関の全職員38,008人に占める割合である。)

  1. 常勤パートタイム29%
  2. 臨時パートタイム 4%
  3. ジョブシェアリング 3%
  4. 期間限定 2%
  5. 臨時的全時間勤務 1%

約3割を占める常勤パートタイマーは,伝統的な非正規職員の雇用形態である。しかし,正規の職員と同時間働いても,低賃金で福利厚生も不十分,昇進の機会も与えられず,仕事の責任も大差がある。これらの問題点の改善策として,まだ僅かであるがジョブシェアリング等の労働形態が用いられるようになった。

各労働形態を簡単に説明しよう。

パートタイムを常勤でなく臨時で雇うことで女性職員の多い図書館では,出産・育児休暇などの人員不足を補うことができる。また,ジョブシェアリングは,正規職員による文字どおり仕事の共同担当であり,勤務時間等を調整することにより,同じ仕事を複数の人が分担する。人員が必要で不経済という欠点があるが,一方で,女性が結婚後も勤務を継続することを可能にし,それによって社会進出を促進するという効果が期待できる。

女性だけでなく,学生にも社会進出の機会が増えている。特に,期間限定労働は,主に学期末休暇などの学生が携わることが多い。短期間なので,単純労働に限らず,あらゆるポストに適用することができる。

それでは,図書館側はなぜ多様な形態の労働者を必要とするのか。上位回答3つを挙げよう。1)作業量の変動に対処するため。2)繁忙期や週末開館時間の要員として。3)有能な人材を確保するため。そして,これらの回答通り,監督者の非正規職員への満足度は高い。例えば,常勤パートタイマーに対して監督者は99%満足だと答えている。

次に,非正規職員側から考えてみたい。

報告書によれば,非正規職員の6割以上が利用者サービス部門の前線で働いていることがわかる。非正規職員が専門的・管理的な仕事に就くことが制限される傾向にあるからだ。非正規職員にふさわしい仕事に関する統一見解が存在するわけではないが,専門的な仕事に就ける人は僅かである。

さらに勤務時間等の関係から,非正規職員と正規職員とのコミュニケーション不足が生じがちであり,このことから,管理職や正規職員との間に,仕事,昇進・賃金等に関するあつれきが生じてくる。また,これに関連して,監督者は,非正規職員のための教育がうまくいかないという。つまり,勤務時間が合わないため,非正規職員を正規職員のための研修に参加させることが難しい。これは図書館にはサービスの質の低下をもたらし,職員にとっては資格や昇進の機会の問題とも関わってくる。

報告書では,雇用形態の多様性に対する監督側の理解の必要性を説いている。この結論はイギリスに限らず,全世界の図書館に共通のものであることは間違いない。

では,日本の図書館での労働形態はどのような状況にあるのだろうか。

このことについては,ここでは内容の趣旨から逸れるので触れない。『シリーズ図書館員の問題2 図書館で働く非正規職員 大阪府下公立図書館調査報告』を是非参照してほしい。日本でも同様な理由から,多くの非常勤職員が図書館で働いていることがわかる。そして,彼らの自由な意見が述べられているが,行政側の気まぐれな雇用で,いつまで働けるかわからない不安を多くのぞかせている。日本の図書館は,イギリスより非常勤職員の雇用問題では遅れていると実感させられる。利用者と直に接することの多い非正規職員が働きやすい労働環境を作ることは,図書館サービスにとって最重要課題ではないだろうか。

浜田 久美子(はまだくみこ)

Ref: Goulding Anne, et al. Flexible working in UK library and information services: current practice and concerns. J Librariansh Inf Sci 28 (4) 203-216, 1996
小田光宏 英国の図書館専門職制度の現状(基本調査)海外図書館員の専門職制度 調査報告書 日本図書館協会 1994
シリーズ図書館員の問題2 図書館で働く非正規職員 大阪府下公立図書館調査報告 日本図書館協会 1993