E950 – ボーン・デジタルの法律関連情報の保存プロジェクト(米)

カレントアウェアネス-E

No.154 2009.07.22

 

 E950 

ボーン・デジタルの法律関連情報の保存プロジェクト(米)

 

 米国のジョージタウン大学,メリーランド州立大学,及びバージニア州立大学の3大学の法律図書館が2007年2月から2009年2月までの2年間の試験プロジェクトとして実施していた,ボーン・デジタル(紙版がなく,ウェブで直接公表されるもの)の法律関連情報の保存プロジェクト「チェサピーク・プロジェクト」の報告書がまとめられた。

 報告書では,政府・法律関連情報へのアクセスは民主主義社会における基本的な権利であると位置づけており,デジタル化によりインターネットを通じて多くの人が情報を得ることができるようになったとしている。しかし同時に,技術進歩によるフォーマットの変更や保存用物理媒体の耐久性の問題,あるいはURLの変更などにより,これらの情報へアクセスできなくなってしまう可能性があることがプロジェクトの背景であったとしている。

 3大学図書館はそれぞれ主に収集対象とする分野(テーマ別の法律学コレクション,政策関連資料,裁判所資料など)を決めて収集した。期間中に合計で1,872タイトル,4,306点の資料が収集され,それぞれに永続的保存用URLが付与され,メタデータとともにアーカイブされた。

 これらの資料のうち,最初に公開されたURLでのアクセスが不能となっているものの割合は,1年目終了段階で8.3%であったのが,2年目の終わりには14.3%に拡大していた。ドメイン名別のアクセス不能率の内訳をみると,「.state」が15.7%,「.org」が11.4%,「.gov」が13%,「.com」が4.5%,「.edu」が26%であり,母数が少ないものの,教育関連機関に掲載された資料のアクセス不能率が高くなっている。

 システムに関しては,プロジェクト開始当初はOCLC Digital Archiveを使用していたが,2008年7月から,アクセス用のCONTENTdmと保存用のダークアーカイブとの組み合わせに変更された。これにより,検索エンジンからのアクセスが可能となり,アクセス数が増加したとしている。

 試験プログラムであったため,明確な目標設定はなかったとのことであるが,参加者による評価では,「ウェブ上の重要なボーンデジタル法律情報を保存し永続的なアクセスを保証する」という目標は達成できたとしている。今後は法律情報保存連合会(Legal Information Preservation Alliance)との連携を視野に入れ,全米規模での保存プログラムにつなげていきたいとしている。

Ref:
http://www.legalinfoarchive.org/
http://cdm266901.cdmhost.com/policies/legal_twoyearprojectevaluation_june2009.pdf
http://www.aallnet.org/committee/lipa/Chesapeake_Project.asp