E914 – 「未来の図書館賞」を受賞した体験型情報プログラム(米国)

カレントアウェアネス-E

No.148 2009.04.22

 

 E914

「未来の図書館賞」を受賞した体験型情報プログラム(米国)

 

 米国図書館協会(ALA)とInformation Today社は毎年,「図書館施設を使い,利用者にITに関するトレーニングを行う革新的なプログラムを企画・開発した図書館」を表彰する「未来の図書館賞(Library of the Future Award)」を授賞している。このほど,2009年はインディアナポリス・マリオン郡公共図書館が受賞館として選ばれたと発表された。

 同館は,現代の子ども向けにデザインした,体験型(ハンズ・オン)の情報環境を提供する各種プログラム用のスペース“The Learning Curve @ Central Library”が評価されて受賞に至った。幼児からティーンまで,子どもたちは常に変わり行くテクノロジーと電子メディアの世界で育っていく。

 これを踏まえ,膨大な情報に効率的にアクセスし,それらを整理・分析し,クリエイティブにアイデアを表現し,また新しい知に結実するものとの関連を生み出せるように,情報リテラシーのスキルを公教育外で教える新しいモデルだと位置づけられている。

 Learning Curveは,60インチの大型スクリーンがある“Arena”,宿題支援サービスを受けられたり,子どもがアイデアを表現できる大型ホワイトボードなどがある“Think Tanks”,参考図書類やデータベースなどが利用できる“Research Central”,友達や家族とグループで遊んだり学習したりできる空間“Group Coves”,就学前の子どもたちのための空間“Baby Zone”,指人形劇やお話し会などを行う“Theater”,最先端の技術を体験できる“Tech Lab”,ゆったりと読書を楽しめる“Info Vortex”の各ゾーン,そして多くの書籍(書架)からなる,2007年12月に完成した18,000平方フィート(約1,672平方メートル)の空間である。このうちTech Labでは,ノートパソコン,シンセサイザー,デジタルカメラ,プログラムで動かすロボットや各種マルチメディアソフトなどを利用して,自分でデジタル形式の書籍,歌,写真,ビデオなどを作ることができる。そして作成したコンテンツは,Arenaの大型スクリーンやウェブサイトで公開され,皆と共有することができる。またアプリケーション・ソフト“CurveWorld”を使い,ゲームなどの対話的な手法で,情報,技術,メディアなどについて学習することもできる。Theaterで開催される幼児向けのおはなし会においても,デジタル技術が効果的に活用されている。

 Lerning Curveでは,このようにリアル/バーチャルの双方の環境で,テクノロジーを利用してものを生み出すことにより,基本的な情報リテラシースキルを強化していくことが企図されている。そのために,各年齢層を対象とした数多くのイベントが行われているが,それらのイベントはすべて,同館のリテラシー基準に基づいたものとなっている。同館のリテラシー基準はA. 社会的スキルと社会的関係,B. 読書の準備(レディネス),C. 読書の楽しみ,D. 読解力,E. 知的好奇心,F. テクノロジー,G. 情報へのアクセス,H. 情報の評価と応用,I. 情報倫理,J. チームワークと協働,K. 地域コミュニティから世界コミュニティへの接続,の11分野,合計80項目からなる。例えば,ロボットを使ってプログラミングの基礎を学ぶイベントは,リテラシー基準「G-4 問いの発展に応じて検索方法を改善・調整する」,描画ソフトと自分のデジタル写真を用いて大統領選挙用キャンペーンバッジを作るイベントは,「F-8 テクノロジーを用いて他者に助言・支援する」に基づくものとなっている。ALAは,この取り組みは「テクノロジーと伝統的なリテラシーとの理想的な統合」であり,有益な学習機会を提供している,と高く評価している。

Ref:
http://curve.imcpl.org/
http://imcpl.org/central/building/index.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6515856.html
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/march2009/alalibraryofthefuture.cfm
http://www.ala.org/ala/awardsgrants/awardsrecords/libraryofthefutu/libraryfuture.cfm