カレントアウェアネス-E
No.147 2009.04.08
E908
Delicious,Flickr,YouTubeにおけるタグの分析
フォークソノミー(CA1623参照)を活用している著名な3つのウェブサービス,Delicious(ソーシャルタギングサービス),Flickr(写真共有サービス),YouTube(動画共有サービス)において,2005年から2007年の期間に付与されたタグや利用者のタグ付与行動を分析することにより,ウェブ上のソーシャルネットワークの特徴を明らかにすることを目指す論文が,D-Lib Magazine誌15(3/4)号に掲載された。
分析のため,Deliciousからは約100万のブックマーク,約280万人のタグ付与者,約930万のタグ,Flickrからは,約30万枚の写真,約15万人のタグ付与者,約140万のタグ,YouTubeからは約50万のビデオ,約20万人のタグ付与者,約135万のタグ,という「対象物」「タグ付与者」「タグ」のデータセットが収集された。このデータセットを用い,付与された一意のタグの使用頻度を分析した結果,一度しか用いられないものが全体の半分以上を占め最も多いこと,「1,001回~120,000回」(最頻出のカテゴリー)用いられたタグは全体の0.2%に過ぎないこと,などが分かった。なお,3サービス合わせて最もよく使われたタグは「design」で,全タグ数のおよそ1%を占めた。
また,各サービスごとに分析を行った結果,主に下記のようなことが分かった。
- Delicious
- 対象物の内容に関係のあるタグが付与される傾向がある。
- 2006年と2007年に使用頻度トップ20に入っているタグの85%が固定している。これは,Deliciousにおいて,共有されている社会的な語彙が存在しつつあることを示唆している。
- Deliciousは,ウェブやプログラミングに興味のある人のソーシャルネットワークである。
- Flickr
- 場所,季節,日付,色など,画像に関する情報がタグとして付与される傾向がある。
- タグ付与行動は2007年に急激に活発化しており,2007年9月に付与されたタグ数だけで2006年全体のタグ数の50倍となった。
- Flickrには,家族や友人と写真を共有することを目的にサービスを利用するアマチュア写真家のコミュニティと,プロ写真家のコミュニティの2つが存在する。前者は写真を検索できるようタグを付与するが,後者はあまりタグを付与しない。その代わり自分以外のプロ写真家が撮影した写真に対し,コメントを付与することが多い。
- YouTube
- 音楽」「ビデオ」「映画」といった,メディアやジャンルに関する情報がタグとして付与される傾向がある。
- YouTubeにおけるタグ付与行動は2005年から2007年の間に劇的に活発化している(2005年のタグ数4,735→2007年のタグ数1,073,042)。
- Flickrと比較すると,YouTubeのタグの語彙は比較的固定化している。
- YouTubeのコミュニティは非常に大きく,ウェブコミュニティ全般のスナップショットのようなものである。
以上から,タグに関するデータを分析することによってソーシャルネットワークを特徴付けることが可能であること,他の2つのサービスに比べ,オンライン資源の保存・検索・共有を目的にタグ付与が行われる傾向の強いDeliciousが,タグ分析や利用者のタグ付与行動の研究に適していること,という結論が導かれている。
Ref:
http://www.dlib.org/dlib/march09/ding/03ding.html
CA1623